脂質低下薬の横紋筋融解症による入院頻度・・・・フィブラート使用に注意信号となるか?

脂質低下薬の横紋筋融解症による入院頻度は、コレステロール治療反対原理主義者たちには非常に利用しやすい論文でしょう。


問題の薬剤であるバイコール:cerivastatinは、現在市場にない薬剤なのに、なんで 速報なのか、わからんのですが・・・
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kaisyu/kaisyuu2001-2-232.html


cerivastatin以外のスタチンの安全性を強調したかったのか?

Incidence of Hospitalized Rhabdomyolysis in Patients Treated With Lipid-Lowering Drugs
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/292.21.2585v1?etoc
JAMA. 2004;292:(DOI 10.1001/jama.292.21.2585).
252460名の脂質低下薬治療をうけたうち、24件の横紋筋融解症入院
10万人年の平均頻度
・atrovastatin、provastatin、simvastatinは0.44 (95%CI 0.20-0.84)
・cerivastatin 5.34 (95% CI 1.46-13.68)
・fibrate, 2.82 (95% CI 0.58-8.24)
・薬剤未使用 0(95% CI 0-0.48; P = .056)

・併用療法群
fibrate+(atorvastatin、pravastatin、simvastatin): 1035 (95% CI, 389-2117)

・横紋筋融解症NNT(the number needed to treat):
 スタチン単剤:22 727 for statin monotherapy
 スタチン・フィブラート系投与の糖尿病老人:484
  ※このNNTの使い方、通常と違います。ほんとはNNH(Number Needed to Harm)だと思うのだが・・・
 ceivastatin+bibrate:9.7-12.7

【結論】横紋筋融解症のリスクは、atorvastatin、pravastatin、simvastatin単剤では同様で少ない発生率;statin-fibrate併用は糖尿病老人患者においてリスクを増加させる。cerivastatin+fibrateは1年に1-1-治療必要とするリスクである。
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fibrate系薬剤は、高中性脂肪血症、PPARαを介してインスリン抵抗・メタボリック症候群など概念の上では効果があるようなのですが、今回の横紋筋融解症の副作用をとっても今一つ劣勢です。
http://www.livalo.com/c/05/04.htm

フィブラート系薬剤の臨床的アウトカムの利益が今一つ明らかでないだけに(参考
“NNHでいけば、1年に100名に1名がフィブラート使用による横紋筋融解症で入院せざる得なくなり、フィブラート系薬剤は使いにくい。

どうもこの辺が速報理由かと邪推・・・

ただ、atorvastatinの血糖悪化は問題なのでは?
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・ACS患者で高用量アトルバスタチン群でプラバスタチン群より血糖コントロールが悪化
PROVE-IT(TIMI22)のサブ解析
http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf?CID=onair/medwave/colm20/343241

・“日本ではアトルバスタチンによる血糖管理の悪化が認められたという報告が散見”
http://www.medical-tribune.jp/congress/landmark/cards/cards_zadan.html
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ダブルブラインドでもないし、まともな対照もないJLITというまともでない研究ではなにもいえないし、否定も・肯定もできるはずがない・・・



ref.
循環器学会情報

by internalmedicine | 2004-11-24 14:40 | 動脈硬化/循環器  

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