この患者は重症筋無力症ですか?

ゲーコクの論文でおもしろいのは、診断学と思います。
日本では数少ないし・・・・


Does This Patient Have Myasthenia Gravis?
JAMA. 2005;293:1906-1914.
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/293/15/1906
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"speech becoming unintelligible during prolonged speaking(会話中理解できない言葉)"の病歴と、Peak signの存在は尤度比でいえば [LR], 4.5; 95% CI, 1.2-17.0 and LR, 30.0; 95% CI, 3.2-278.0)

これがないことは重症筋無力症の尤度を有意にへらすわけではない。

ひとつの病歴と身体兆候ひとつ(嚥下後の食物口腔内残存、quiver eye movement(振戦性の眼球運動)はMGの尤度の変化はなかった。


アイス・テストは
・異常なら、尤度比増加(総陽性LR 24.0;95% CI 8.5-67.0)
・正常なら、尤度比減少(総陰性 LR, 0.16; 95% CI, 0.09-0.27).

抗コリンエステラーゼ治療(主にedrophonium test)の反応
・陽性なら、MGの診断可能性増加
(summary positive LR, 15.0; 95% CI, 7.5-31.0)
・陰性なら、MG診断可能性減少
(summary negative LR, 0.11; 95% CI, 0.06-0.21).

睡眠試験異常は診断に役立つ
(LR, 53.0; 95% CI, 3.4-832.0).

結果が正常のときMGの可能性は少ない
(LR, 0.52; 95% CI, 0.29-0.95 and LR, 0.01; 95% CI, 0.00-0.16, respectively).
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アイス・テストがテンシロン・テストと同程度なのが意外・・・
アイス・テストとは、静的視野検査 Hess chartで確認されているが、5-10分程度の氷を目の上において複視が改善するもの・・・
http://pmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/76/893/162
 これ、不整脈だと、ice water diving reflex・・・

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外眼筋の障害はcommonであり、外眼筋障害は下垂がない場合はまれ。
筋異常はほかの眼球麻痺と類似することもある。
重症では完全外眼筋麻痺、中脳疾患と類似することもある。
眼輪筋の障害は試験者に抵抗する強制的な閉眼を患者にさせることで検査できる。筋疲労により閉眼を閉じ続けることができない。この結果“peak sign”が生じる、試験者の鉄片を見ようとする現象。



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近くにある、マニュアル本(ワシントンマニュアル)によると、
・AchR抗体:全身性MGの場合80-90%、眼筋型MGの場合50-70%
・反復神経刺激:3Hzの反復刺激で活動電位ポテンシャルの12-15%の反応減少
ただし、眼球型の50%、全身型の75%で陽性
・single fiber EMGがMG診断でもっとも感度が高い(95%)、他の神経疾患でも陽性は多く、偽陽性がある。
・tensilon test
もっとも偽陽性、偽陰性に関しては信頼性が高い
代換的手段としてice pack testがあり、これは氷を5分間目の上におき下垂の改善を見るものである。


Harrisonsonlineからは
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・病歴
 複視、眼瞼下垂症、筋力低下
 特徴的な筋力低下
 Fluctuation と 疲労
繰り返しにより悪化
安静により改善
・以前の治療の効果

身体所見
 眼瞼下垂、複視
 運動機能検査:量的な試験
 前方腕回外試験(5分)
 肺活量
 他の神経学的兆候がないこと

検査
 抗ACRRIA:85%が全身性MGで陽性、眼球型で50%;陰性でもMGを除外できない
抗MuSK抗体をもつ全身性MGの40%でAChR抗体陰性
 Edrophonium chloride(Tensilon)2mg+8mg IV 明確に陽性なら診断可能性はかなり高い
 反復神経刺激:3Hz15%超の減少:可能性高い

Single-fiber electromyography: blocking and jitter, with normal fiber density;
confirmatory, but not specific
眼球型、頭部型MGではCT・MRIで頭蓋内疾患を鑑別必要

by internalmedicine | 2005-04-20 16:38 | 運動系  

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