生活困窮により受診回数を減らした結果心不全は悪化する
2004年 05月 07日
スコットランドのGP(一般開業医)で心不全と診断された患者のプライマリケアへの社会経済的困窮度の影響
Influence of socioeconomic deprivation on the primary care burden and treatment of patients with a diagnosis of heart failure in general practice in Scotland: population based study
BMJ 2004;328:1110 (8 May)
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スコットランドの心不全の患者の予後が悪いのはGP受診が少ない。
心不全のリスクはスコットランドの貧民層で高いが、貧乏なほどGP受診回数が減る。
McAlisterらは1999年4月から2000年3月までの“the Scottish continuous morbidity project”参加53GPの307741名2186名の心不全患者を同定。裕福層に比べ、44%心不全悪化。23%はGPへのコンタクトをとっていない。GP処方は社会階層で違いはない。GP受診をしないことで社会経済的な悪化が予後不良を生じている。
心不全患者2186名(有病率7.1/1000人口、発症率2.0/1000人口)。年齢・性別補正後心不全発生頻度は最裕福層1000名対1.8、最貧困層2.6(オッズ比 1.44 p=0.0003)
平均的にいえば、年間2.4倍みられ、フォローアップ率が経済的に悪くなるごとに悪くなる。(最裕福層2.6 vs 最貧困層 2.0 p=0.00009)
812(80.6%)で利尿剤処方、396(39.3%)でACE阻害剤、216(21.4%)でβ遮断剤、208(20.7%)でジゴキシン、86(8.5%)でスピロノラクトン。
GPごとの処方のdiscrepancyは患者の年齢・性で補正したところなかった。処方パターンは単変量・多変量解析による貧困カテゴリー毎には差がなかった。
結論としては、患者の社会経済的困窮具合で44%心不全悪化を生じ、23%でGP受診を手控える。階層毎の処方の違いはなかった。
(だから、受診回数の違いは心不全悪化と関連するということ!)
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今回の提示の一般医の心不全マニュアル
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・拡張期心不全は老人ではよく見られ、合併症・死亡率の増加と関連。しかし、ランダム化トライアルがこの方面ではなされてない。
・収縮期<140、拡張期<85の血圧コントロール目的とする。ACE阻害剤もしくはARBが最初の治療として適切。冠動脈疾患・心房細動がある場合はβ遮断剤
利尿剤処方されている場合の注意点は、過剰の利尿剤投与は一回拍出量や心拍出量を減らす。
・ジギタリスはほかの薬剤処方にかかわらず症状に効果ない場合だけ用いるべき。ジギタリスはアミオダロン、β遮断剤、カルシウム拮抗剤処方中は注意すべき
・診断・予後、治療の説明を患者に行い、薬剤の処方量、コスト、コンプライアンスの重要性について議論すべき
・警告サインについて議論。体重を毎日量ることを勧める。2日~3日に1-2Kgの増加は水分貯留の早期サイン。利尿剤を心不全のため余分に服用した場合、2-3日で体重が変化なければ受診すべき
・塩分・水分制限について、禁煙、アルコール摂取の中止・減量、NSAIDs使用の忌避、身体運動の適正と可能性についてコンサルトする
・もし狭心症や血管形成術を考慮する場合は、冠動脈造影・心臓カテーテル検査について患者に話す
・心不全の診断が確定できないようなら、治療後も症状が続くなら、原因として弁膜症が疑われるなら、もしACE阻害剤が患者に不適応(腎不全)やβ遮断剤不適応(COPD)なら、専門にコンサルト
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小泉総理の経済優先による、自己負担増加は、受診回数減少をもたらしました。
私たちは、2年前、その当時、果死亡数増加をきたすだろうと予測いたしました
http://homepage1.nifty.com/makise_naika/koizumi_holocaust/
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日本では、一般ピープルの世情を知らないおぼっちゃま総理“小泉ちゃんとそのとりまき”によりどれほどの心不全の人たちが、苦しんでるのでしょう?
by internalmedicine | 2004-05-07 11:54 | 動脈硬化/循環器