食物への放射線照射
2004年 04月 30日
合理的に考えれば、食物感染症由来の病気というは結構多くて
たとえば、ビブリオ・バルニフィカス感染症、黄色ブドウ球菌やサルモネラ・ビブリオなどの食中毒、O157感染症、A型・E型肝炎など、致命的な病気もいっぱいあります。
日本でも、より冷静に、科学的根拠をもって、放射線照射を考える時期ではないかと考えます。NEJMの一文をみると、日本で紹介されている反放射線キャンペーンは論理のすり替え、対象のミスリード・・・などが多いようです。
The Role of Irradiation in Food Safety
NEJM Volume 350:1898-1901
米国では7600万人の食物による疾患が毎年生じ、32万件の入院、5000名死者が生じている。
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USではハーブやスパイスの10%、果実、肉、鶏肉には0.002%のみ放射線照射していない。
受容性が低いことは、1)放射線そのものが誤解され、警告されている。2)食事由来の疾患の原因・予防がよく理解されていない。3)医療従事者やメディアは放射線を当てることの利点を理解していない。4)食物、放射線、農業経済などについての彼らなりの特定の反放射線キャンペーンがなされている。
高エネルギー放射線、ガンマ線、X線、電子ビームが認可されているが、コバルト60、セシウム137が認可されている。
1Gy(グレイ)は100radであり、
・less than 1 kGy (low dose) for disinfestation and the extension of shelf life
・1 to 10 kGy (pasteurizing dose) for pasteurization of meats, poultry, and other foods
・more than 10 kGy (high dose) for sterilization or for the reduction of the number of microbes in spices.
肉や鶏肉の商用的放射線照射はミルクへの低温殺菌と同じ考え。
熱殺菌は生ミルクの病原を殺菌し、成長を抑制するが、取り扱いによっては非病原性バクテリアの生存がミルクをだめにすることがある。同様に放射線による殺菌は肉や鶏肉のすべての殺菌に及ばず、むしろ病原性微生物全部を殺菌することにあるよりその機会を減らすことにある。。
殺菌に必要な放射線の量は低温殺菌法の約10-30倍必要で、ボツリヌス菌の芽胞をログ対数の12ほど減らす程度が商用の標準レベルである。
ただし、食物の放射線汚染に対する少なくとも3つの議論点がある。
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※第1の議論は、2-alkylcyclobutanones(2-ACB)(照射された食物特有)が動物実験で腫瘍形成性の突然変異を起こす可能性。ただしこのことを警告した著者たちは食物自体を調べたのではなく、食物中に含まれる可能性のある約1000倍の濃度で、化学的に合成されたの2-ACBについての報告してだけであった。・・・・
“The European Commission's Scientific Committee on Food”、 “the World Health Organization's assessment of irradiation safety”も遺伝子毒性は標準的方法では確立したものではない、安全性に関する疑問についてあきらかなものはないとしている。
第2の疑問は栄養の質の破壊である。しかし、炭水化物、蛋白、脂肪は放射線に影響を受けない。Thiamine(ビタミンB1)は、放射線にもっとも影響をうけるが、食事中のthiamineを脅かすほどではない。
第3の議論は、技術的問題点、限界があること。すべての汚染を除去することとはなりえない
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by internalmedicine | 2004-04-30 16:56 | 消化器