短期的β2作動薬は死亡リスクを増やす・・・しかしそれ以外の要因が関与の可能性

症例対照研究で、532名の喘息患者と同数の対照で検討した結果短期作動的β2作動剤の死亡リスクは対照の2倍。薬剤自体の副作用に加えて、いくつかの他の原因も考えられた。
Bronchodilator treatment and deaths from asthma: case-control study
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/bmj;330/7483/117
BMJ 2005;330:117 (15 January)
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喘息で死亡した65歳未満の喘息患者と同時期・年齢・地域でマッチした喘息入院患者を対照
補正後、指標とした4-12ヶ月の処方内容は有意差無し。1-5年の前処方では、死亡率は短期的β2刺激剤投与と正の相関(odds ratio 2.05 95%CI 1.26-3.33)、抗生剤使用と逆相関(0.59 0.39-0.89)
前者は46-64歳で特に影響があり、抗生剤使用との関連は45歳未満で影響があった。
すべての時期で年齢が影響を与え、経口ステロイド使用との逆相関は45歳未満であった。1-5歳での長期的β2刺激剤と逆相関、メチルキサンチン使用との正相関は有意ではなかった。

今回わかったこと
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・長期的β2刺激剤の死亡リスク増加のエビデンス無し
・短期的β2刺激剤は死亡率増加と相関
・経口ステロイドと抗生剤投与は死亡率を減少

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死亡リスク増加の、もっとも多い年代は1-5歳であり、短期的β2作動薬(主にsalbutamol)は2つのコホート研究でも一致しており、この影響はUKでの43死亡のうち1つという影響である。
β作動薬での死亡リスク増加と吸入ステロイドとの併用時のβ作動薬での死亡数の減少がこのデータベースでみられた。
死亡リスク増加が直接のβ2作動薬の副作用によるものかは結論づけられないが、関心のあるテーマとして残る。
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注意しなければいけないのは、β2刺激剤使用が原因なのか、結果なのかです。特に症例対照研究の場合注意が必要です。

日本では、一部の人の先導により安易にβ2刺激剤をとりあげてしまった経験があります。
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いまや“文化人”として存在する櫻井良子やビートたけしがベロテックという薬剤を喘息患者から取り上げてしまったこと(http://www.fsinet.or.jp/~aichan/topix/righttopics35.htm
)、ピークフローモニタリングに基づく管理方法や“rescue drug”としての使用方法の徹底をせず、患者にとって有益な処方を広めるのではなく、単にとりあげるだけで終わった厚労省のやりかた、専門医の無力など感じた次第です。正しいことではなく、声の大きい方が通用してしまう無力感を全国の喘息専門医は感じたことでしょう。
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救急薬剤としての“β2作動薬”使用を少なくするための、日常の治療(症例によってピークフローメーター下の管理、吸入ステロイド使用など)が重要と言うことです。

1-5歳での経口ステロイド使用に関してもう少し踏み込む必要がありそうです。

by internalmedicine | 2005-01-14 12:16 | 呼吸器系  

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