リピトール血糖増加作用はほんとに臨床的インパクトはないのか?


PROVE-IT(TIMI22)への反論ではありませんで、ファイザーが今、一生懸命に宣伝しているCARDS研究についてLancetにto editor記載され、atrovastatinへの疑問がされておりました。

CARDS研究は悪玉LDLコレステロール増加のない2型糖尿病でatorvastatinを用いると、脳卒中・心血管障害イベントを予防できるという、高脂血症治療薬としての主作用ではなく、いわゆるpleiotropic効果を示すもので、脂溶性スタチンの宣伝文句なのでしょうが・・

conclusiveな判断は未だ行いかねますが、ファイザーらしく、そうそうたる御用教授どもを全面にだして、このCARDSの結果で“多少の血糖増加は無視してもよいのでは・・・”キャンペーン・プロモーションすることは確実なのでは・・・

おそらく、全国各地で展開される議論となることは必定の質疑応答集として・・
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Statins for patients with type 2 diabetes
http://www.thelancet.com/journal/vol364/iss9449/full/llan.364.9449.analysis_and_interpretation.31318.1


質問者:Collaborative Atorvastatin Diabetes Study (CARDS)研究で、atorvastatin10mgの2型糖尿病、LDL高値でない患者に対する、卒中を含めた心血管イベントリスク減少の有効性の研究に関して、疑義有り

LDLコレステロールが高くない2型糖尿病にスタチンを長期投与することに関して結論づけることはできないと私は思う。
HbA1cは確かにプラセボと同様だったがインスリン治療へ変更やインスリン+経口血糖降下剤へ変更されたものの数はプラセボより治療群が多かった。さらにベースの経口血糖降下剤は両群とも65%で、5年後プラセボで57%と低下し、atorvastatin群では54%である。この違いは対照と比較したときのatrovastatinの血糖の急激な悪化を示唆する。
ベースラインでは両群ともインスリン単独は15%の割付だが、4年後対照群では20%、治療群では21%。さらに、インスリン+経口血糖降下剤対照群で4%、治療群で5%であったが、それぞれ17%、19%へ増加している。
European Union Summary of Product Characteristics(Summary of product characteristics for Torvast (atorvastatin). Pfizer, August 2003.)で、atrovastatinの高血糖指摘。LDLコレステロール高値場合の2型糖尿病患者へのatorvastatinの長期安全性・有効性への疑問はまだ未解決。


著者の反論:
CARDSの結果で2型糖尿病、平均4年間フォローアップで心血管イベント37%減少、冠動脈疾患36%減少だったが、急激に血糖コントロール悪化事例があるのではないかとの指摘が有り、長期安全性と有効性への疑問を呈しているわけである。
atorvastatin群ではインスリン必要な状況を2%ほど増加・付加させているが、否定的な臨床的な有意な差ではないし、長期合併症、とくに冠動脈、脳卒中への影響を及ぼすものではない。
4年後のHbA1cの相違はなかったわけだし、むしろatorvastatin群が0.1%ほど高かった。しかし、この程度の違いで、実際、将来のどの程度の違いが出るかわからない。しかし、UKPDSのデータから冠動脈疾患減少期待の程度は約1.9%で、(CARDSと比較して)ちょうど37%であった。糖尿病コントロールの大規模副作用はatorvastatin治療によるbenefitの方が大きいくらいだ。

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atorvastatinによる血糖増加というのはどの程度のインパクトを持つのか、あるいは、個体により影響が違う可能性があるのか、用量依存性なのか、いろいろ疑問点があるような気がします。個々の事例で血糖の厳重注意は必要でしょう・・・もっとも糖尿病患者なので血糖は定期的にはかられているので現実的にはさほど危険性がないのかもしれません。

by internalmedicine | 2004-11-27 11:36 | 動脈硬化/循環器  

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