医療過誤への恐れは防御的医療を促進する


医療過誤の別の側面に、 “防御的医療”:defensive medicine について 今週のJAMAはふれられております。

goo:
defensive medicine 自己防御的医療 ((医師が医療事故や不注意な診療で訴えられないようあらかじめ過剰な検査などを行うこと))
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“医師は医療過誤を嫌う・・・激しく・持続的に・・・医療訴訟を避けることを他の診療方針を圧倒することとなってしまう・・・医師の医療過誤を忌避する気持ちに対して、理由付けされた、経験に基づき、誠実になされた診療が打ち勝つことがない状況となっている。
医療過誤のため毎年死亡する方はさほど多くない、しかしながらその為に費やす費用により必要な患者へのケアへ振り分ける費用が費やされてしまう・・・”

“医療界では、医療過誤リスクが患者のケア・他の専門的な決定へ与える影響に対して現在関心が持たれている。”

JAMAの今週号に、このことに関する2つの論文が掲載された。
1)Studdertらはペンシルベニアの告訴リスクの高い6つの専門領域の医師にdefensive medicineの実行について調査
93%がdefensive medicien実践を報告。ことに、多くの検査をオーダーする、多くの治療薬を処方すること、より確定診断に関する多くの手技を行うことなどの保健医療行為である。
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/293/21/2609?lookupType=volpage&vol=293&fp=2609&view=short
2)Kesslerらはstate-levelデータでの解析で、ある種の医療過誤は形を変えて、高リスク専門領域の医師の供給増加につながっている。
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/293/21/2618?lookupType=volpage&vol=293&fp=2618&view=short

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日本では、メディアは事件・事故がおこるとシステムの問題を棚に上げ、特定の人物を悪人を作り上げ、勧善懲悪として報道する性癖を持つようである。現実の水戸黄門は決してほめられる為政者じゃなかったが、メディアではまるで理想的政治家として・・・
談合が行われるのは各会社の担当者が悪いから行われるのだ、電車事故が起きるのは運転手が怠慢だからだ、政治家が悪いから特定の政治家が悪いのだ、そして医療事故は医者が態度が悪いからだ・・・という報道です。
朝日新聞の最近一面にかかれている1例ごとの医療問題の報道は、エビデンス・ヒエラレルキーでいえば症例報告だけ・・・システミックな検討ではないのですが、えらそうなものいいが続いております。

医師会は医療事故・訴訟の他発医師・医療機関を指導すると言うことでそれは結構なことですが、その背景の分析、そして医療過誤をあまりに重視しすぎるために生じる矛盾したことを世間に訴えるべきなのではないかと思うのですが・・・日医ってどうも表層的なことしかできなくなったようですね。メディアに悪代官にまとわりつく三河屋扱いされてしまって・・
現場否定で、机上で、犯人を作り上げ、その犯人をたたきまくって・・・記憶からなくなり、その間、新聞が売れ、テレビの視聴率が上がり、雑誌が売れ、国民は“悪人が土下座して謝る”姿をみて、満足感を得るそういう構図がいつのまにかできあがってしまいました。


私にはロビイ活動の何が悪いのかよくわからないのですが、メディアは日医のロビイ活動を勧善拒否する・・・メディア自体が表現・意見の自由を封殺しようとしています。大新聞の意見のみが正しく、各専門業界の意見は正しくないというエリート意識が根底にあるようです。

医療過誤に関するブッシュの賠償上限案というのは一つのソリューションなのですが・・・日本では議論の俎上にもあがらない・・・あがれば儲かるのは・・・広告収入を多くだしている業界・・・

参考:
http://www.jcoa.gr.jp/siten/content/nazeusa.html

by internalmedicine | 2005-06-01 12:09 | 医療一般  

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