The Lancet:日本の皆保険50年 ・・・ 遅ればせながら日本語訳集

米韓FTAに予想通り韓国内薬価まで規制する内容後戻り不能条項(ラチェット条項)など毒素条項がある。

TPPは、多国間という枠組みをさらに利用し、米国至上的ごり押しがなされることとなる。


昨日、地上波・フジテレビ”中野剛志氏”出演で、その危険性はすこしは一般の人も分かったと思うが、時既に遅しの感がある。また日本は外向的失策をかさねていくのだろう・・・(とあきらめ気味 管・竹中が日本の医療を崩壊させたわけだが、次は、管・野田・前原か・・・)

2ヶ月前にThe Lancetに日本の医療・介護システムの特集がなされたが、あんまりちまたでは話題になってないようだ。少々検索しにくいというのも一因だろうか?それに、閲覧すると分かるが、官僚側・政府側に都合の良い意見が多く入っており、玄蕃にいる人間から見れば、机上の空論および”地方切り捨て”的主張が目立つ。特に後ろ3つは・・・なんだかなぁ・・と

TPPに参加すれば日本の医療システムは根本から翻弄されることは確実なのだが、その緊張感も感じられない文章群・・・だから、話題にもならなかったのだろう。東大官僚系の一部先生には好評だったというのが奇異。


一応、日本語訳リンクをまとめてみた。

日本:国民皆保険達成から50 年 1
なぜ日本国民は健康なのか
池田奈由,齋藤英子,近藤尚己,井上真奈美,池田俊也,佐藤敏彦,和田耕治,アンドリュー・
スティックリー,片野田耕太,溝上哲也,野田光彦,磯 博康,藤野善久,祖父江友孝,津金昌一郎,
モーセン・ナガヴィ,マジッド・エザティ,渋谷健司
http://download.thelancet.com/flatcontentassets/series/japan/series1.pdf

主要論点
・第二次世界大戦前に無償初等義務教育と社会保険制度が成立し,1961 年には早くも国民皆保険を実現,人々が平等に健康増進活動に参加する環境が整備された.
・均質で平等主義の日本社会においては,地域や社会経済グループ間の健康格差は非常に小さく,それは国民の平均的な健康水準の向上とともにさらに縮小してきた.ところが1990 年代から次第に所得格差が拡大し,社会経済的な健康格差の減少傾向にも歯止めがかかっている.
・戦後,政府の強力な管理責任の下,主要な公衆衛生介入手段への投資が積極的に進められたことを背景に,1950 年代から1960 年代前半にかけて,5 歳未満の子どもと60 歳未満の成人の感染性疾患による死亡率が低下し,日本人の平均寿命は急速に延びた.
・1960 年代半ば以降は,減塩キャンペーンなど国民レベルの啓発運動とともに,降圧剤など費用対効果の高い医療技術が国民皆保険もあって普及し,血圧の管理が改善した.その結果,脳血管疾患による死亡率が低下し,日本人の平均寿命はさらに延び続けた.
・現在の日本では,喫煙と高血圧が非感染性疾患による死亡の主要な危険因子である.日本国民の平均寿命をさらに延ばすためには,これらを含めた心血管危険因子を取り除く努力が必要である.自殺の防止も,重要な健康課題の一つである.
・生存率の改善に伴い人口の高齢化が急速に進んだことで,日本の保健医療制度は財政基盤と医療・介護の質という問題に直面している.国民の福祉向上のためには,意思決定と現場の双方から,医療と介護の効果的な連携を図っていく必要がある.





