緩和的鎮静: ダブル・エフェクト 日本の終末期医療の問題点
2005年 10月 15日
特に、緩和ケアの対象疾患が限られている現状は深刻である。。癌やHIVのみがホスピス制度の恩恵に預かることができる。EOL(the End of Life:終末期)は、なにも上記疾患だけに限るものではない。万策尽き次なる一手のないことや患者自身が医薬などを希望せず余命が少ない場合も日本以外ではEOLとみなされている。これらの患者さんたちは現在の医療制度から冷たい扱いを受けているのである。
“幌内病院の一件”は終末期医療において、“心臓が動き続けている限り、人工呼吸器をはずすことは許されない”という印象を医師たちに与えてしまった。
癌性疼痛に対しては積極的にモルヒネなど投与できるが、それでもコントロールできない疼痛や、呼吸困難やその他の苦痛を呈する疾患に対して、様々な薬物・対処法がなされる。呼吸苦などに対する積極的保険適応はモルヒネにはかかれてないことが、医師にpollative sedation(緩和的な鎮静)の導入を躊躇させ、EOL患者のQOLを低下させることとなっている。
日本では・・・この"double effect"が法律の世界で認められてない。
「二重効果(or 結果)の原則」(The principle of double effect)と言われるものです。これは医者は患者の痛みを取り去り、生の質を高めることを意図して鎮痛剤を与える、そのsub-effect (副作用・副次的な結果)として患者さんが亡くなってしまう、その場合、積極的に安楽死をもたらそうとする医者は最初から(言葉は悪いですが)殺すことを意図して薬を与えるわけですが、それに対して前者の医者は、少しでも生の質を高めるという意図のもとに薬を与え、たまたまその結果として亡くなってしまった、その場合、その結果の責任は問われない、という論法です。
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tsuchi/article19.html
<緩和的な鎮静>・・・JAMAから
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Palliative Sedation in Dying Patients
JAMA. 2005;294:1810-1816.
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/294/14/1810
経験や熟練を有するケアにかかわらず、dying patientのうち、十分に苦痛を取り除けない場合がある。たとえば疼痛をとるに十分なオピオイド量で、ミオクローヌスを生じた患者がいた。最後のオプションとして、緩和的鎮静が有った。
"double effect主義"が通用するためには、患者の死が意図的でなく、苦痛を和らげるために用いられるためには、条件が必要である。死を促進する可能性があっても、そのような場合は高用量の緩和的鎮静は許容。
・文書上、そのアクションが死を促進するものでなく、症状を取り除く意図であることを明示すること
・患者または家族の同意
・医師は、看護職員などに注意事項・正当化の理由を説明すること
・患者・家族・医療従事者の情緒的ストレスへの対応
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この二重結果が日本でも正当化されないと、医師は訴追の危険性を常に感じ、結果的に、EOLケアにとっても損失であることを、警察・法曹界も理解すべきだと思う。
警察にしょっ引かれたとか、裁判に負けたとかが新聞・テレビの報道が繰り返されるが、医師側ももう少し、国などの働きかけ、Good Samaritan Law(善きサマリア人の法)」の制定を急がせるべき。
終末期患者からの聞き取り調査:良い死に方・悪い死に方
http://intmed.exblog.jp/259924/
日本には癌医療以外でEOLを語る医師が少なすぎることが、議論が進まない。Double Effect論も臨床に関して責務をもってない職種からみた一方的な否定論がWeb上散乱している。これはglobalな動きからは異なる動きである。やや政治的な意図もある評論もある。
・・・より積極的に議論しましょうや・・・警察や司法に任せるのではなく・・・・
二重効果・結果
解説:http://birdie.ic.nanzan-u.ac.jp/JINBUN/Christ/NJTS/024-Hamaguchi.pdf
by internalmedicine | 2005-10-15 10:16 | 医療一般