サッカー選手のALSについて:統計学的検討?
2005年 04月 11日
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ALSの発症なぜか6倍も イタリアのプロサッカー選手
【ワシントン15日共同】イタリアのプロサッカー選手は、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)の発症率が平均の約6倍になっていることが、同国トリノ大などの研究チームの調査で分かった。15日までに脳神経学の専門誌に発表した。
ALSの発生が特定のスポーツ集団で高いことが分かったのは初めて。研究チームはヘディングなどサッカー特有の体への衝撃や、筋肉増強剤の悪影響など複数の仮説を示したが、発表者の1人は「今のところ、普通の人がサッカーをやめる理由は全くない」と話している。
(共同通信) - 3月15日16時46分更新
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を題材にして、検討してみた。
ポアソン分布(http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/Bunpu/poisson.html)の推計例と思われ・・・
例題: 「北イタリアのALS患者は過去36年で、2400名の選手の内、33名がALS発症。観察期間の問題もあり、年あたりに直すのは困難。1年あたり33/36名/年発症したという乱暴な仮定にする。
北イタリアのALS頻度は年に10万人あたり0.6-2.6名の新規症例が出現する(http://www.medscape.com/viewarticle/475273)
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p=0.6-2.6/100000
n=2400
ポアソン分布のパラメータ λ は,
np=0.0144-0.0624
p= 0.060-0.014
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とやや微妙な確率となる。
ポアソン分布は
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n 2400
p 2.6/100000
λ 0.0624
poisson分布 累積
0 0.939507009 0.939507009
1 0.058625237 0.998132246
2 0.001829107 0.999961354
3 3.80454E-05 0.999999399
4 5.93509E-07 0.999999993
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これでも微妙だということがわかると思われる。
なお、以下の論文から数字のヒントはいただいた・・・
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&list_uids=15119987&dopt=Citation
のだが・・・6倍という表現はどこからきたのか・・・多変量解析によるものか?
わたしの推定は曝露因子という概念から考えれば乱暴なので、そういう検討なのかもしれない。
最近、占いブームだそうで、メディアの露出が高い。占いは統計学と言い張る連中がいるのには閉口するのだが、高名な占い師は統計(学)と言い張るのに、有意差をもってとかいうことなく、断言をするのだから、当然、確率論に於ける統計学ではなさそうである。ベイジアンアプローチというのは、日本では普及してないそうだが、最近、よく耳にするようになった。http://hawaii.naist.jp/~shige-o/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?%C6%FE%CC%E7%BC%D4%B8%FE%A4%B1%B2%F2%C0%E2
検査前の推定にて、検査による尤度を検討して、事後確率の推定というのが、昨今はやりのEBMだが・・・
http://forensic.iwate-med.ac.jp/aoki/vf/risshi.html
わたしは統計学といいはる占い師に、あなたの占いの尤度比(感度・特異度)はどの程度なのですかと聞いてみたい。
5%の医療事故を起こす確率があるとして四〇例年間行った場合ポアソン分布は
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n 40
p 0.05
λ 2
poisson分布 累積
0 0.135335283 0.135335283 0.864664717
1 0.270670566 0.40600585 0.59399415
2 0.270670566 0.676676416 0.323323584
3 0.180447044 0.85712346 0.14287654
4 0.090223522 0.947346983 0.052653017
5 0.036089409 0.983436392 0.016563608
6 0.012029803 0.995466194 0.004533806
7 0.003437087 0.998903281 0.001096719
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これでみると年間四〇例の術者は統計学的に五例以上であれば有意に問題有りと考えられる。こういう事例の時、マスコミはきっと40×0.05=2例だから4例の時は2倍事故が多かったと報道するのだろう。実は統計学的には5%以下の推定危険率では有意差がない。
この数字に似た事例が現在司法上の問題に移っていると思うのだが・・・
司法にも統計学を・・・ということがあるベイジアン・アプローチの本にかかれていた。
by internalmedicine | 2005-04-11 18:00 | メディア問題