ある薬剤の薬効は偏った研究発表により誤評価されている
2004年 04月 24日
SSRIに限らず、すべての薬剤は薬効を誇示しなければまあ売れないわけで・・・
薬剤評価のためエビデンスがもとめられ、エビデンス・ヒエラルキー(参照)の最上段階としてのメタ分析・システムレビューがありますが、その前提はやはりランダム化試験です。それが出版されてなければ、知ることはできないわけです。
自社製品に都合の悪いデータは出さない、これは会社としては当然の行動でしょう。莫大な開発費用をかけて、やっと上市した薬剤の市場をひろげるというのは会社としては当然のインセンティブでしょう。
で、結局、薬効のよろしいというものしか、出版されない自体になってしまいます。これを出版バイアスと呼びます→24ページあたり
私のウェブサイトもご参照ください。→http://intmed.exblog.jp/m2004-12-01#1460683">製薬会社のはEvidence Biased Medicneだ
このバイアスの検討として、いくつかのツールが発表されてますが、とくにFunnel plotが有名です。(参考文献)
・抗うつ剤[Paxil](paroxetine hydrochloride)の小児への使用に関するFDAの見解
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly/12030627.pdf(2003.6.19)
“FDAは[?Paxil’]による大うつ病の治療で,自殺念慮や自殺企画のリスクが増
加するという報告を評価中であるが,児童期および青年期の大うつ病に[?Paxil’]
を用いないよう勧告した。”
その後、
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・若者のSSRI使用と自殺に関連は認められない/アメリカACNPの見解
http://www.researchprotection.org/infomail/04/01/21.html
・EXECUTIVE SUMMARY
PRELIMINARY REPORT OF THE TASK FORCE ON SSRIs AND SUICIDAL BEHAVIOR IN YOUTH
http://www.acnp.org/exec_summary.pdf
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というので一段落した形にはなっていたようですが・・・
直近のLancetで、SSRIの小児うつへの投与のbenefit:riskの検討について、出版
バイアスが検討されております。結局、都合の悪いデータはださないという・・
ANCPへの強烈な反論となっているのではないでしょうか?
Selective serotonin reuptake inhibitors in childhood depression:
systematic review of published versus unpublished data
Lancet 2004; 363: 1341-45
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小児うつに対するSSRIの安全性の疑問があり、出版・未出版データにおけるリスクbenefiの検討
2つの出版されたトライアルからは良好なrisk-benefitを示し、出版されていないデータでもその傾向が示唆された。出版されたデータparoxetineの一つ、sertralineの2つのトライアルではequivocalあるいは弱いrisk-benefitを示した。しかし、両ケースともcitalopramやvenlafaxineの未出版データを加えると好ましくないrisk-benefitが示される。
小児・若年層では、出版データから特定ののSSRIsの良好なrisk-benefitが示されるが、未出版データを加えるとfluoxetineを除いて、リスクの方がbenefitより大きいことが示される。
臨床ガイドラインや治療についての臨床決定は大きく、出版されたpeer-reviewedジャーナルに基づくエビデンスに大きく依存しいる。トライアルの未出版、理由の如何を問わず、出版トライアルからの重要なデータの省略は誤ったrecommendationを導く可能性がある。すべての介入研究で、公開性・透明性が必要。
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paroxetine:パキシル
sertraline:Zoloft ゾロフト
citalopram
venlafaxine:エフェクサー?
fluoxetine:
マレイン酸フルボキサミン
・デプロメール錠25、ルボックス錠25:60円50銭
・デプロメール錠50、ルボックス錠50:107円20銭
フルボキサミンを扱う会社が、これでプロモーション活動したら、うつだ・・Evidence自体が・・・
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今後、ガイドラインなどを出すときは Funnel plotなどの検討をかならずくわえるべきです。日本のガイドラインの質が低すぎ、結局、consensus-basedなのと、evidence-basedなのが混在しすぎ・・・・
出版バイアスの極端な例は、健康関連食品のテレビ宣伝で・・
最近、小さな文字で“これは個人の経験であって、効能効果とは異なります”なんてのがあれですね。ありゃ、Quackというより詐欺に近いと思いますが・・・
by internalmedicine | 2004-04-24 10:37 | 医学