“ω-3ドグマ”は正しいのか?
2005年 01月 21日
たしかに、DHA含めω3(n3)脂肪酸は必須脂肪酸ですし、心血管疾患による死亡率減少、血圧減少がRCTで示され、疫学的研究で欠乏により心血管疾患、炎症性疾患、精神・知的機能関連疾患、正常に満たない神経発達の関連など示唆されております。
エビデンスの総本山?AHRQで、ω3脂肪酸の効果に関するまとめが書かれてますが、一部気になる記載が有ります。
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Omega-3 Fatty Acids, Effects on Animal Studies
http://www.ahrq.gov/clinic/tp/o3arrtp.htm
Omega-3 Fatty Acids Effects on Asthma
http://www.ahrq.gov/clinic/tp/o3asthmtp.htm
Omega-3 Fatty Acids, Effects on Cardiovascular Disease
http://www.ahrq.gov/clinic/tp/o3cardtp.htm
Omega-3 Fatty Acids, Effects on Cardiovascular Risk Factors
http://www.ahrq.gov/clinic/tp/o3cardrisktp.htm
Omega-3 Fatty Acids, Effects on Cardiovascular Risk Factors
http://www.ahrq.gov/clinic/tp/o3lipidtp.htm
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AFPにて紹介記事有り、上記をいちいち閲覧するよりはと概略・・・
http://www.aafp.org/afp/20050115/practice.html#p5
ω3脂肪酸の効果
Benefits of Omega-3 Fatty Acids
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AHRQからのエビデンス報告によれば、魚脂の消費が心臓疾患による死亡数を減少する可能性があるが、他のアウトカムへの影響は結論づけできないとのことである。
内容は http://www.ahrq.gov/clinic/epcindex.htm#dietsup. に書かれている。
10のRCTの分析と9つのω3脂質の呼吸器系への影響を目的とした研究を分析したもの。AHRQはω3脂肪酸は成人・小児の呼吸器系アウトカムの改善のアジュバント・単剤治療としての有効性は結論づけできないものであった。
喘息一次予防への役割は6つの研究。食事性の魚摂食は喘息一次予防に役割を果たしているかのように思えた。しかし、喘息頻度と魚摂取や有意でかつ正の相関がアジアの青少年にはある。他の研究では成人喘息発症と食事性の魚の摂取の相関はみられなかった。
心血管系のベネフィットという意味では、魚脂とALA(αリノレン酸)サプリメントが全原因死亡率を減少させ様々な心血管アウトカムを改善したという研究がある。しかし、そのエビデンスは魚と魚油においてもっとも強いものである。特異的アウトカム(特に心筋梗塞や脳卒中)への影響は不明であり、そして、ω3脂肪酸の最適な質やタイプ、最適なω3:ω6比率は未だ不明。もっとも有意なベネフィットは心臓突然死の減少であろう。6つのRCTのうち4つではベネフィットを認めたが、一つの研究はベネフィット無し、1つは有害性が認められた。すべての研究で研究デザインは貧弱であった。魚脂とALAサプリメントの副作用は小さいものである。
総括的に言えば、魚脂の中性脂肪への影響は強力で、用量依存的である。血圧や血管形成術後の冠動脈再狭窄、冠動脈動脈硬化を有する患者の運動耐容能、、recent MIの心拍の乱れへのベネフィットは小さいながらエビデンスがある。
ω3脂肪酸は総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、空腹時血糖、糖化ヘモグロビン値へ影響を与えないようで、2型糖尿病患者の血中インスリン値やインスリン抵抗性への影響はない。
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【私見】
少なくなったとはいえ魚摂取量が多い日本人にエビデンスが適応できるかどうか?
そして“エビデンスは魚と魚油においてもっとも強いものである”という記載事項は重要とおもいます。 n-3系の多価不飽和脂肪酸(ω3脂肪酸)に関しては、ウェブ上情報が氾濫しております。
そして、
リノレン酸(C18:3、ALA)→→(エ)イコサペンタエン酸(EPA:eicosapentaenoic acid、C20:5)→ドコサヘキサエン酸(DHA:docosahexaenoic acid、C22:6)の経路のEPAやDHAを食品に混入させる傾向が強くなっております。
DHAサプリメントに関しては、もうすこし慎重であるべきとも思うのです。とくに妊娠期・授乳期・幼少時にはとくにそうです。
私が気になるのはある米国の大学に書いてあるprecautionです。
http://www.umm.edu/altmed/ConsSupplements/DocosahexaenoicAcidDHAcs.html
“魚脂はDHAやEPAを含む。EPAを含むサプリメントは乳幼児・若年小児には推奨できない。なぜなら早期発達の段階でDHAやEPAのバランスの混乱をきたす。
妊娠女性は魚脂サプリメントを摂取することについて同様に注意すべきである。”
“米国のコホート研究では妊娠中のシーフードの摂取量と胎児の成長が逆相関”http://aje.oupjournals.org/cgi/content/abstract/160/8/774“Results from this US cohort support the conclusion that seafood intake during pregnancy is associated with reduced fetal growth.”
