[言霊信仰的医療系辞書] 医療関係者には最近では耳にたこかもしれないが・・・あらたまらないご時世

パラメディックという言葉は一般的だけど、コ・メディカルという言葉は和製英語ではないかというのは、私の記憶が確かなら、2年ほど前の全国の医療系メーリングリストで確信を得た話です。“言葉狩り”の結果、つまらん和製英語ができたわけです。
パラメディカルとは医師以外の職種を馬鹿にした言葉だから、コメディカルという言葉を使いなさいと医者駆け出しの頃に聞かされた話で、結構根強いものがあります。

“EBM(エビデンスに基づく医療)にもとづくガイドライン”なんて平気で使うお役人や偉い教授たちのいる国ですから、まあ言葉がみだれても仕方がないのか・・・

各学会でも未だにコメディカルが主体です。
Google検索

と、2年ほど前の話を、それまた、医療系メーリングリストでみて思い出しました。
ゆえに再掲


[言霊信仰的医療言語辞書]
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【EBMにもとづく】i-bi-emu-nimotozuku


日本以外で使われる“EBM”は一般的には、"Evidence based Medicine"で、直訳すれば“証拠(科学的根拠)にもとづく医療”なのだが、「“EBMにもとづく”ガイドライン」は、“証拠(科学的根拠)にもとづく医療にもとづくガイドライン”となる。

ひょっとしたら、厚生労働省は“証拠(科学的根拠)にもとづく医療にもとづくガイドラインにもとづく医療”を推奨しているのかもしれない。

ちなみに、この“EBM”は日本語の“EBM”なのか、英語の“EBM”なのか不明。

【エビデンス】ebidensu (not evidence)


英語の類似発音をするものに、Evidenceがあるが、日本にはほとんど存在しない。あったとしてもほとんどかたよったものか、サイズが小さい。

用例:


誤用:「君のいっていることに、エビデンスはあるのか?」     


エビデンス・レベルってのがあって、えらい人の意見もエビデンスということになるので、この質問は愚問。結局大概エビデンスは有る.。有る・無しではなく、その強さであるので、つっこむときは「確かな」をつけて、「確かなエビデンス」というようにつっこもう。


正しい例:「先生のおっしゃることのエビデンスをお聞かせください」      


→「動物実験では・・・」と言わせたらしめたもの。「えー、動物実験ですかあ?」って言おう。

相手が「ランダム化」「システムレビュー」、「メタ解析」いずれかの単語を含んだ答えをした場合ちょっと手ごわい。追加質問として「その研究のpopulation
selectionは偏りがありは・・・」なんて適当にいっておけばその場はごまかせる。

困ったときは、「エビデンスは結局日本のものじゃないですもんね・・」とか日本のエビデンスが万が一だされた場合は「結局、nがすくなすぎますもんね・・」とか逃げ口上をわすれないこと。


【クリニック】kuriniku (not clinic)


 クリニックは診療所を示すが、clinicは、診療所だけでなく、Mayo ClinicCleveland clinicのような巨大医療施設を含む医療施設としての意味合いがある。日本の普通の形態である予約無しの“walk in clinic”は少ない。米国では、“doctor's office”の方が開業医のやってる診療所としては名称として一般的。

 

ちなみに 当方も、**内科クリニックという名前なのだが、けっして、**
naika clinicとは書かない。なぜなら、MayoやClevelandと間違えられると困るからだ。

(そんなことはないか ・・・ 自爆)

オフィスというと事務所か、どっかの馬鹿高いソフト会社のビジネスソフトと間違えられるので一般的ではない(そんなことはない・・・またまた自爆)


【ケア】kea (not care)


 英語の「care」という言葉は、かなり広範な意味をもつ。医学文献や医学書などで「medical
care」や「doctor's care」と行った医学的な意味合いで使われることが多い。

 「ケア」ということばは、厚生労働省という和製英語作成専門役所が先導して作成した言葉で、前述の「医学」的という言葉を除外したもの。そのため、医学的な意味合いに限定した言葉として、「キュア」ということばも同時作成した。しかし、そちらは介護保険という「ケア」促進運動の影になり、すたれゆく言葉となった。「介護」という言葉に連携し、「介護」という言葉が消滅したら消え去る可能性が高い。


