重症アルコール性肝炎:グルココルチコイド+N-アセチルシステイン治療 1ヶ月後死亡率改善

重症アルコール性肝炎患者のトライアルにおいて、アセチルシステインは1ヶ月後の死亡率減少した (8% vs. 24%, P=0.006)
しかし、プライマリアウトカムである6ヶ月後の生存率改善は有意ではなかった (27% vs. 38%, P=0.07)。

Glucocorticoids plus N-Acetylcysteine in Severe Alcoholic Hepatitis
Eric Nguyen-Khac et. al. for the AAH-NAC Study Group
N Engl J Med 2011; 365:1781-1789November 10, 2011



・The prednisolone–N-acetylcysteine group : intravenous N-acetylcysteine on day 1 (at a dose of 150, 50, and 100 mg per kilogram of body weight in 250, 500, and 1000 ml of 5% glucose solution over a period of 30 minutes, 4 hours, and 16 hours, respectively) and on days 2 through 5 (100 mg per kilogram per day in 1000 ml of 5% glucose solution)

・The prednisolone-only group : an infusion in 1000 ml of 5% glucose solution per day on days 1 through 5.


プライマリアウトカムは6ヶ月後の生存率、セカンダリアウトカムは、1,3ヶ月後の生存率、肝炎合併症、N-アセチルシステイン使用に関連する副事象、day 7 、14のビリルビン値

6ヶ月後のプレドニゾロン・N-アセチルシステイン群の対プレドニゾロン単独群比較の死亡率減少は有意でない (27% vs. 38%, P=0.07)
死亡率は有意に1ヶ月後低下 (8% vs. 24%, P=0.006)するも、3ヶ月では有意でない (22% vs. 34%, P=0.06)
肝腎症候群死亡は、プレドニゾロン・N-アセチルシステイン群はプレドニゾロン単独群より頻度が少ない (9% vs. 22%, P=0.02)
多変量解析にて、6ヶ月後生存率関連要素は、若年 (P<0.001)、 PT時間の短さ (P<0.001)、ベースラインでのビリルビン値の低さ(P<0.001)、day 14でのビリルビン低値 (P<0.001)
プレドニゾロン・N-アセチルシステイン群ではプレドニゾロン単独群比較で、感染症頻度少ない p (P=0.001); 他の副作用は同様。


アセチルシステインは、アセトアミノフェン中毒時非常時使用でかつ、院内調整が必要という状況だと思う。
http://www.j-poison-ic.or.jp/kagaku/gedokuzai/Acetamino.pdf

現時点では日本では利用困難な治療法

NEJM同月記事(Early Liver Transplantation for Severe Alcoholic Hepatitis N Engl J Med 2011; 365:1790-1800November 10, 2011)には、早期の肝移植による生存率改善報告が記載されている。

しかし、エディトリアル(N Engl J Med 2011; 365:1836-1838November 10, 2011)には、自傷行為と言えるアルコール性肝障害に対する肝移植の米国内議論が記載されている。一方で、6ヶ月間禁酒要求するいまの”6ヶ月ルール”は現実的に、6ヶ月間生存のチャンスがほとんど無く、移植のチャンスを受けられないこと・・・などが議論されている。



町医者をしてると、いわゆる”アル中”患者に悩まされることが多い。夜間など怒鳴り込んできたり、院内に居座ったり、自費分支払い拒否したり、職員にセクハラ行為を行ったり・・・ 不法行為があったらすぐ警察を呼ぶという方針にはしているのだが、1人こういう患者がいると数十名の患者を診るごとく疲弊してしまう。本来あってはいけないのだが、それなりの感情をもってしまうのが・・・この疾患。こういう疾患への社会体制は整ってるかというと、窓口すら、はっきりしてない地方自治団体。保健所に相談しても基本は見守りだけに終わる。
禁酒会・断酒会などに強制力などなく、積極的サポートされている状況はない。
サントリーなど酒製造メーカーから一定のコストを巻き上げて、禁酒・摂取やアルコール関連反社会的行為の予防・対策を国が行うべきだと思う。さらに、この種のアルコール関連疾患の診療・治療研究・肝移植サポートなどメーカー・サービス業などコストを一定程度負担すべきだと思う。禁煙・嫌煙にばかりは無しが行くが、アルコールに関しても社会的に悪影響を与えている嗜好品であり、それなりの公的負担を担保すべきと考えるのは当然。アルコール・メーカーは民放や他のマスメディアの強力なスポンサーのため率先すべきは行政・政治。

by internalmedicine | 2011-11-10 08:28 | 集中・救急医療  

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