という報告もあります。
・2003年のDietary Guidelines Advisory Committee Meeting
ω3サプリメントや魚”が狭心症男性に対して有効でないということと、副作用を有している可能性を示唆。に関しては注意深くreviewされなければならない
http://www.health.gov/dietaryguidelines/dga2005/minutes09_2324_2003.htm
・British Nutrition Foundation(1999 12.1開催一部訳 the briefing paper on ‘n-3 Fatty acids and Health)
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5.血中のコレステロールに影響を与えないが、心臓疾患のリスクへのメカニズムは不明。長鎖n-3脂肪酸(EPA・DHA)は空腹時・食後ともに血中の中性脂肪濃度を減少させる:リノレン酸はこの効果を示すことができない。血中脂肪酸濃度、とくに食事によるものは、動脈硬化進展と関連すると認められている。αリノレン酸や長鎖n-3脂肪酸は血管機能や不整脈へ好影響をみとめている。
6.DHAは人間の脳や網膜の重要な構成成分である 妊娠・授乳中に関する安全性への関心が出現している。DHAはαリノレン酸から体内で合成されるが合成速度が未熟児では不適切な可能性がある。母乳はDHAを含み胎生期の負荷の必要性が増加する
未熟児の研究ではDHAサプリメントは、少なくとも短期研究で視覚への影響にベネフィットがあった。
しかし、n-3脂肪酸が乳児に、特に胎生期に、長期的に視力・認知機能発達にどのような影響を与えるか決定する必要性がある。
7.不飽和長鎖脂肪酸はエイコサノイド類合成の前駆物質である。細胞・組織の広範な影響を局所的に与える生物学的活性物質であり、炎症、凝固、再生、血圧なども影響を与える。EPA由来のエイコサノイド類は炎症性・免疫性の影響はn-6脂肪酸に比べ少ない。代謝産物合成の間PUFAの2つのファミリーは同じ酵素を競合する。n-6、n-3脂肪酸の摂取のバランスは体内のエイコサノイド類の種類・量により決定されるだろうし、炎症反応の強さにも影響を与えるかもしれない。慢性関節リウマチや喘息、苔癬、Crohn病などの慢性炎症性疾患への興味が爆発している。慢性関節リウマチでは魚脂による症状軽減作用が示されているが、他の炎症性疾患への一致した影響の報告は少ない。
8.n-3脂肪酸により非インスリン依存性糖尿病の進展にわるい影響を与えるエビデンスが集積しつつある。インスリン抵抗性を介する機序が考えられる。
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“http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsln/teigenHamazaki02.htm”をみられたらわかると思いますが、もともと日本で推奨されている“n3:n6比”の根拠なんてないのです。
DHAはまだ健康エコナ(参照)に比べればまだましなのかなぁ・・と思ってますが、健康エコナもそうですが、市販後実験とおもわれる・・・DHA入り油の宣伝が行われております。
きちんと、リスク可能性に関して、掲示すべきと思うのですが・・
ところで、エビデンスとかけ離れた理屈や主張がまかり通っておりいつの間にか常識化してしまうことが多く、物知り顔でテレビなどのメディアで非科学的常識がいつの間にか科学的常識と化けてしまう、そういう事態が、日本の栄養“学”の世界にはとても多いと思います。
“善”か“悪”かのdichotomyを行い、“悪”を滅ぼして、“善”を推奨する・・・水戸黄門のような“栄養学”・・・。真の栄養“学”をしてほしいものです・・
、glutamine 酸など興奮性アミノ酸による神経毒性(excitotoxin)作用ですっかり逆になってしまった“グルタミン酸は頭によい”というのがありました。
“空論にふりまわされる健康論は危険”なんです。サプリメント全般、実験的であることを今一度考えて頂きたい。
厚労省のいうところの特定機能食品のエビデンスはかなりレベルの低いもので、有効性があるとのたまわっている食品でさえ、検討被験者数・・・・とかいたところで、・・・1/22回しにします。
by internalmedicine | 2005-01-21 16:28 | Quack