英英辞典では、「気にかける」という気持ちを有する言葉であり、身体的接触などを直接表したものではない。家族などの行う気持ちのこもった「介護」は「cae」でよいが、どこぞの全国的な会社がするビジネス・ライクな「介護」は「care」にはならないので、造語専門役所としてはへたくそな造語。


1 : suffering of mind

2 : a disquieted state of mixed uncertainty, apprehension, and responsibility
b : a cause for such anxiety

3 : a:painstaking or watchful attention b : MAINTENANCE <floor-care
products>

4 : regard coming from desire or esteem

5 : CHARGE, SUPERVISION <under a doctor's care>

6 : a person or thing that is an object of attention, anxiety, or solicitude


【コメディカル】co-medical


一部、医療系メーリングリストで、"comedical"ってgoogle検索すると日本語のサイトばかり検索されておかしいとか、Webstar辞書(検索)などの英英辞書に“comedical"という表記がないとか、話題になった。



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 comedically:

  1 : of or relating to comedy

  2 : COMICAL

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comedicallyやcomedicはcomedyの形容詞で、“ a medieval narrative that ends
happily ”ということも意味合いとしてあり、日本語のコメディカルはそうあればよろしいかなという希望的な意味合いが含まれるとしたら、良い言葉なのかもしれない。



コメディカルという言葉の存在がどうやら風前の灯火なので、保存運動をすべき。幸いにして、救急医学会など各学会が保存運動に積極的で、この言葉は当面安泰と思われる。

【サーズ】sahzu (not SARS)


厚生労働省の役人が日本独特の基準でSARSの診断基準を作り、それに従う病名。“重症でなければサーズでない”というのはこの診断基準の骨格。


【サプリメント】sapurimento (not Supplement Foods)


現在、ご本尊は、みのもんた、あるあるの堺である。

健康食品関連の造語として、「特定保健用食品」、「栄養機能食品」、「一般食品」がありがあり、サプリメントは「一般食品」に分類される。厚生労働省の認める一定の栄養機能があるともないともはっきりしない食品ということ。

なお、かつて「栄養成分を補給し、又は特別の保健の用途に資するものとして販売の用に供する食品」を「健康食品」として概念整理したことがある(「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会報告書」平12.3)ため、「健康食品」という言霊との混同を生じやすくとても素敵な言葉

大企業(製薬・アルコール製造業など)が“サプリメント”を製造販売し、この言葉の好印象を一般大衆に与えており、今売り出し中の言霊系和製英語といえる。

“血液サラサラ”という擬態語と親和性が高いらしい。

【ナース】 nahsu (not nurse)


 ナースは漫画やテレビ番組で使われる架空の職業。スカートが短かったり、おしゃべりばかりしている職業らしい。「ドクター」も同様に米国の「Medical
Doctor」と異なる。異常にかっこよかったり、威張ってたりしている職業らしい。以前はどの診療科でも額帯鏡をしていた。最近はどの科も聴診器をしている。


【ミス】misu(not miss ,not mistake)


報道機関が医療機関や医者を貶めるために使う言葉らしいが、ミスという言葉自体英語由来なのかどうか不明なことばである。

エラーという言葉が英語では“医療過誤”の意味合いで誤訳されることが多いが、よく似た言葉である“error”は統計学的に避けられない好ましくない事象という意味で使われているが、日本語には該当する言葉が無く、“ミス”と誤訳され、報道機関に悪用されている。
関連事項→無謬性を求めることの愚かさ



ちなみに“報道ミス”という言葉はその頻度の高さにもかかわらず報道機関から発せられることの無い言葉である。さらに言えば、報道機関が“報道ミス”で訴追されることは無い。

(例:朝日新聞珊瑚問題・北朝鮮拉致問題など)



by internalmedicine | 2004-05-08 16:13 | 医療一般  

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