予後推測ツールは信用できないのが多い
2011年 10月 25日
サンプルサイズが大きいほど因子推定しやすいが、些末な因子がクローズアップされる可能性もある。
以下の報告は、予後推測ツールをすべて信用できるわけにはいかない状況にある・・・とのこと。
Predicting Death
An Empirical Evaluation of Predictive Tools for Mortality
George C. M. Siontis et. al.
Arch Intern Med. 2011;171(19):1721-1726. doi:10.1001/archinternmed.2011.334
【背景】 死を予測する能力ことは医療において重要で、多くの適切とされ予後予測ツールが様々な状況に適応するよう開発されている。死亡予測ツールのパフォーマンス・様々な臨床状況・研究横断的パフォーマンスの変動についての評価目的
【方法】 2009年の研究をMedlineで同定、全原因死亡率予測の評価ツールとして、正確性(based on the area under the receiver operating characteristic curve [AUC]) of validated tools を評価。
正確性ツールのため4つ以上の評価、要約正確性測定値を計算。
予測ツールの研究特性を、ツールの報告正確性と関連するかどうか決定するため評価。
【結果】 94の適合した研究で、118予測ツール240評価に基づくもの
AUCの範囲は0.43-0.98 (median [interquartile range], 0.77 [0.71-0.83])
だが、優秀なのは23のみ (10%) (AUC, >0.90)
10ツールにおいて、4つ以上の評価で報告されていた。1つのツールのみ、要約AUC 0.80を超過
様々なコホートでパフォーマンスのheterogeneityが大きいことが示された (I2 range, 68%-95%)
報告ASAはインパクトファクターの低いジャーナルで発表されたツールで高く (P = .01)、サンプルサイズが多い場合 (P = .01)、そして、高リスク患者への死亡率予測目的な場合 (P = .002)や子供 (P < .001)で高い。
【結論】 多くの死亡予測ツールは正確性がやや甘く、様々な疾患・対象に対してばらつきも多い。
多くの提案ツールは臨床的有効性に乏しい。
生命予後推定ってなんのためしてるの? 若き頃、ある学会発表の時、質問されたことがある。
今なら、decision makingのため・・・と答えるのがまぁ普通だろうか?
患者自身の意思決定のためいびつなデータからできあがった予後推測ツールを用い、あやまった自己決定をしてしまったとするなら・・・おそろしいことである。
また、医薬品の評価のため用いるとしたら、問題ある薬剤の方が評価が高くなり、有益性の高い薬剤が至上から消えるそういう危険性さえある。
質の低い予後推定ツールが流布した場合、弊害は大きい。
by internalmedicine | 2011-10-25 10:54 | 医学