参照値内であってもQT間隔は死亡率と関連する
2011年 10月 25日
Results From the Third National Health and Nutrition Examination Survey
Yiyi Zhang et. al.
Arch Intern Med. 2011;171(19):1727-1733. doi:10.1001/archinternmed.2011.433
【背景】 QT間隔極端な延長および減少は悪性な心室性不整脈,心臓突然死予測するが、一般住民での、参照範囲内のQT間隔のばらつきと死亡率エンドポイントの関係は明らかでない。
【方法】 7728名の男女 (Third National Health and Nutrition Examination Survey)
ベースラインのQT延長を標準12誘導心電図読影にて測定。死亡率エンドポイントを2006年12月31日(2291死亡)にて検討
【結果】 平均フォローアップ13.7年後、QT間隔と死亡率エンドポイントの関連は、U字型
年齢、性、人種、RR間隔補正QT間隔(≧439msec)の95パーセンタイル以上の、第3五分位 (401 to <410msec)比較の多変量補正ハザード比は、総死亡率に対し 2.03 (95% confidence interval, 1.46-2.81) 、心血管疾患(CVD)死亡に対し 2.55 (1.59-4.09) 、冠動脈疾患死亡率に対し 1.63 (0.96-2.75) 、非CVD死亡率に対し 1.65 (1.16-2.35)
第5パーセンタイル(<377 msec)の第3・五分位比較ハザード比は、総死亡率 1.39 (95% confidence interval, 1.02-1.88)、CVD死亡率 1.35 (0.77-2.36) 、冠動脈疾患死亡率 1.02 (0.44-2.38)、非CVC死亡率 1.42 (0.97-2.08)
死亡率増加はQT間隔の変動低下でもみられる。Bazett-corrected QT間隔との関連は弱いがみられる。
【結論】 短縮・延長QT間隔は、参照範囲内であっても、 一般住民レベルでも死亡率と相関する。
各種補正式が書かれている →http://ecg.heart.or.jp/Jp/PDFs/050321/050321sudou.pdf
学校心臓検診では家族性突然死症候群(QT延長症候群)を念頭において取り扱いはっきりしてると思うが、住民検診・職場検診など各種検診でQT延長の指摘で。無症候性の場合の取り扱いに困る。
無症状のQT延長1200名に1人程度ということになってるが、実際にはもっと多い。後天性(二次性)QT延長症候群をある程度否定してから、専門医へ紹介すべきなのか、そのまんま紹介するべきなのか・・・日本の検診というのはその後のことを考慮せずとりあえず引っかければよいという無責任の集大成なので、被験者もその後相談される側も困る。
非”QT延長症候群”のQT間隔、特に薬剤 → Drug-Induced Prolongation of the QT Interval Dan M. Roden, M.D. N Engl J Med 2004; 350:1013-1022March 4, 2004
Straus SM, Kors JA, De Bruin ML, et al. Prolonged QTc interval and risk of sudden cardiac death in a population of older adults. J Am Coll Cardiol. 2006;47:362-367.
これなどがQTc延長が突然死に関わる報告なのだが、臨床状況下で、QTc延長が果たしてリスクマネージメント上影響を与える話なのだろうか?
Strausらは、心臓突然死の60%がQTc延長と関連すると報告している
だが、高齢になるとややそのリスクは低下する
QTc間隔境界域・異常と心臓突然死リスク
全体HR:境界域 1.6(0.9-3.1) 異常 2.5(1.3-4.7)
58-68歳HR:境界域 3.7(1.1-14.0) 異常 8.0(2.1-31.3)
68歳超HR:1.3(0.6-2.7) 異常 2.1(1.0-4.4)
男性HR:1.8 (0.8-2.6)、異常 2.6(1.1-5.8)
女性HR:1.3 (0.5-3.7)、異常 2.5(1.0-7.1)
(http://www.medscape.com/viewarticle/522879)
ヨーロッパのガイドラインでは、一般成人(55歳以上、中央値69.2歳 高齢)QTc性別分類がなされている
正常:男 ≦ 430 、 女性 ≦ 450
ボーダーライン:男 431-450、 女性 450-471
異常:男 > 450、 女性 > 470
QTc異常と心臓突然死リスクの関連明らかだとしても、そのリスクをどう回避するか?
年齢、性別層別化した評価が必要名のでは・・・と様々な課題が浮かぶ。
by internalmedicine | 2011-10-25 08:38 | 動脈硬化/循環器