日本:国民皆保険制度達成から50 年 2
日本の皆保険制度の変遷,成果と課題
池上直己,兪炳匡,橋本英樹,松本正俊,尾形裕也,馬場園明,渡邊亮,渋谷健司,梁奉玟,
マイケル・R・ライシュ,小林廉毅
http://download.thelancet.com/flatcontentassets/series/japan/series2.pdf
主要論点
・1922 年に社会保険が初めて法制度化されてから40 年を経た1961 年,国民皆保険制度が実現した.被用者保険制度と国民健康保険制度により保険の適用範囲が拡大し,現在では3500 の保険者が存在する.被扶養者については世帯主の保険制度が適用されている.
・国民健康保険制度に被用者保険制度の診療報酬体系が採用された1959 年以降,カバーされるサービスの内容および医師や病院に適用される診療報酬体系は統一され,価格(診療報酬)の規制が公平性の維持と費用抑制の主たるメカニズムとなっている.
・1961 年から国民のほぼ全員に保険制度が適用されることとなったが,患者自己負担率は大きく異なっていた.当初,被用者保険本人には初診時のみ定額の自己負担があったのに対し,その他の国民は5 割を自己負担していた.
その後,市町村国保の自己負担率が少しずつ引き下げられ,一方の被用者医療保険制度の負担率が引き上げられたことで,現在では高齢者と児童以外は一律3 割負担となっている.しかし,月々の自己負担が規定額を超えれば,自己負担は1% まで減少する.
・最大の格差は所得から徴収される保険料の割合である.低所得者の多い保険制度は一般財源からの補填によって負担が緩和され,また高齢者の医療費については保険者間の横断的補助が強制されてはいるものの,加入する保険によって保険料として支払う所得の割合には3 倍以上の格差が生じている.
・社会の高齢化,雇用形態の変化によって所得構成や年齢構成も変化し,保険者間の格差が拡大していることで,社会保険の持続性が脅かされている.われわれはこうした課題に対応するためにも都道府県レベルでのすべての保険制度の統合を提唱する.
・雇用や居住に基づく社会保険による国民皆保険制度を実現しようとしている国々は,構造的改革に対する反対意見が確立しないうちにこのアプローチの限界を認識し,弱点に対応するべきである.


日本:国民皆保険制度達成から50 年 3
わが国における医療費抑制と医療の質:
トレードオフはあるのか
橋本英樹*,池上直己*,渋谷健司,泉田信行,野口晴子,康永秀生,宮田裕章,ホセ・M・アキン,
マイケル・R・ライシュ
http://download.thelancet.com/flatcontentassets/series/japan/series3.pdf

主要論点
・ 日本の健康水準は世界トップレベルであるが,総保健医療支出の対GDP 比(8.5%)はOECD 加盟国中第20 位に留まる.民間セクターに依存した医療提供制度や出来高払い方式にもかかわらず低医療費水準となっていることは,日本がいかに相対的に低いコストで良好な健康状態を達成したかを示している.
・ 全国一律の診療報酬により支払い額が厳格に管理されており,不況下では政府が価格を一方的に引き下げることができたため,医療費は抑制されている.
・ 医療の質の構造的側面から評価すると,1 病床当たりの医師・看護師数はOECD 加盟国中最も低いレベルである.専門医認定制度は成熟しておらず,総合診療はまだ専門分野として認知されていない.医療の質の評価・改善に関する政府の取り組みは,入院治療に携わる看護師の数にのみ焦点を当てている.
・ 医療の質のプロセス面は,入院治療では標準化が遅れている.さらに外来治療では,高血圧症や高コレステロール血症の有効カバー率が米国の水準を下回っている.しかし,アウトカムで評価すると手術死亡率は他の国と同じぐらい低く,特に大病院では低い傾向がある.
・ 医療費の厳格な管理とサービス提供に対する自由放任主義的アプローチからなる日本の政策は,医療提供者側のガバナンスの弱さと相まって,医療資源の需要と供給の間にミスマッチを引き起こすとともに,医療の質に関する説明責任の確立を阻んでいる.これらの構造的問題に対処するためには,入院治療の診療報酬規定を簡素化して支払条件の柔軟性を高める一方で,地域医療計画を強化し,病院の診療パフォーマンスに対する公的モニタリングを推進することによってサービス提供のあり方を厳しく管理するべきである.またこれには,プライマリ・ケアを確立するための医学教育改革も伴うべきである.
・ 日本のこれまでの経験から,保健医療政策においては,まず医療サービスの利用機会の拡大と受療による世帯の貧困化の予防が優先事項とされるべきだと言える.その後に,サービスの能率と質を追求すべきである.



