スタチンの有効性は、コレステロール低下とCRP低下の2つの要因で説明される
2005年 01月 14日
journal watchから
http://general-medicine.jwatch.org/cgi/content/full/2005/114/1?q=etoc
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2つのメーカースポンサーのランダム化試験、ひとつはintensiveもうひとつはintensiveでないもの、すなわちatorvastatin80mgとpravastatin40mgで、冠動脈疾患で比較。
よりintensiveなPROVE-ITでは、急性冠症候群後2年で心血管に便tのが少ないことが判明。REVERSALでは、それより強化的レジメンで18ヶ月後冠動脈進展は少なかった。
LDLコレステロールの減少はCRP値の減少と弱い相関があるので、研究者たちはLDL低下に加え、CRP低下を介するアウトカムの検討を行っている。
PROVE-ITでは、LDL<70mgの患者では、CRP<2mg/L以下の患者ではそれ以上に比べ、臨床的アウトカムは良好
同様に、LDL≥70 mg/dLでは、CRP低下は良好な臨床的アウトカムと相関。
lDL・CRPで補正後、特定のスタチンは臨床的イベントの減少に依存しなくなった。
REVERSALでも同様の知見であった。LDL低下とCRP低下は独立して粥腫の量減少と独立して相関がある。
コメント:スタチンはCRP値を減少することと相関。新しいデータでは、LDL低下によらず、スタチンによるCRP減少はアウトカム改善をもたらすことが示唆される。
単にCRP値だけでスタチン治療を開始して良いか、スタチン量をCRP連続測定で補正して良いか(他の抗炎症薬剤の選択も含め)、まだ不明な問題点は価値のある問題点であろう。――――――――――――――――――――――――――――――――
これは “強化治療ほど良い”
“Lipid-Lowering After Acute Coronary Syndromes -- Intensive Is Better”
http://general-medicine.jwatch.org/cgi/content/full/2004/413/1
というやつの練り直し論評です。
スタチンを急性冠症候群患者で急にやめてしまうと、死亡率が増すなど、スタチンの2次予防としての有効性は確立しているわけで、最近はコレステロール低下作用以外のことが語られることがおおいのです。
ある国立大学の教授の“pleiotropic”という言葉は本来の意味からはずれており、この場合はスタチンの脂質低下以外の効果(Pleiotropic Effect)と思うのですが、
ここでは、“pleiotropic effect(血管内皮機能改善などの多面的作用)”と記載しています。実にまかふしぎな()内の記載です。
さらに、
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"スタチンには,プラバスタチンのような水溶性スタチンとアトルバスタチン,シンバスタチンなどの脂溶性スタチンがある。水溶性スタチンはその物理的な特性上,組織へ移行しにくいが,脂溶性スタチンは組織に移行しやすいため,pleiotropic effectが発揮されやすいと考える。"
http://www.lifescience.jp/ebm/cms/no.3/report/report_node.htm
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と記載があります。
水溶性スタチンにも“pleiotropic effect(血管内皮機能改善などの多面的作用)”がみられ、
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・atorvastatinは血小板活性減少、PAI-1、vascular reactivity[25]
・pravastatinはプラークの安定化
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=11922400&dopt=Abstractから)
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と別の情報ソースからは長所がそれぞれあるようなのに・・・スポンサーへの思いやりがかいま見られます。
結果的にはリピトールを主に使用しているモチベーションには変動がありませんでしたが
http://intmed.exblog.jp/m2004-03-01/#82313
この国立大学教授の記載には少々わだかまりが残ります。
“まず、結論ありき”、すなわち、否定的見解ありきで、それをデータで主張するとき、視点がずれてますから、あやまった見解を出してしまうことが多いのです。エビデンスレベルの低い観察研究で結論的な判断をするのは決して科学的とは言えません。
JLITなんて前向き観察研究ではあるけどエビデンスレベルの高い研究とは言えませんし、サブ解析などでエビデンス上制限があるわけです。揚げ足をとるのは・・非科学的
↓
http://www.geocities.jp/m_kato_clinic/choles-cholesterol-01.html
概念論からことのことの是非のみを主張することは非科学的です。もし科学性を主張したければ、同じ舞台に立って、データを客観的視点で検討すべきで、思想ともいえる、概念の固定化はミスリーディングのもとです。
薬害オンブスマン・パーソンはかならず“医薬品=悪”という発送からしか主張されてません。大事な問題点の指摘がなされることはあるのでしょう。しかし、そういう意味で彼らの主張は常に科学的ではないのです。なんらかのSuggestionはあるのでしょうが・・・存在意義は否定できません。しかしながら、彼らは低エビデンスレベルの疫学調査を根拠にインフルエンザ・ワクチンさえ否定し続け、使用法に問題がある喘息治療薬(rescue drug)をかれらは否定し続けています。
日本の日常臨床に科学性を!
【科学的であることと医者の仕事】
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医師は科学者かというと答えは簡単、NO!です。技術者です。updateされた“science”と優れた“art”という武器と、人間的魅力を含めたコミュニケーション技術を備えたものが最良の医師であろうとおもうのです。それを具現化するためには技術者自身の心身が良好なことが望ましいわけです。updateされた“science”を手に入れるためには一度scientistになるとその方法論を理解しやすい。そういうadvantageはある。非臨床的なことでも、方法論は役立つ。ただ、その分野の知識は臨床には役立たないことが多いというのがわたしの感想です。
このことをやや誤解しているBlogを見かけたので、言及したくなりました。
by internalmedicine | 2005-01-14 11:31 | 動脈硬化/循環器