4年前の文献 (4/4)

以下、4年前の9-10月分の論文でした

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Date: Tue, 30 Oct 2001 12:28:53 +0900
Subject: インフルエンザの予防治療戦略における費用分析
健康にかかわる費用分析は、科学的であるべきで、Cost-cutterがその決定権を持つのはおかしいと思うのですが、あまり政治的になると何ですので、確かに、インフルエンザの治療戦略はニューラミニデース阻害剤(NIs)出現により異なってるのかどうかというのは重要なテーマであるのにあまり日本では語られて無いような気がします。 Diana B. Petittiの本から引用すれば、 “QALYの効用値Qというのは、例えば、軽症の狭心症を持つ患者が10年間の軽症の狭心症を持った状態での生活とまったく症状の無い9年間を等価と考えるときに、Q=9÷10=0.9 同様に重症の狭心症ではQ=0.7というのが、Weinsteinらの分析による代表例” であるというわけで、“健康状態の選考の測定値”といってよいと思われます。インフルエンザ症状がある1日間(=24時間)と等価に考える健康な時間数は幾ら位なのでしょう。今年は、これを調べてみようと思ってます。同時に Visual Analogue Scaleも、費用というのは当然、所得や社会構造も違うので、異なるのは当然ですが、効用値というのは、人種や国民性により異なるとおもうのです。以下の論文は費用効果分析(Cost-effective)と書いてありますが、実際には費用効用分析ですね。
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Cost-Effectiveness of Vaccination versus Treatment of Influenza in Healthy Adolescents and Adults
http://www.journals.uchicago.edu/CID/journal/issues/v33n11/010574/brief/010574.abstract.html
Peter A. Muennig1 and Kamran Khan2
現在、インフルエンザ様症状を有する健康成人において予防的観点からみると、3つの戦略、インフルエンザワクチン、発症時ニューラミニデース阻害剤(NIs)、発症時のサポート・ケアのみがあり、どれがベストな管理法か不明である。コスト-効果解析(CEA)を3つの戦略に対し行った。 NIsであるoseltamivirに比較して、不活化ワクチン施行では約$25/人節約し、総計3.2Quality補正時間(quality- adjusted hours )の利得を得ることができる。 Quality・補正・時間は、QALYの部分的表現であり、1QALYは本来は1年間完全に健康である状態を表現するものである。 oseltamivirは支持療法のみに比較してQALYあたり約$27,619費用-効果利益と関連。ワクチンは、Oseltamivirで治療するか、支持療法だけで治療するかでコスト軽減効果が変化する。
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混乱が多いようなので、ほかのMLでも書きましたが再掲しておきます。

・費用最小化分析(CMA:Cost-minimisation analysis):介入方法間で結果が同じで、投資のみ考慮すればよいときにもちいる。同じ結果をえるためにもっとも低コストの介入法を選択。
・費用効果分析(CEA:Cost-effective analysis):介入方法間で結果は異なるが、同一の単位で測定され、投資の費用が算出可能なときに用いる。介入方法の比較には、結果(Consequences)1単位あたりのかかる費用を指標とする。
・費用効用分析(CUA:Cost-utility analysis):介入方法間で結果がことなり、効用という生存時間と質を統合した単位で測定されるときに使用。QALYがもっとも良く知られている。
・費用便益分析(CBA:Cost-benefit analysis):介入の投資と結果が金銭で換算されるとき用いる。したがってヘルスケアにおける介入方法の比較だけでなく、ヘルスケア以外で実施されるプログラムとも直接比較可能という利点もある。

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Date: Thu, 01 Nov 2001 10:53:42 +0900
Subject: 正常高値血圧と心血管疾患リスク
収縮期血圧130-139and/or拡張期85-89というのは日本高血圧学会ガイドラインでいけば、“正常高値”というカテゴリーになるようですので、high-normal blood pressureを“正常高値血圧”と訳しました。 HOT studyで結論の出なかったこのカテゴリーの議論は、終わりが無いようで、 Impact of High-Normal Blood Pressure on the Risk of Cardiovascular Disease NEJM Volume 345:1291-1297 November 1, 2001 Number 18 http://content.nejm.org/cgi/content/short/345/18/1291?query=TOC
【背景】正常高値血圧(収縮期血圧130-139か拡張期85-89、両方この範囲になるもの)比較の心血管疾患へのリスクの情報は限られている。
【方法】ベースラインの血圧カテゴリーと心血管疾患頻度(Framingham Heart Studyの当初高血圧がなく心血管疾患のない6859名の参加者)を対象とした。
【結果】心血管イベント率の段階的増加がベースラインでの高血圧カテゴリーで認められている。10年累積心血管疾患頻度に関しては35-64歳女性では4%(9 5 %CI, 2 to 5 %)、男性では8% (95 %CI, 6 to 10 %) 、高齢者(65-90)では女性18%(95 %CI, 12 to 23 %)、男性25% (95 %CI, 17 to 34 %)。最適とされる血圧と比較したとき、心血管疾患のリスク補正ハザード比は女性で2.5 (95 %CI, 1.6 to 4.1)、男性で1.6(95 %CI, 1.1 to 2.2)であった。
【結論】正常高値血圧は、心血管疾患リスクの増加と相関。この知見により正常高値血圧を下げることで心血管リスクの減少をもたらすかどうか決定する必要がある。 -------------------------------------------------------------------- “心臓が収縮している時が血圧は最も高く、拡張している時が最も低い。上が100~139、下が60~89程度の人が長生きである” http://www.asahi.com/life/health/kusuri/1028a.html ↑ このオジさんは、能天気?で、世間の議論と関係なく、簡単に結論を見出すのでお気楽ですね。139と89という数字に、注目しておけばこの方のいいかげんさがよくわかります。でも、世間ではこのいい加減さのほうが、受けがいい事がままあるようで、みのもんたの番組に出る先生方のほうを私がいうことより信じてる患者が多いので、困っておりますが、

