栄養と卒中リスク

個別のビタミンや栄養素が卒中予防することはかなり少なく、全体として健康な食事内容が卒中リスクをへらすというオーストラリアの研究者のレビュー。

抗酸化ビタミンも、ビタミンBも卒中予防としては相関性認めない。しかし、Mediterranean dietはリスクを減少させる。

ビタミン・ミネラル
・ ランダム化トライアルでβカロチンは卒中予防効果認めず、全癌死亡・心血管死亡リスク増加
・ 大規模ランダム化対照トライアルはビタミンCやEは卒中予防的には働かず。このHankeyらの報告でもビタミンEは死亡リスク増加させる。
・ カルシウムは卒中リスク増加の可能性が有り、心発作リスク31%増加の可能性
・ ビタミンBは卒中リスクを減少させるが、低葉酸食の状況においてのみ、その不足治療は卒中リスク減少につながる。
・ ビタミンD欠乏は卒中リスク増加と関連し、高血圧・心血管疾患のような他のリスク要素と同様。
・ 卒中リスクと塩分・カリウムは明らかで、食塩5g/日で23%卒中リスク増加という観察研究。カリウム摂取増加は卒中リスクを減少し、ミネラル高摂取は卒中リスクを21%減少。ベネフィットはおそらく血圧降下作用ゆえ。

大栄養素
・ 脂肪食全体では卒中リスクではなさそう、トランス-、飽和脂肪酸の高摂取量もリスク増加を認めない。しかし、海産物由来 PUFA ω3脂肪酸は、心臓イベント・死亡リスク減少を示す。植物内の成分も卒中リスクを減少させる。
・ 炭水化物の量はアウトカム悪化と関連し、高血糖・体重増加がのような卒中リスク増加と関連するが、食物線維高摂取は血圧・コレステロールのような要素の低リスク。
・ 蛋白と卒中の関連明らかでない。

食物
・ チョコレート、コーヒー、紅茶などの特異的な食べ物との関連少ない
・ ココアは、降圧、抗炎症作用
・ INTERSTROKEトライアルは、魚・果物が卒中リスク減少と関連し、観察研究では、肉類多く摂取で虚血性卒中リスク増加を示した。肉の種類、red meet、processeなど特異的な影響がリスクと関連するかは不明
・ 卒中リスクに直接関連しないが、糖化飲料はいくつものリスク、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、心疾患と関連が有る。 whole grainは心臓イベント防御的。

ダイエット
・ "healthy" dietの定義によりばらばらな結果
・ Women's Health Study: 高繊維・ω3摂取増加/悪脂肪減量は10年において卒中リスク増加 vs Nurses' Health StudyとHealth Professionals' Follow-Up にてフルーツ・野菜・繊維が多く、脂肪・red meatの少ない場合卒中リスク低下と関連。
・ 他の研究では、unhealthy "Western" dietは卒中リスク増加と関連。
・ 2つのhealthy dietの代表、DASH diet (降圧主体)と Mediterranean dietは卒中リスク減少。後者は特に心疾患・死亡リスク減少効果有り。

栄養不良
・ 栄養過多は卒中リスク増加と関連するが、栄養不良も関連し、女性初年の栄養不良は特に子供の卒中リスク増加とかなり関連が有り、子供の頃の栄養不良は卒中リスク増加と関連性がある。


Nutrition and the risk of stroke
The Lancet Neurology, Volume 11, Issue 1, Pages 66 - 81, January 2012


母体1年間、子宮内、乳児期、子供期、成人期の栄養不良が後年の卒中傾向と関連するが、メカニズムは不明。栄養過多は、肥満・高血圧・脂質異常・糖尿病発症促進のためリスク増加。
サプリメント内の抗酸化ビタミン、ビタミンB、カルシウムは卒中リスク減少させない。
信頼性の低いエビデンスだが、Mediterranean やDASH (Dietary Approaches to Stop Hypertension) diet、減塩・付加糖分低下、高カリウム、肉、過剰でないエネルギーといった食事により卒中は予防可能かもしれない。ビタミンD・海由来のω3脂肪酸サプリメントの影響は検討中。

参照:http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Strokes/30188

ビタミンEに関しては、ここでも、死亡リスク増加の可能性が言及されている。

参照:
・ ビタミンEは出血性卒中を22%増加させ、虚血性卒中を10%減少させる。 2010年 11月 06日
・ 高用量ビタミンEは寿命を短くする 続編 2004年 11月 17日


ビタミンDとカルシウムと、卒中の関連はちょっとややこしく感じる。
・ 高齢者女性:カルシウム・サプリメントで、心血管イベント(心発作、卒中)増加 2011年 04月 20日

by internalmedicine | 2011-12-13 16:37 | 中枢神経  

<< ゴーシェ病:多発性骨髄腫を見逃... 夜間下肢こむら返りをみたら薬剤... >>