肺ガン検診の推奨度は最低(Grade I)にもかかわらず、肺ガン検診は続く・・・・日本

 慶応大学の放射線科の先生がもっと肺ガン検診をたたけばよいのにと以前から思ってます。
 職場検診・地域検診という形で、現行の日本は、肺ガン検診を老若男女関係なく、無理強い致します。選択の自由がないのです。有効性がより高ければ公共性などから無理強いは仕方ないのですが、国際的に、現在その有効性に疑問がなされ、放射線被曝ですから、有害性が問題になり、また血税が使われているのにかかわらず・・・未だ、お役人どもの無理強いが続くのですが・・・

だれでも行うレントゲン撮影はやめれ!!!  と一開業医は主張する


せめて、選択制にすべきではないのか、ありゃ、人権問題だぞ!!! > 役人ども


無症状の人に肺がん発見目的で検診(低被爆CT、胸部レントゲンCXR、喀痰細胞診、これらの組み合わせ)をすることに対して、U.S. Preventive Services Task Force (USPSTF)の推奨度I(サービスとしてルーチンに推奨する、あるいは、反対するに十分なエビデンスがない。有効性を示すエビデンスがなく、質がよろしくなく、リスク・有害のバランスが決定できない。)

Lung cancer screening: recommendation statement.
Lung Cancer Screening: Recommendation Statement


Annals of Internal Medicineに、その根拠となるべき記述があります。

Lung Cancer Screening with Sputum Cytologic Examination, Chest Radiography, and Computed Tomography: An Update for the U.S. Preventive Services Task Force

“メジャーな医学機関で肺がんの検診を勧める所はない”で始まっています。
“肺がんの87%が喫煙関連。米国では20年減少。”で、今のところ、検診に頼るより喫煙者を減らす努力をすべきです。
肺がん検診を肯定するデータは日本だけです。研究の質は認めるけど、研究の片寄りはランダム化試験でない限り、除去困難であると、コメントされております。
ただ、女性の肺がんに関しては今後の検討が必要なようです。
ヘリカルCTなどの被爆量の比較的少ないCTを用いた検診に関しては、本来の評価項目である生存率の改善効果を見出す段階にない、時間がまだ必要ということです。

今、無差別に肺がん検診をする必要性を国際的論文ではみいだせずにいるわけです。喫煙者減少のための仕事をお役人どもは行ったほうが、ずーーーと合理的なのですが・・・


Methodologic issues relevant to understanding screening studies include
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リードされた時間のバイアス(lead-time bias):検診により診断の時間が早められるが、死亡時間は変わらない

生存期間バイアス(length bias):周期的に検診サンプルを見出すのはより悪性でない病変、良性の疾患は長生きするので何度も検診で捕まり、検診上の診断率を見かけ上あげてしまう

ボランティア・バイアス(volunteer bias):非ボランティアよりボランティアを選んでしまうことの偏り
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これらのバイアスを避けるためには、ランダム化対照トライアルしかなく、アウトカムは死亡しかないのである。

“Mayo Lung Project”はレントゲン検診の役割を評価するための最初の個別化、ランダム化、対照トライアルであるが、残念ながら正しい死亡率を出すことができなかった。トライアル中もレントゲンを約半数の対照群がとっていた。2年後は73%がレントゲンを撮っていた。そして最後まで観察できた例も介入群(検診群)で75%とひくかった。結果、対照群より干渉群が約22%ほど肺がん頻度が増加した。放射線被爆で増えるような比率ではないので、おそらく上記研究の問題点と、介入群おオーバーな診断によるものかもしれない(比較的悪性でないものまでもひっかけてしまう)


日本で比較的質の高い症例-対照研究が1992-2001年になされ、なんと、胸部レントゲン写真検診±喀痰細胞診にて、オッズ比0.40~0.72の範囲が見出された。
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Evaluation of a clinic-based screening program for lung cancer with a case-control design in Kanagawa, Japan. Lung Cancer. 1999;25:77-85. [PMID: 10470841].[Medline] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=retrieve&db=pubmed&list_uids=10470841&dopt=Abstract

A case-control study for evaluating lung cancer screening in Japan. Cancer. 2000;89:2392-6. [PMID: 11147617].[Medline] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=retrieve&db=pubmed&list_uids=11147617&dopt=Abstract

Sagawa M, Tsubono Y, Saito Y, Sato M, Tsuji I, Takahashi S, et al. A case-control study for evaluating the efficacy of mass screening program for lung cancer in Miyagi Prefecture, Japan. Cancer. 2001;92:588-94. [PMID: 11505403].[Medline] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=retrieve&db=pubmed&list_uids=11505403&dopt=Abstract

An evaluation of screening for lung cancer in Niigata Prefecture, Japan: a population-based case-control study. Br J Cancer. 2001;85:1326-31. [PMID: 11720469].[Medline] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=retrieve&db=pubmed&list_uids=11720469&dopt=Abstract

A case-control study of lung cancer screening in Okayama Prefecture, Japan. Lung Cancer. 2001;34:325-32. [PMID: 11714529].[Medline]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=retrieve&db=pubmed&list_uids=11714529&dopt=Abstract
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【CT】
日本で40歳以上の高リスク・低リスク女性における3つのCT研究がなされ、それぞれ異なるプロトコールであるが、喀痰細胞診を含むもので、15050例検診し、993例(6.6%)にHRCT異常指摘、21例で政権施行。71例の腫瘍発見(0.47%)で、89%がStage1であった。
Mayo clinicでは1520例の50歳以上の男女で、喫煙20箱×年以上を対象とし、782例で1個以上の腫瘍発見。CTのみでは10例の新規肺がん発見だけ。31例が手術。うち8例が良性。いづれも死亡率検討はなされていない。

【女性】
女性の肺がんは男性より生じやすい。喫煙の有無にかかわらずという検討もあるくらいである。残念ながら、女性だけを対象としたランダム化トライアルがない。
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とにかく、女性は たばこをすうべからず! 乳幼児突然死症候群で子供を殺さないためにも、肺ガンで自分を殺さないためにも

by internalmedicine | 2004-05-05 17:55 | 呼吸器系  

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