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Date: Thu, 01 Nov 2001 16:37:36 +0900
Subject:インフルエンザ戦略
例えば、ことしの冬はAH1、AH3、B=1361:456:1371(感染研微生物検出情報4 月13日))でした。0.427:0.143:0.430という比率で、インフルエンザ様症状だけでアマンタジンだけの処方だと4割強の人が効果が期待できない状態に置かれていたわけです。(根拠:重いので注意→ http://www.tokyo-eiken.go.jp/IDSC/infnews/2000/11.pdf) A型、B型分離型のキャピリアA,B、インフルA・Bクイックのような検査をしたうえで、A型であることが確定できた上でのご判断でしょうか?インフルエンザの診断・治療戦略が迅速キットと薬剤の種類の増加により考えられる戦略が多様となっております。・シンメトレル錠50mg 日本チバガイギー(ノバルティス ファーマ) 50mg1錠 42.60 1日100mg,1~2回分服→1日85.2円×5日=426円・タミフルカプセル75 日本ロシュ 75mg1カプセル 396.30 75mg 1回75mg,1日2回,5日間 →1日792.6円=3960円 今日やたらと外来が暇なので、思いつきで、Utility解析のモデルをつくってみました。迅速キットは感度も、特異度も限りなく100%に近いので簡略化してますし、診察にかかわる基礎費用は差がないので省略し、診断・治療失敗によるその後の経費はここでは省略しています。インフルエンザである確率をp、シンメトレルの有用値をEs、タミフルの有用値Etとしています。ちなみに、pはもっともインフルエンザがはやってる時期でも0.5程度という論文(Contribution of influenza and respiratory syncytial virus to community cases of influenza-like illness: an observational study http://www.thelancet.com/journal/vol358/iss9291/abs/llan.358.9291.original_research.18080.1 )もあります。 ・戦略 I)迅速キットも使用せず、シンメトレル使用:薬剤費426円+薬剤による副作用の確率的危険インフルエンザでないときに治療効果期待できず(副作用により有用値低い):(1-p)×有用値 Bであったとき43%が治療効果期待できず(有用値低い):p*0.43×有用値 Aであったとき57%が治療効果期待できる:p*0.57×Es II)迅速キットも使用せず、タミフル使用:薬剤費3960円+薬剤による副作用の確率的危険インフルエンザでないときに治療効果期待できず(有用値低い):(1-p)×有用値インフルエンザにて治療効果期待:p×Et III)迅速キット使用にて、タミフル使用:検査料+各々の薬剤費+薬剤による副作用の確率的危険インフルエンザでないときには使用しない:有用値は高い(無駄な薬剤投与を受けないですむ):(1-p)×有用値:コスト2000円インフルエンザAあるいはBであるときに使用:p×Et:コスト5960円 IV)迅速キット+シンメトレル、タミフル使用を分ける:+各々の薬剤費+薬剤による副作用の確率的危険インフルエンザでないときには使用しない:有用値は高い(無駄な薬剤投与を受けないですむ):(1-p)×有用値:コスト2000円迅速キット使用にて、Aであるとき、シンメトレル使用:p*0.57× Es:コスト2426円迅速キット使用にて、Bであるとき、タミフル使用:p*0.43×Et:コスト5960円
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それぞれのUtilityを解析することとなります。仮にEs=Etであるなら、常にIV
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Date: Fri, 02 Nov 2001 17:51:07 +0900
Subject: 都会と田舎のアトピー患者の喘鳴頻度の差
GlaxoSmithKline さんが配ってるAIRJ(全国喘息患者電話調査)はとても興味深いです。・喘息の気道炎症認知度は、純粋想起ではわずか6% ・ピークフローメーター認知は、聞いたことがあるは成人で22%、実際の使用は6% ・吸入ステロイド使用率成人12% 結果、AIRE(ヨーロッパ)と比較して、日本に有意に高い欠勤・欠席率、成人・小児の予定外通院となさけない状態です。医師会が“日本は最高水準の医療”なんていってもだれも信用しないでしょ、これじゃ。AIRJより公平な調査で、医師の報酬を決めるなんていったら、対抗できない。もっとも日本の医師の報酬が高いとは思えませんけどね。今週のLancetの論文では、都市部と地方の喘息の喘鳴症状出現の差があることの説明として下記仮説ではじめ、結局、寄生虫感染がエチオピアでは大きな要因のような説明です。どっかの大学の寄生虫学教授の面目躍如ですかね?でもなんで喘鳴だけなんでしょう。他のアレルギーにかかわるものは関係ないのでしょうか?・寄生虫感染が寄生虫により誘導された特異的あるいはポリクローナルナIgE によりEffector細胞に結合し抗炎症性サイトカインインターロイキンの産生を誘導することでIgEを介したアレルギー疾患を予防している。 