HDLを上げる新しい高コレステロール薬 torcetrapib

 HDLのレベルを上げて、LDLのレベルを下げる冠動脈・循環器疾患の治療法ということで、torcetrapibというCETP(Cholesteryl Ester Transfer Protein)の臨床効果の論文がでたようです。 ファイザーに都合の良いデータのようですが、高コレステロール血症治療にあたらしい武器ができそうですし、理論的にもHDL増加、LDL低下が直接結びつくお話です。

火照りがひどくてニコチン酸など実際使えない薬だったわけで、HDLコレステロール増加は実質上無かったわけですから・・・この臨床的意味づけは今後の課題だと思いますが


Effects of an Inhibitor of Cholesteryl Ester Transfer Protein on HDL
NEJM Volume 350:1505-1515 April 8, 2004 Number 15

torcetrapib連日120mg投与でHDLをatrorvastatin投与を加えた場合、加えない場合、61%、46%増加させる。TorcetrapibはLDLをatrorvastatinコホートで17%低下。
HDL・LDLサブクラスの変化をもとらす。


<解説>
ちょいと調べてみるとCETPのtransferメカニズムも結構いろいろありそうですね。

代謝の参考スライド
HDLコレステロール・エステル(CE)の選択的取り込みについて前のスライドで説明したが、
血中のCE転写蛋白(CETP)を含むコレステロール輸送の逆の動きをする(逆転送)、もうひとつ重要。

CETPにより、CEはHDLから、VLDLやLDL類といったapo-B含有蛋白へ転送される。
※ゆえにCETPを抑制すると、apo-Bを含むVLDL、LDLは供給をうけられなくて、HDL↑、LDL↓ってことになるわけです。



<やや簡単に解説>
HDLという袋の中に、中性脂肪(トリグリセロール)や、遊離したコレステロールやエステル化したコレステロールが入っていて、袋の表面にapoA-I蛋白という袋の目印が入っている。
LDL( )にも同様に膜表面にapoB-100蛋白があるわけです。
しかしながら、働きが違っているわけです。HDL3はHDL2にリモデリングという形で遊離コレステロールがLCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)の作用でエステル化CEが次第に増加し成熟していく過程で、肝外組織やLDLから、コレステロールを受け取り、お掃除の役割を果たすわけです。
故に、非常に簡単な説明としてHDLは善玉、LDLは悪玉となるわけですが・・

by internalmedicine | 2004-04-08 16:39 | 動脈硬化/循環器  

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