米国:窓口負担軽減・無しで薬物アドヒアランス改善 vs 日本の行政は窓口負担上げることしか考えない

日本の医療保険上の”現金支払”(out-of-pocket)比率ってのは公的保険としては異常すぎるというのはよく言われること。医療へのアドヒアランス悪化を促進させている制度である。これを”善”と考えることこそが日本の医療行政の問題点で有り、中医協において、支払い側が力を持ちすぎているための弊害である。

米国は逆の方向を検討しているようで、現金支払をなくせば、アドヒアランスを改善するだろうが、それがアウトカム改善につながるのではないかという検討。

Full Coverage for Preventive Medications after Myocardial Infarction
for the Post-Myocardial Infarction Free Rx Event and Economic Evaluation (MI FREEE) Trial
N Engl J Med 2011; 365:2088-2097December 1, 2011

心筋梗塞後の患者をランダムに分けて、すべての処方カバー率(現金支払い無し(1494 plan sponsors with 2845 patients))と通常のカバー率(通常の現金支払い(1486 plan sponsors with 3010 patients))にランダムに割り付け
カバーした薬剤:スタチン、β遮断剤、ACE阻害剤・ARB



通常現金支払いだと、アドヒアランス 35.9~49.0%
現金支払い無しだと、アドヒアランス 4~6%  (P<0.001 for all comparisons)

プライマリアウトカム(重要大血管イベント・血管再建)の差は無い  (17.6 per 100 person-years in the full-coverage group vs. 18.8 in the usual-coverage group; ハザード比, 0.93; 95% 信頼区間l [CI], 0.82 to 1.04; P=0.21)

現金支払い無しだと、総主要血管イベント・血管再建率は有意に減少 (21.5 vs. 23.3; ハザード比, 0.89; 95% CI, 0.90 to 0.99; P=0.03)、初回重大血管イベント(11.0 vs. 12.8; ハザード比, 0.86; 95% CI, 0.74 to 0.99; P=0.03)

共同負担をなくしても総支出増加させず  ($66,008 for the full-coverage group and $71,778 for the usual-coverage group; relative spending, 0.89; 95% CI, 0.50 to 1.56; P=0.68)。患者コストは薬剤・ほかのサービスでも減少 (relative spending, 0.74; 95% CI, 0.68 to 0.80; P<0.001)。

結論:薬剤自己負担をなくすことで、心筋梗塞後のプライマリアウトカムである主要血管イベント・血管再建術率には影響を与えなかった。処方保険カバー率増加することで、薬物アドヒアランス改善し、主要血管初回イベント率を改善し、医療コスト上げずに患者への出費減少させうる。


日本の公衆衛生学研究者=科研費ねらい=厚労省・(国民の生活より経団連志向)財務省意向にべったりの御用学者 ・・・ だから 日本ではこういう研究はなされない・・・

by internalmedicine | 2011-12-01 09:26 | くそ役人  

<< 性的思考は性差少なく、個別影響... HCV関連血管炎:低用量IL-... >>