van den Biggelaar AHJ, van Ree R, Rodrigues LC, et al. Decreased atop y in children infected with Schistosoma haematobium: a role for parasite-induced interleukin-10. Lancet. 2000;356:1723-1727. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=11095260&dopt=Abstract ・生活スタイルがダスト-ダニ増加に関与・有機りん系の殺虫剤により気道のムスカリン作用の増加 Independent effects of intestinal parasite infection and domestic allergen exposure on risk of wheeze in Ethiopia: a nested case-control study http://www.thelancet.com/journal/vol358/iss9292/full/llan.358.9292.original_research.18283.1
【背景】なぜ喘息は田舎では少ないのか不明である。喘息のリスクを腸内寄生虫やA型肝炎感染により喘息のリスクが減少し、ダスト-ダニアレルゲンの暴露の増加や有機リン酸系の殺虫剤の増加によりリスクが増加するという仮説をエチオピアのJimmaの都市部と田舎で検査した。
【方法】1996年Jimmano都市部、田舎で喘息やアトピーをもつ12876名から、過去12ヶ月の喘鳴を記録し、対照もランダムにとった。1999年、糞便の寄生虫、ベッドのDer p 1値、A肝炎抗体、血中コリンエステラーゼ(有機リン暴露のマーカー)、総・特異的IgE、ヤケヒョウヒダニ皮膚感作を205例と399例の年齢をマッチさせ検討。寄生虫、Der p 1値、A型肝炎抗体、コリンエステラーゼ濃度の喘鳴へのリスクとIgE、皮膚感作の状況を多変量解析で行った。
【結果】喘鳴のリスクは鉤虫感染にてOR0.48 (95% CI 0.24-0.93, p=0.03)に減少、Der p 1値では増加(odds ratio per quartile 1.26 [1.00-1.59], p=0.05)、A型肝炎抗体、コリンエステラーゼでは相関なし。都市部では、ヤケヒョウヒダニ皮膚感作は田舎よりより喘鳴と相関があり、ヤケヒョウヒダニ感作が主なところではそうであるが、しかし、寄生虫感染の頻度が高いところでは喘鳴とは相関が無い。
【結論】寄生虫感染の程度はアトピー性疾患患者での喘息の症状を予防的に作用してるのかもしれない。
Lancet 2001; 358: 1493-99 “Hygiene hypothesis”はあまりふれられてませんでした。
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Date: Thu, 08 Nov 2001 18:38:24 +0900
Subject: 術後ICU重症患者の血糖コントロール
スライディングスケールを使用すると、結構保険で削られるんですけどねー。やっぱり、人工呼吸を必要とするような厳しい患者には、外科ICUではかなり厳しい血糖コントロールが必要なようです。 ICUのスライディングスケールをけづられる時には、この論文をご使用ください。 Intensive Insulin Therapy in Critically Ill Patients http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/345/19/1359
【背景】高血糖とインスリン抵抗性は、以前の糖尿病の有無にかかわらず重症疾患でよくみられる。インスリンで血糖を正常化することが予後を改善させるかどうか不明であった。
【方法】前向き無作為対象研究を人工呼吸を受けている外科ICUに入室中の成人で行い、入院時患者を強化インスリン(80-110mg/dl)と通常の治療(215mg/dl以上のときだけでインスリンを使用し、180-110mg/dlで血糖を維持する)とをランダムに割り付けた。
【結論】12ヶ月で1548名の患者をエントリーし、強化インスリン療法にて通常のインスリン療法の死亡率8.0%から4.6%へ減少させ、では死亡率 4.6%の減少であった(p<0.04 連続解析から補正)。 強化インスリン療法の価値は5日以上I CUに滞在する患者の死亡率に対して価値が高い(通常の治療で20.2%対10.6%; p=0.005)。敗血症巣が判明したMOFによる死亡率を最大に減少させる。強化インスリン療法はまた34%全体的な在院死亡率を減少させ、46%血行性感染を減少させ、50%赤血球輸血の回数中間値を、44%の重症多発神経障害を減少させ、強化療法を受けた患者は長期人工呼吸・集中治療を要しなかった。
【結論】110mg/dl未満に維持する強化療法は外科ICUにおける罹病率・死亡率を減少させる。
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by internalmedicine | 2005-08-15 14:18 | 医療一般  

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