禁煙草って・・・ 

ゴールデンウィーク中の休み中にテレビを観ていたら禁煙草のCMがやたらと流れていました。


この種の禁煙草とやらは、韓国から輸入だそうです。となると、韓国に何らかの科学的根拠がないかと・・・検索してみましたが、
韓国の信用できそうなWebサイトでも日本とほぼ同じ禁煙法しか紹介しておりませんし、テレビでいうほど画期的・科学的ならきっと記載があるに違いないのですがそういう記述は見出せません。


宣伝文句を改めて見返してみますと、“禁煙草はたばこの葉っぱではなく、漢方薬の素材としてよく知られている杜仲の葉で、できております。だから禁煙草には、ニコチンなどの中毒物質はもちろん天然素材以外のものは全く含まれておりません。”という記載もありますが、でもタール4mg含んでるという記載がありました。ニコチンはなくてもタールはあるわけです。
そもそも、なんでももやせばダイオキシンだってでてくるわけですが・・・
(横道:市民のための環境学ガイド書庫ダイオキシン―神話の終焉などを必読・・・うわさ話が事実誤認を発生させ、高い焼却炉を作るため多額の血税が費やされ続けているわけですが・・(脱線))

さて、この禁煙草の胡散臭さは、医療機関で行う禁煙治療の根本が“ニコチン依存症”という病気に対するものなのと、正反対にあることです。
ニコチン置換療法は最初はたばこを吸っているのと同じ程度の血中濃度にして、徐々にその量を減少することによって禁煙を成功させる考えです。ところが禁煙草は最初からズバッとゼロにするわけですから、全く違う考えの上での禁煙方法です。
喫煙習慣は、”ニコチン依存”と"心理的依存”の2つからなりたつのですが、ニコチンパッチ・ニコチンガムはいづれもニコチン依存をなくして、心理的依存のみにして負担を軽くしてあげようという方法です。ところがこの禁煙草は2つの依存症をかるくせず、心理的依存だけで禁煙をしようとするものです。ですから、禁煙補助としては疑問が残る品です。

よくやるなあとこういうサイトをみるといつも思うのですが、
実験的治療を自分たちで選らんでるわけだし・・韓国の食品医薬品安全庁認可なんて、書いてありますが逆に言えば日本の厚労省の認可をうけてないといってるようなもんです。

しかもほんとに認可をうけているのだか?

宣伝サイトだらけですので、意外と検索するのが大変です
http://www.tobacco.org/news/68667.htmlによると、
“韓国食品医薬品局(KFDA)は、"Kumyeoncho Gold"の研究室でのテストがなされ、製品が安全性と有効性の規則に合致し、地域的に広告と販売を許可した。テストはすべての医薬品に行われ、韓国厚生省が喫煙抑制剤として2000年7月に再分類したものである。KFDAは“Kumeeoncho”には一般毒性、神経・遺伝子・免疫毒性に有害作用はなかったと述べている”そうです。にもかかわらず、諸外国で未だに正式な認可がおりないのはなぜなんでしょう?

検索してみようとすると、“Herbal Cigarettes”や“No smoking cigarette”などで引っかかるようです。


“たばこをやめる目的だけに限定して長期間たばこの代わりにすうことを絶対に推奨しないイギリスの販売サイトのWebは、検索される日本のほとんどの禁煙草サイトと違い良心的なところもあるようです。

禁煙たばこ自体の害 BBC
“一酸化炭素濃度増加がかなりのレベルであることと、禁煙たばこ自体が危険な化学物質を有しており、それ自体がニコチン依存症の治療にはなりえない”と専門家が述べてますが、私にはこれが一番ぴったり来るコメントでした。


ニコチン依存症という病気を治すのに、一挙に、ニコチン無しの状態にすることで成功するとお考えでしょうか?ランダム化試験は未だに無いようです。

インターネットでの禁煙情報の質の検討によると
“多くは依存についての説明(86.7%)、ニコチン置換療法(NRT)(93.3%)と社会的サポート(93.3%)に言及。しかし、NRTの副作用については33.3%のみ。
2つのサイトが無煙たばこと禁煙草について。
メカニズムについては40.0%、テキストのみは30.0%、多くはアップデートされず。
多くは禁煙ガイドラインに遵守しているが、有害情報も一部あった。”
とのことで、当然、禁煙草はガイドラインに何の記載もありません。

おそるべきことに、1977年禁煙草の依存症の報告がなされておりました。
Br Med J. 1976 Nov 13;2(6045):1195. Abuse of herbal cigarettes containing stramonium.


禁煙草で禁煙するより、禁煙外来をやっている医療機関にいくのが一番でしょうが、道具を使うなら、禁煙パイポとか、無糖ガムとか・・・害の可能性の少ないものをお勧めします。
本格的に禁煙しようと思われる方たちが、有害性の可能性があり、根拠薄弱の方法を用いられると思うとつらい・・・


(てにをはがおかしかったので少々修正しました H17.1.6)

by internalmedicine | 2004-05-06 17:16 | 呼吸器系  

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