メディアは、がん患者の医師決定にあまり影響をあたえなかった???

メディアは、がん患者の医師決定にあまり影響をあたえなかったということですが、このインパクトは過小評価ではないでしょうか?

【元論文】
がん患者のオピニオン・フィーリング・意志決定・医師患者関係へのメディアの影響
Effects of media information on cancer patients' opinions, feelings, decision-making process and physician-patient communication
Cancer Volume 100, Issue 5 , Pages 1077 - 1084
治療効果に関して述べられているメディアによって意見やフィーリングに変化をもたらしたが、医師-患者コミュニケーションや意志決定プロセスは変化がなかった。
多変量解析で、メディアの患者の意見への影響は大きい(odds ratio [OR], 4.67; P < 0.0001)ことが判明し、希望 (OR, 3.63; P < 0.0001)、混乱 (OR, 0.51; P < 0.0001)を与えたが、医師-患者コミュニケーションや意志決定プロセスへは影響を与えなかった。
教育レベルがほぼすべての要因に影響を与え、性・居住地による影響もあった。患者の年齢で相関はなかった。
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【意見】
 メディアが医師ー患者関係に影響を与えないということはありえるのでしょうか?
 どうも、そうは思えない部分もあるけど、
 確かに、診断・治療プロセスで、話しをして、決定をゆだねると、さほど私たち医師側と異なる意見が出ることはすくないと感じてます。一開業医ですので、先進的な医療機関と異なるかもしれませんが・・


 医師患者関係に決定的に亀裂を生じさせるのは、遠方にいる家族や近所・知人(harmful co-factor・・・という経験が多いです。このharmful co-factorにはメディアは影響を与えていると考えます。

 メディアからの、論理無き感情的な印象は情緒的な部分に影響を与え、敵意を蓄積し、当初から、共感的雰囲気になく、診断・治療の共同作業を阻害することが多くなっております。

 テレビ番組で医療訴訟に関してコメントを多く行う実地医家の先生方が、その職業的習慣からか、番組の雰囲気、共感的態度を・・・として、医師を一般的に批判します。そして建設的なコメントをしようとする医師は、徐々に解くべき誤解を解こうと思ってるのだとおもってるのですが、肝心なことをしゃべっている後半は放送されず・・だと思います。しかし、中には、中身はともかく、まず医師批判をすることが世情にあってるのでという理由だけで、身内批判を行い、それを生業としている人もいますので・・

 白い巨塔で描かれた時代は昭和30年代だと思われますので、時代錯誤、内容もちぐはぐであれが現実に近いなんてコメントした医者はいったいどこで医局を過ごしたのでしょう。医局がいやならやめればいいことだし、別の大学の医局に入ってもWelcomeというとこも多いわけだし・・・他の職業、サラリーマンも一緒でしょ。別に特殊なものでもない・・日本の医療の悪の権化みたいないわれかたをしてるけど・・・あまり私自身はスムーズな退局ではなかったけど、出身高校・大学以上にアフィニティーを感じているし、実際に先輩・後輩・同僚たちとのつながりが診療に役立ってるし・・・
 批判の方がメディア受けするということで、バイアスがかかった情報だとおもいますね。 現在、メディアはよってかかって、医者(特に医師会)=悪者という、すり込みを意図的に、無意識なのか、非作為的なのか、作為的なのかわかりませんが・・・
 医師会がその活動をやめれば、休日・夜間診療、学校保険・予防接種、集団検診などは多大の影響をうけることとなります。医師に対する生涯教育もシステミックに行われなくなります。この会の社会的貢献は過小評価してはならないものです。

 テレビ放送をみていると、視聴者の比較的限られている時間帯は、健康関係グッズ、特に食品関係の放送が多いようです。通販番組などは特に低俗、根拠のない言い換えの羅列です。
 一般の放送の形を取っている番組でも、「ある食物AにはBという成分が入っている。試験管内の実験ではBはC1、C2、C3・・・という作用がある。C1、C2、C3・・は生体内にこういう有利な働きをする。だから食物Aをたくさんとりましょう。」的なお笑い三段論法から、「これは効能効果をあらわしているのではなく、個人の経験をしゃべっているにすぎない」という責任のがれ・・・電波という公共の資源を使い、無責任な情報の氾濫をさせているのは、免許停止に匹敵すると思うのですが・・・。総務省も真剣にテレビ局の免許停止を考えたらどうでしょうか?かれらの武器・「表現の自由」攻撃に対しては、「人命は地球より重い」防御するということにして・・・


A=たまねぎ、B=硫化アリル(Diallyl sulfide)、C1=血液学的レオロギーの改善 を、代入すれば、一つの番組のできがあがり・・・

ここには
1)Aの中のB以外の物質の副作用
2)用量・効果の説明、生体内代謝
3)長期的効果・副作用
4)人間での検証例がない場合が多い(あれば薬剤となるわけだし)
などの考慮がありません。

たまねぎ摂取によりアナフィラキシーをよく見聞きしますし、
イヌ(とくに日本)・猫などハインツ小体貧血が生じますが、人間では大丈夫なんでしょうか?長期的に大量摂取して安全だという保証はないと考えているのです。

・生体内では効果がないという話しもあるわけで・・
引用

・アルカリフォスファターゼの抑制、パパイン、アルコール脱水素酵素の抑制の可能性
引用

など考えれば、必ずしも大量・連日摂取は手放しで安全とは限らないわけです。


これより笑うのは
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A=みかん B=? 、C1=糖尿病抑制効果
A=みかん B=βクリプトキサンチン 、C1=がん予防
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http://www.town.mikkabi.shizuoka.jp/mikantokenko/mikantokenko.html

とくに前者なんて、みかんを過食し血糖増加した患者に困っている私からすれば暴論ですね。横断的少数アンケート調査で結論を導き出すなんて、科学者のやることではありません。厚顔無恥さは、みごとなものです。(参考:http://www.ntv.co.jp/omo-tv/01/1126/main.html)

by internalmedicine | 2004-04-08 13:18 | メディア問題  

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