ゆっくりとした呼吸で血圧の受容体感度改善:高血圧指導へのヒント?

上記タイトルを書いたが、実際の降圧効果を見たわけではないので・・・誤解無きよう・・・
効果の可能性はあるのだが・・・


呼吸法を利用するのは、催眠術・気功・ある種の宗教なども・・・

ゆっくりとした呼吸法を指導することが、圧受容体の感受性改善に繋がるらしい

Slow Breathing Improves Arterial Baroreflex Sensitivity and Decreases Blood Pressure in Essential Hypertension
Hypertension 2005;46:714-718.
http://hyper.ahajournals.org/cgi/content/abstract/46/4/714
交感神経過活動と副交感神経減弱により高血圧の原因・維持と関連。
この自律神経の不均衡は、次々と生じる、動脈・圧反射感度(baroreflex sensitivity)と化学受容体誘起性過換気(chemoreceptor-induced hyperventilation)の減少・再設定と関わる。
6回/分のゆっくりとした呼吸は圧受容体反射活動性を増加させ、交感神経活動性と化学受容体反射活動性を減少させる・・・このことが高血圧時に潜在的なメリットに繋がる可能性が示唆。
ゆっくりとした呼吸が高血圧における血圧の状態を変化させ、圧受容体感受性を改善する可能性を検討したもの

非侵襲的な連続血圧測定、RR間隔、呼吸、end-tidal CO2(CO2-et)をモニターした。
20名の本態性高血圧患者(56.4±1.9 years) と対照26(52.3±1.4 years)
自発呼吸下の坐位とゆっくりとした呼吸(6/min)と速い呼吸(15/min)
圧受容体反射感度はautoregressive spectral analysisと"alpha angle" methodで測定。
:alpha angle :systolic blood pressure low- and high-frequency components (the alpha angle) during controlled respiration.


ゆっくりとした呼吸は収縮期・拡張期血圧を減少させる( 149.7±3.7 → 141.1±4 mm Hg, P<0.05; 82.7±3 → 77.8±3.7 mm Hg, P<0.01)
対照の呼吸(15/min)は収縮期血圧は下げる(→ 142.8±3.9 mm Hg; P<0.05) が、拡張期血圧、呼吸間隔は減少させず、baroreflexの変化無し。
同様の所見が対照のRR間隔でも、見られた。

自発呼吸下で、高血圧患者はCO2低下、呼吸数増加がみられ、過呼吸と圧受容体感受性低下が見られる(P<0.001 versus controls)。

ゆっくりとした呼吸では、高血圧患者において圧受容体感受性を促進させる。この効果は高血圧マネージメントにとって有益性が高い。
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この圧受容体の感受性低下の原因やメカニズムっての・・・興味をそそられてます。


<圧受容体の説明>http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec03/ch023/ch023a.html
動脈内の血流への抵抗が一定である限りは、血管内の血液量が増えれば増えるほど血圧は上昇します。血液量を増やしたり減らしたりするために、腎臓は尿中に排出する体液の量を調節します。

これらの代償機構は、センサーとして働く特殊な細胞によって活性化され、この細胞は圧受容体と呼ばれます。圧受容体は動脈内部にあり、常に血圧を監視しています。特に重要な働きをしているのは、首と胸にある圧受容体です。センサーが血圧の変化を検出すると、圧受容体によって、代償機構の1つの変化が誘発され、血圧は一定に保たれます。神経は、これらのセンサーや脳からの信号を代償機構を調節するいくつかの重要な器官に伝えます。

<英語でよければ>http://www.cvphysiology.com/Blood%20Pressure/BP012.htm
動脈の圧受容体は頚動脈洞・大動脈弓に存在し、洞神経は、咽頭神経(第IV脳神経)分枝で大動脈弓を神経支配する。この神経シナプスは脳幹部にあり、動脈圧受容体は大動脈の神経により支配され、迷走神経(第X脳神経)と結合して脳幹部に到達。
動脈圧受容体は神経終末が存在する血管壁の進展に反応する。求心路を通って・・・
60-180mmGhの範囲の血圧によって頚動脈洞の受容体が反応する。
最大の頚動脈洞感度により本来は平均動脈圧を正常に戻そうとする。この“設定”変化が高血圧・心不全・他の疾患において生じる。
定常・平均圧と同様にpressure changeにも感受性がある。故に、一定の動脈圧にて、脈圧(収縮期血圧-拡張期血圧)を減少させることは、圧受容体firing rateを減少させることとなる。このことは、平均動脈圧減少と同様に脈圧も出血性ショック時のような状態では重要と言うこととなる。平均動脈圧と脈圧の減少の組合せが圧受容体反射をより促進する。
http://www.cvphysiology.com/Blood%20Pressure/bp012%20receptor%20firing%20072304r2.gif



臨床に話を戻すと・・・・
1)“異常に高値を示す場合には、1~2分間の深呼吸をさせることによって緊張をとり、本来の血圧(基礎血圧)に近い値に戻すとされております。”というのはホントの血圧なのだろうか?とわたしは、このウェブの記載と逆の感想もあるだろう。
深呼吸という人為的な状態ではないのだろうかと・・・・
高血圧ガイドラインには血圧測定時“カフェインや喫煙の制限”は書かれていても、深呼吸の記載はない。

2)バルサルバ:Respir Physiol Neurobiol. 2005 May 12;147(1):39-49.
太極拳では降圧効果:J Altern Complement Med. 2003 Oct;9(5):747-54.
ってのが、思い浮かぶが、後者は運動療法の効果と峻別できるか疑問
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臨床的に具体的指導はどうしたらよいものか・・・

by internalmedicine | 2005-10-20 11:39 | 動脈硬化/循環器  

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