JSH2004の問題点:続編

JSH2004をみて気づくのは・・・とんでも高血圧ガイドラインの続編になります。

JSH2004の特異性の項目で指摘した以外に

1)高血圧専門家=(日本高血圧学会特別正会員、FJSH)という定義がなされている
(自分の学会の特別正会員以外専門家と認めないなんて記載あんまりみたことないなぁ・・・:腎臓や心臓、内分泌関係から専門という場合もあるはずなのに・・・:偏狭な学会だこと)

2)二次性高血圧症の除外に、睡眠時無呼吸の記載がない(JNC-7では、原因の第一に書いてある)

3)カリウム正常アルドステロン症の頻度にかかわらず触れられてない。

4)逆白衣高血圧の記載








  
最後の、逆白衣高血圧(仮面高血圧)をやや説明します・・・・
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“逆白衣高血圧(仮面高血圧)”は診療時の血圧と持続血圧で分類
http://hyper.ahajournals.org/cgi/content/full/40/6/795

1)両方の測定とも正常:正常(true normotensives)
2)両方の測定とも高血圧:高血圧(true, or sustained, hypertensives)
3)診療時高血圧・持続血圧測定で正常:白衣高血圧(white-coat hypertensives)
4)診療時正常血圧・持続血圧測定で高血圧
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持続血圧(ABPM)の時の高血圧の基準は、“覚醒時135/85、睡眠時は120/75mmHg”(JNC-7)です。

(この定義だと・・・血圧が130/80でズーと寝てるときも一緒でもこの逆白衣高血圧ということとなります。)



もっとも問題なのは、Pickeringらの用語(http://hyper.ahajournals.org/cgi/content/full/40/6/795?ijkey=74c0f24c400a5076d10568021bde6ec3b157ed4a&keytype2=tf_ipsecsha)の無視です。

JSH2004では“診療所血圧は正常であり、非医療環境での血圧値が高血圧状態にあるもの”としているが、持続血圧測定の基準を無視しており、定義を無視しており、用語の正確性に疑問が残る。
参考:http://heart.bmjjournals.com/cgi/content/full/89/5/571

なお、通常の血圧測定(CBPM:conventionalよりリスク分類に優れているらしいが、どのように選別していくかが問題。両親の家族歴、心血管マルチプルリスク、糖尿病などで疑われるとのことで、こういう例には持続血圧測定しか選択肢はないのである。
おそらく、本来の定義を無視したのは、持続血圧測定が保険適応にないというジレンマからなのかもしれない。
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日本で盛んに仮面高血圧を講演しているかたのプレゼンテーションのイメージ
JSH2004の問題点:続編_a0007242_1643451.jpg

n=253としており、極端なケースは4-5例程度です。2%程度のケースを声高に叫んでますが、睡眠時無呼吸症候群の頻度は5%程度でよく合致するんですが・・



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【追加】“仮面高血圧症”の定義の疑問(H17.1.19加筆)
Medical Practiceという医学的な雑誌には別の先生がやはり原著と異なった記載を行ってます。

“診察室の血圧が正常で、診察室以外の血圧が高値を示す状態が、「仮面高血圧 masked hypertension」として注目されている 1)”と書かれており、
                 
1)はPickeringの“Masked Hypertension”の原著(http://hyper.ahajournals.org/cgi/content/full/40/6/795)で、
“ambulatory blood pressure monitoring”と “conventional clinic measurement for defining blood pressure”との関係で定義されてます。

やっぱり・・・この先生方がおかしいのか、Piceringさんが趣旨替えしたのか?

by internalmedicine | 2005-01-06 17:42 | 動脈硬化/循環器  

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