降圧剤併用療法におけるJSHの特異性

JSH2004とは日本の高血圧治療のお手本となるべき道しるべです。
他国のガイドラインと読み合わせるとその特異性に気づきます。


AFP2000年では単剤を優先ということでしたが
http://www.aafp.org/afp/20000515/3049.html
(No studies have provided conclusive evidence of increased tolerance when these agents are taken orally in combination with a diuretic. Therefore, these combinations are not indicated for first-line therapy.)

ヨーロッパのガイドラインESH-ESC(http://www.eshonline.org/esh/pdf/2003_guidelines.pdf)では
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“全部ではないが多くの患者では徐々に治療を開始して数週間で目標値に達する治療をすべき。そのためには単剤より多剤が必要という場合も多い”
という表現に変わってます。

“ALLHATでは、対象がgrade1/2のときは約60%が単剤でコントロール可、HOT studyでは対象がgrade2/3で単剤では25-40%、糖尿病患者のトライアルでは大部分が2剤必要で、平均2.5-3.0剤”ということで、
さらに低用量時の単剤と併用の比較では、VA study、PROGRESS studyがあり、併用の有用性が示された。

まとめとして
・全部ではないが、多くのケースでは段階的にスタートし、目標値には数週間で到達するように行うべきである。
・目標血圧に到達するため、多くの患者では複数の併用療法が必要となる。
・ベースラインの血圧と合併症の有無に従って、低用量の単剤もしくは多剤の治療を介すするのは合理的である。
・どの選択法にもメリット・デメリットが存在する。
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と、かなり併用療法も、是々非々で是認の方向です。

23ページの図が有名ですが、ある権威ある先生によるとこの根拠は薄弱だとか・・・
降圧剤併用療法におけるJSHの特異性_a0007242_17564831.jpg


JNC-7では
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/289.19.2560v1/TABLEJSC30096T5
“多くの患者では、単剤・併用にかかわらず、サイアザイド系利尿剤を第一に使うべきで、ランダム対象臨床治験でこの根拠は示されている。”ということです。



でも、あいかわらず、JSH2004では、あいかわらず単剤を勧めています(後述参照)



併用療法の意味合い
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血圧=心拍出量×総末梢血管抵抗で説明
http://www.hypertensiononline.org/slides2/slide01.cfm?q=at1+receptor&dpg=6
心拍出量↓:β‐遮断剤・CCB・利尿剤
末梢血管抵抗↓:ACE阻害剤・AT1遮断剤・α2拮抗剤・CCB・DA1アゴニスト・利尿剤・抗交感神経性血管拡張剤
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と説明している場合と
neurophysicalに説明している場合があります。
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レニン・ Neurophysiologyへの影響で説明
http://www.ub.uio.no/umn/farm/pbl/artikler/hypertens9.pdf
良性の本態性高血圧患者においてPRAは血中ノルエピネフリン、FENAに正の相関
PVやEVFVとして表現される体液量と負の相関。

SNAやPRAがβ遮断剤で抑制されたとき、たとえば、高レニン活性患者においてはPV、ECFV、Nae値は増加する。逆に、低レニン活性患者で降圧利尿剤を投与した場合、PV、ECFV、Nae値減少し、SNAやPRAは増加する。

高レニン値の場合利尿剤やCCBの反応は高い。しかし、α遮断剤、β遮断剤、ACE阻害剤、ARBは後者の場合反応が高い。
(shouldと書いてあるのが疑問なのだが・・・)

大量にSNAやレニン・アンジオテンシン系を抑制しても不十分な降圧効果の場合に、利尿剤を投与したときに不用意な過剰な降圧効果をもたらすことがある。

降圧剤選択や併用療法選択の場合、両極端なケースを想定して、降圧効果を促進する方法を考えてみるべきで、薬剤の減量、副作用を抑制できる可能性がある。

全例で1種類の降圧剤で十分な降圧効果が保証されるはずもないので、各患者の病態生理に応じた選択がなされるべきで、引き続く処方の場合は併用療法が重要となる。

最近は低用量降圧利尿剤の有用性が確認され、β遮断剤、ACE阻害剤、ARBとの併用の有効性が各種研究で示されている。

ACE阻害剤とCCB併用は併用療法としては降圧効果に関して優秀で、合併したリスク要因の改善にも有効である。
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なぜ、日本のガイドラインは、他の記載をみると、ヨーロッパのガイドラインをまねている気がするのですが、この降圧剤選択だけどうも特異で、単剤を未だに推奨しています。
しかも、利尿剤の位置づけはヨーロッパのガイドラインは横一列の印象なのに、降圧利尿剤を第3次選択薬であるかのごとく表現しているのです
(以下のJSH2004の太字を参考にしてください)。

JSH2004
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降圧薬の使い方
●降圧薬の投与は単薬(併用合剤が使用可能になれば、それを含む)で低用量から開始する。
・1目1回服用でよい長時間作用型の降圧薬を使用する。
・2~3ヶ月以内に降圧目標に到達することを目指す。
 血圧が降圧目標に達するまでは2(~4)週間ごとの血圧測定が望ましい。
・外来での降圧目標140/90mmHg未満(非高齢者で可能なら130/85mmHg未満)に到達しない場合には、増量するか、相加、相乗作用が期待できる他のクラスの降服薬を併用するか、ほとんど降圧がない場合は他のクラスの降圧薬に変更する。忍容性が許すならば増量するが、通常量の2倍以上にはしない。
臨床で行われる2薬の併用には以下のものがある。
①CCB/ARB
②CCB/ACE阻害薬
③DHP系CCBとβ遮断薬
④ARBと利尿薬
⑤ACE阻害剤と利尿薬
⑥利尿薬とβ遮断薬
⑦β遮断薬とα遮断薬
⑧CCBと利尿薬

・利尿薬の少量投与は他の降圧薬の効果を高める。利尿薬を含まない2薬の併用で降圧が不十分の場合には3薬目に利尿薬を用いることを原則とする。
・24時間にわたる降圧が望ましく、早朝高血圧や逆白衣高血圧症対してはより長時間作用の降田薬やα遮断薬、中枢性交感神経抑制薬の就寝前の使用により対処する。
●治療開始後6ヵ月を経過しても降服目標に到達できない場合には高血圧専門家(日本高血圧学会特別正会員、FJSH)に紹介する。



減量と中止
 降圧薬治療は生涯継続しなければならないことが多い。 しかし、生活習慣の修正により、降圧薬を減量あるいは中止することも可能なことがある。降圧薬投与中に長期間にわたり降圧目標を大きく低下しか患者では、適正な生活習慣の継続、血圧の定期的観察を条件に降服薬を漸減、さらに中止を試みるのもよい。
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米国ガイドラインJNC-7(http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/289.19.2560v1http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/hypertension/)とヨーロッパのガイドラインESH-ESCをぐぐると日本語で検索される比率が多いのは奇異です。
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JNC-7:日本語:1,800件 英語: 18,200件
ESH-ESC:日本語:291件 英語: 1,020 件

JNC-7 0.05
χ二乗297.8104 p=2.2 10^-16
Z値:24.07581294
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これは日本が有意にESH-ESCを重用している間接的証拠といえます。なぜこれほどまでにJNC-7を嫌うか・・・答えは一つ、降圧利尿剤を第一選択薬に持って行きたくないからです。
なぜ・・・・・・・・


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by internalmedicine | 2005-01-06 16:29 | 動脈硬化/循環器  

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