膿胸にストレプトキナーゼ注入はエビデンスなし

5年前、膿胸管理のガイドラインが出版された。
streptokinaseとurokinaseを利用に関して、肯定的にかかれており、副作用面でurokinaseが優位との記載があり

臨床的実感としても、Strepkinase使用後は膿の排出良好で、個人的経験から言えば当然治療予後を改善するものと想像してた。

ところが・・・・

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U.K. Controlled Trial of Intrapleural Streptokinase for Pleural Infection
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/352/9/865
NEJM Volume 352:865-874 March 3, 2005 Number 9
ベースラインはよくマッチされている。427名をStreptkinaseと偽薬処方をわけ、死亡・手術患者に対して有意差なし (ストレプトキナーゼ:64/206[31%] vs 60/221[27%], 相対リスク  1.14 [95%CI 0.85 - 1.54; P=0.43))
結果として、Strepkinaseの臨床的ベネフィットが除外された。
死亡率、手術割合、レントゲン的結果、滞在期間は有意差なし

重篤な副作用イベント(胸痛、発熱、アレルギー)がストレプトキナーゼでよく見られ(7% vs プラセボ3% 相対リスク 2.49[95%CI 0.98-6.36] P=0.08)
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開業以降、バリダーゼ(ストレプトキナーゼ)を使用するケースがなくなり(重症例はintensive care施設へ搬送なので当然といえば当然か・・)、薬剤もなくなった?


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膿胸治療の多施設トライアル
古代、ヒポクラテスが胸膜感染症の臨床的重要性を確立してが、質の高いトライアルが2400年間このありふれた状態を研究するトライアルは数編程度しかない。

このガイドラインの中身には100名以下の、3つの対照トライアルにしか認められない。このエビデンスの欠如は元来胸膜疾患内在する性質のものと、合併する多要因、呼吸機能、合併する肺炎の重症度、胸膜炎症の程度、原因病原菌のvirulenceなどに強く影響され、heterogenousな疾患であることによる。このため、影響する因子をコントロールするため、多施設、選択的導入クライテリアで、研究介入の理由付け可能な尤度を有する均質な対象者をいれこむことである。
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という膿胸の治験の困難さが背後にあり、まとまった数の検討がなされてない。

それまでの治療法がまったく意味をもたないという事実を知ることは昨今多くなっているが、今回もその例であった。ガイドラインもあてにならないという事例で、寿命があるという事例にも・・

by internalmedicine | 2005-03-08 10:44 | 呼吸器系  

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