うがいのエビデンス
2005年 10月 29日
風邪の予防には水でうがいを ヨード液では予防効果なし
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051028-00000045-kyt-l26
風邪の予防には水でうがいすることが効果的であることを、京都大保健管理センターの川村孝教授(内科学・疫学)らが全国調査で確かめた。水のうがいで風邪の発症率が4割低くなったが、ヨード液のうがいには明確な予防効果はなかったという。
・・・・・・(中略)・・・・・・・・
川村教授は「古くから言われてきた水うがいに予防効果が確かにあった。海外にはうがいの習慣はあまりないようだが、その予防効果を世界に発信したい」という。一方、ヨード液のうがいについて「風邪をひいたあとの消毒効果は否定していないが、予防効果が認められなかったのは意外。粘膜細胞への作用なども考えないといけないのかも知れない」という。
また、風邪をひいた人への抗炎症薬(ロキソプロフェン)の効果も別の集団で調査。初期の重い症状を和らげる効果は認められたが、投薬しない人に比べ治癒が遅くなる傾向も見られ、「早く風邪を治したいから薬を飲み続けるのは考え直した方がいいのでは」(後藤雅史助手)という。
<元文献と思われるもの>
より豊かな生活に貢献する医療技術に関する研究 系統的無作為割付対照試験による感冒の予防・治療体系の確立
Author:川村孝(京都大学保健管理センター), 里村一成, 後藤雅史, 北村哲久
Source:医科学応用研究財団研究報告(0914-5117)22巻 Page42-45(2005.02)
Abstract:日常の予防医療~初期診療において既存資料では満たされない感冒医療に対する素朴な疑問を解決するため,全国多数のプライマリケア医や産業医・学校医を結んで,エビデンスとして最上位に位置する無作為化対照試験を系統的に実施した.封筒法によって「水によるうがいを励行する群」「ポビドンヨードによるうがいを励行する群」「特に介入しない群」の3群に無作為に割付けた.ポビドンヨードを用いたうがいには有意な感冒抑制効果が認められなかった.水うがいにはさらに感冒罹患時の気管支への波及を抑制する可能性も示唆された.非ステロイド系抗炎症薬(ロキソプロフェン)の感冒治癒過程の及ぼす影響に関する無作為化対照試験を行った.風邪日記の記載が不完全な1例を除く113例分のデータをコンピュータ入力し,データ・クリーニングを行った
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うがいといえば、ヨード含有のものというのが、宣伝のため流布してしまっていることへの反撃であり、意義有る論文と評価した上で、個人的な感想を書く・・・
1)“特に介入しない群”はプラセボではないのでは?”ということだが、大した問題ではない。ただ、“感冒抑制効果”での比較というのが論文の質を下げていると思う。
普通感冒の発症率とあるので、自覚症状だけの比較であり、ワクチンなどの有効性確立の時の証明には
・主観的症状の軽減なのか、期間の減少
・ウィルス消失のマーカーの検討
・合併症(肺炎など)や入院率、死亡率へのインパクト
などの必要性がある。
このような臨床的インパクトを明記されてないことがこの文献の質をさげている。
たとえば、ワクチンの有効性指標として自覚症状での比較では根拠としてとぼしいとされている。入院率や死亡率、合併症の検討が有れば国際的文献となった可能性があった。
・・・これでも、酔狂なLancetのまぐれ文献となった可能性もあったのだろうが・・・
2)インフルエンザにうがいは有効か? というより安全性も考えて使うべきで書いたが・・・
・組織傷害性>殺菌性 の 可能性
・ヨード中毒の可能性
・ヨード過敏症という禁忌の存在
が、問題になり、今回の論文で、イソジンうがいをするよりは水でしたほうがよいというのが結論になると思われる。
3)お茶でうがいが有効 というのは、無理矢理カテキンと結びつけるという水商売にすぎない印象があった。
今回の研究は、多施設であり、はるかにエビデンスレベルが高い。その点でインチキ商売と決別されている。
うがいの臨床的インパク(合併症、入院、死亡率・・・)が不明であるが、水によるうがいは有害性が考えにくく、うがいをするのであればPVPのようなヨード含量よりははるかにすすめられるという結論に成ると思う。・・・メディアの記事はそこまで踏み込んでないし、あいまいな結論がめだつ。
by internalmedicine | 2005-10-29 10:33 | 呼吸器系