日本:国民皆保険達成から50 年 4
人口の高齢化と幸福:日本の公的介護保険政策からの
教訓
田宮菜奈子*,野口晴子*,西晃弘,マイケル・R・ライシュ,池上直己,橋本英樹,渋谷健司,
河内一郎,ジョン・クレイトン・キャンベル
http://download.thelancet.com/flatcontentassets/series/japan/series4.pdf
主要論点
・日本の65 歳以上の高齢者人口は,2010 年には2900 万人,人口比23%に達し,過去20 年でほぼ倍増した.人口動向予想によれば,高齢者人口は約4000 万人で横ばいになるが,若年人口比率は減少し続ける.
・日本は,2000 年に強制加入方式の公的な介護保険を導入した.この制度は,適用範囲と給付水準の点において,世界で最も寛大な制度の1つである.
・10 年に及ぶ経験から,支出を目標人口の増加率に保てることを含めて,公的介護保険制度が効果的かつ管理可能なものであることが示されている.
・日本の公的介護保険制度はサービスのみを提供しており,「現金給付」は実施していない.最も利用率の高いサービスは高齢者デイケアで,190 万人が利用しており(65 歳以上の高齢者の6.5%),虚弱高齢者とその家族介護者両方に便益をもたらしている.
・公的介護保険制度の導入により公的介護サービスの利用が急増し,個々の家計の経済的負担は減少した.また,本稿の実証分析によれば,機会費用が高いと考えられる高所得世帯の家族介護者の労働参加率が増えた.
・サービスのみを提供するという方針,専門家の助言を得た上での消費者による選択,管理面の柔軟性を持たせた包括的な組織化,高齢の要介護者への特化などの際立った特徴は,世界中の介護政策立案者や専門家に重要な教訓を提供する.




日本:国民皆保険達成から50 年 5
グローバルヘルスにおける日本のコミットメント再強化:
課題と機会
ライデン・ヤノ,國井修,森臨太郎,武井貞治,佐々木八十子,中村安秀,黒川清,余海,リンカー
ン・チェン,武見敬三,渋谷健司
http://download.thelancet.com/flatcontentassets/series/japan/series5.pdf
主要論点
・日本国民は,国内及び外交政策における重要な優先課題として,保健医療分野を挙げている.
・国民が考える外交政策の優先課題と,日本の対外援助の実情には隔たりがある.国民の70%以上は保健医療を日本の対外援助の最も重要な課題としているが,日本の保健医療分野に対する政府開発援助は全体の僅か2%である.
・この隔たりが存在する要因として,政府の顕著な縦割り構造,弱い市民社会,そして透明性と評価の欠如が挙げられる.
・世界でも最高レベルの国民の健康水準と国民皆保険を達成した日本の専門的知見は,グローバルヘルスへの取組みにおいて十分活かされていない.
・日本国内の保健医療分野における幅広い知見をグローバルヘルス分野においても効果的に共有し活用するためには,ハイレベルなグローバルヘルス委員会の政府内への設置,グローバルヘルスに対するさらなる資金的支援の増加,民間セクターにおける革新的イニシアティブの推進,研究能力の向上,そしてグローバルヘルス政策人材の育成が必要である.
・日本は,アジア諸国との歴史的,地理的,経済的背景を共有していることを踏まえ,アジアにおける国民皆保険とミレニアム開発目標の達成を支援すべく,日本はアジアに対してさらに積極的に関与していくべきである.


日本:国民皆保険達成から50 年 6
優れた健康水準を低コストで公平に実現する
日本型保健制度の将来:国民皆保険を超えて
渋谷健司,橋本英樹,池上直己,西晃弘,谷本哲也,宮田裕章,武見敬三,マイケル・R・ ライシュ
http://download.thelancet.com/flatcontentassets/series/japan/series6.pdf
主要論点
・ 日本は,1961 年に国民皆保険を実現した。他の保健医療政策・対策と相まってこれまで日本は低コストで公平かつ良好な国民健康水準を実現することに成功してきたが,今日,多くの課題を抱えている.
・ 『ランセット』の本特集号の他の論文で指摘されたように,日本の保健システムは3 つの共通課題,つまり,経済的持続可能性,政治的ガバナンス,患者の期待への対応の欠如に直面している.
・ 2011 年3 月に発生した東日本大震災は保健システムの根底にある構造的問題を露呈させたが,3 つの課題を解決することを財政的により一層困難にした.
・ これらの課題に対処するため,筆者らは日本の保健医療システムに関する4 つの主要な改革を提案する.
人間の安全保障という価値観に基づいた改革を実行すること,政府と地方自治体の役割を見直すこと,保健医療サービスの質を改善すること,グローバルヘルスに積極的に取り組むこと,である.
・日本が保健医療の構造改革と災害からの復興の両方を達成できることを示す,明るい兆しがある.この日本の経験は,日本がグローバルヘルスを促進する上でより積極的な役割を果たす基盤になりうる.





ここ1ヶ月、厚労省側が専門医制度を利用しようとする動きがある。上記報告と呼応した動きなのだろうか?官僚にだけ都合の良い制度になることを危惧する。

by internalmedicine | 2011-10-28 09:09 | くそ役人  

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