情報を操作するインフルエンザ報道:読売新聞
2005年 02月 28日
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5235a2.htm
解熱剤使用を控える傾向にある移行のこのインフルエンザ脳症の疫学がいかなる状況になっているのか検討されている昨今、劇的な経過を有するインフルエンザ脳症を疑う調査がなされました。これ自体の報道価値は重要なものだと思います。
しかしながら、2つの記事を比較すると・・・
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脳症で子ども6人突然死 インフルエンザ
インフルエンザに感染した子どもの一部に起きるインフルエンザ脳症の中に、意識障害などの神経症状が出る前に子どもが突然死したケースが2002-03年の冬に大阪府で6例あったことが厚生労働省研究班の調査で24日、分かった。
研究班メンバーの塩見正司大阪市立総合医療センター小児救急科部長によると、大阪府内で1-8歳の子ども6人がインフルエンザ発症後すぐに、寝ている間に突然死した。
子どもには事前に脳症をうかがわせるような異常はなく、うち3人を解剖すると脳が腫れていた。90年代半ばごろにも同様の死亡例が府内であったという。
6人のうち4人は抗ウイルス薬のリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)を飲んでい たが、塩見部長は「タミフルの発売前にも症例があり、タミフルが原因ではないだろう」と話している。
(共同通信) - 2月24日13時0分更新
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インフルエンザ脳症に新タイプ、大阪で子供6人死亡
インフルエンザに感染した後、中枢神経が急速に侵される「インフルエンザ脳症」で、睡眠中などに子供が突然死する新しいタイプが出現、2年前の流行期に大阪府内だけで6人が死亡していたことが、厚生労働省研究班の調査でわかった。
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厚労省研究班(班長=森島恒雄・岡山大教授)に同様の急死例が数例報告されたが、詳しい調査は行われていない。ただ、大阪で死亡した6人のうち4人は、抗ウイルス薬オセルタミビル(商品名タミフル)を服用、その3―7時間後に死亡していた。
タミフルは01年2月から発売されたが、製造元のロシュ社(本社・スイス)は、動物実験で大量投与を受けた幼若ラットが死亡、脳から高濃度の薬剤成分が検出されたため、昨年1月、1歳未満には投薬しないよう警告していた。
(読売新聞) - 2月24日3時16分更新
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報道によって、タミフルとの関連性の印象が違います。
読売新聞は、タミフルとの因果関係を示唆する印象をうえつけようとしております。
タミフルとこの脳症の因果関係に関する情報はデータ不足・情報不足なのです。
しかしながら、薬剤憎しの報道です。
HONCODEなどのWeb情報の信頼性のガイドラインでは
http://www.hon.ch/HONcode/Japanese/
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医学的な/健康に関するアドバイスは、医学/健康に関する教育を受け、視覚を持つものが掲示していること。ただし、専門的な教育をうけてないものによるアドバイスであることを明確に示している場合を除く。
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と、かかれてます。
より影響力が高いと、自分たちも思っているであろうメディアの方々はよりWeb情報より さらに自重した書き方が要求されるわけです。
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記者は、素人である自らの考えは記事内容に含めてはならない。
発想の確認は専門家に問うべきである。(最近、専門家以外の風変わりなヒトにわざと専門家面させて、自分の都合の良いように、返事を引き出し、あるいは、一部の都合のいいところだけ記載する方法が目立つようですが・・・)。
新聞記事が問題なのは、その方面の医学教育をシステミックに受けてない記者が、専門医の意見を飛び越して、独断でかかれていることがあることです。一部医療資格を持った人間を採用しているようですが、彼ら・彼女らが果たして、科学的なセンスを身につけているかはだれもしらないわけです。その方面の専門家でないにもかかわらず、判断をくだすわけですから、記事をかく場合には慎重さが要求される。
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共同通信の“塩見部長は「タミフルの発売前にも症例があり、タミフルが原因ではないだろう」と話している。”のような慎重な専門家のコメントを記載してない恣意的な記事です。
メディア上での、ライセンスをもっていないものが主張してはいけないということはないのですが、権威を持ちたいのであれば、BBCやCNNなどのように、専門医のコメントをまとめる形で報道すべきと思います。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/default.stm
健康に関する情報に関して、専門家の意見を聞かず、メディア自身の解釈を報道していいのだろうか?読売新聞の姿勢は、専門家へのリスペクト【respect】 の喪失が主体の日本の世情の鏡なのでしょう。
元朝日新聞記者のお医者さん・・・
“戦争報道にたとえれば、戦場を取材せず、参謀本部だか戦略研究所だかの取材だけで作られた報道だなあ、という違和感を。”
TIPにこの問題が掲載されるという情報をえています・・
http://npojip.org/jip_menu/npojip.htmおそらくは・・・そこからヒントを得たか、あるいは、戦略的な報道なのではないかと・・・。
かれらがこういう情報を流す利点は・・・
1)フジテレビのC型肝炎報道のアワードの再現:個別的もしくは団体の報償目的
2)センセーショナリズム:購読者数増をならう
3)TIPなどの思考偏重型団体との連携強化:センセーションの宝庫
などと想定されます。
読売の勘違いぶりは おそらく 医療ルネッサンス あたりからだと思われるが・・この特集自体はBBCのような専門家情報収集型となっている。 記者がそのうち自らの能力を過信したたため、今回のような私的な意見が入り込んだ可能性もあります。
情報ソースの確認がメディアリテラシー上重要ですが、背後の団体に思いを巡らし、ステレオタイプの意見に関しては、眉につばをいっぱい塗ってみることが重要です。
読売新聞医療欄が信用できないという事例
ゲーム脳
:http://www.pankura.org/archives/001431.php
米国学会などでガイドラインが模索されているメディア・バイオレンスは報道せず
ゲーム脳でごまかすことに、森氏と利害が一致したのだろうか?
暴力シーンなどの垂れ流しのテレビ番組や近年のタイアップした暴力肯定映画
で、スケープゴートが必要だったのだろうか?
by internalmedicine | 2005-02-28 16:05 | メディア問題