ヨーロッパ6カ国の終末期の治療;;;;人工呼吸中断など
2005年 03月 01日
ヨーロッパ6カ国の終末期の治療
Forgoing Treatment at the End of Life in 6 European Countries
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/full/165/4/401
Arch Intern Med. 2005;165:401-407.
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現代医療は、診断と治療において、予測し得ない機会をあたえることとなる。しかし、患者の人生の終末期にある場合、多くの医師は生命延長のためのすべての手段の使用を控える。ヨーロッパ6カ国の治療withheld(保留)・withdrawn(撤退)の頻度を研究し、背景を分析した。
未治療決定の頻度は、EOL決定の有無に無関係に、様々で、全死亡者検討でイタリアでは6%からスイスの41%に及ぶ。
すべての国でもっとも多く行われていることは水分補給・栄養補給、薬物であり、全治療のwithheld(保留)・withdrawn(撤退)は62%(ベルギー)~71%(イタリア)の頻度である。
生命延長1ヶ月以上と推定される治療の断念は、オランダ(10%)、ベルギー(9%)およびデンマーク(5%)、イタリア(3%)およびスウェーデン(2%)で、スイス(8%)でより一般的。
withdrawn(撤退)よりwithheld(保留)となりやすいのは高齢者 (odds ratio [OR], 1.53; 95% confidence interval [CI], 1.31-1.79)、病院外死亡 (death in hospital: OR, 0.80; 95% CI, 0.68-0.93)、生命短縮効果の大きいこと (OR, 1.75; 95% CI, 1.27-2.39)である。
参加各国で、生命維持治療をwithheld(保留)・withdrawn(撤退)することが、終末期に行われている。頻度は各国で様々である。薬物投与や、水分補給、栄養などのローテクノロジー介入が多く行われている。老人や病院外では、医師は、後に中断するより、生命延長治療開始を好まない傾向にある。
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"世界的には、ICUにおける、life supportの中断(withdrawal)後死亡数の増加がみられるそうです。"https://www.sccm.org:49443/pdf/EndofLife.pdf
日本と極端に違うと思われる例は、気管内挿管の抜管“extubation”です。
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ひとつの推奨方法は、“terminal extubation”と呼ばれる方法で、気管内挿管チューブの除去を、通常、sedativeやanalgesics投与後行われる方法。
もう一つの方法は、“terminal wean”であり、FIO2や人工呼吸数を次第に減少させる方法で、低酸素や高炭酸ガス血症を起こすのである。この方法はペース次第で状況が変わり、数分で完遂される場合がある。
国毎、分化毎によりlife supportの中断頻度はバラバラであるが、一般的傾向にある。
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日常的に行われていることがわかると思います。
終末期ケアについて、今後厚労省がガイドラインを作るようです
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厚生労働省の検討会は4日、末期がんなどの終末期医療について、患者・家族への説明や医療行為の内容など医師がとるべき具体的な手順を示したガイドラインを作るよう求める報告書の素案
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厚労省の調査によると、医師の86%、看護職員の91%が終末期医療について悩みを感じている、という。終末期医療をめぐるトラブルでは、北海道立羽幌病院の医師(32)が2月、家族の求めに応じて、無呼吸状態になった患者(90)の人工呼吸器を外して死亡させたとして殺人容疑で警察の調べを受けている。
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この羽幌の一件は、その後の終末期医療の現場に、混乱をもたらしてます。
たしかなのは、日本以外の国では全く問題にならなかったケースだということです。経済的査定を診療報酬でなされてますが、この警察の動きは、EOLのケアに対して萎縮的な影響をあたえているのです。この事例に関しては忘れずに検討する必要があります。
end-of-lifeにおいて、だれにとっても意味のない無駄な延命治療を温存することと、安楽死を大前提にしている市民運動について矛盾があると思っております。“Recommendations for end-of-life care in the intensive care unit:The Ethics Committee of the Society of Critical Care Medicine”のinformed consentの部分をみればわかりますが、“安楽死”というのは自己選択でなく、共通のrecommendationであるべきで、どうも、consentという言葉に結びつけてしまう。専門家を信用しないというのが、日本の医療の特徴であることがよくわかります。
日本の特異的な現象として、ターミナル・ケアやEOLを癌に限って考えているのもこまります。
ホスピスは癌・HIVまでです。間質性肺炎やCOPD末期などもEOLと考えるべき時が訪れます。特に、間質性肺炎のEOLは、急変が多いので、そのことを家族・本人に告げておかなければ、トラブルを生じることが多いというのが私の見解です。(教科書に書いておくべき・・・と思ってます)
by internalmedicine | 2005-03-01 11:20 | 医療一般