高ホモシステインは必ずしも冠動脈疾患と関連しない・・・出版バイアスの可能性
2005年 11月 04日
1)医療保険外の収入を求める
2)早期引退・転職
3)積極的な医療を差し控え、めだたぬように・・・責任回避の消極的医療へ
など・・・わたしなどは2)を考えてますが・・・
中には、(1)を目指す方も増えてきたようで、そのようなことを多くみききするようになりました。
そういう医師・医業に関して、別に科学的根拠が有ればよろしいし、双方納得づくであれば問題ないのでしょうが、科学的根拠というのはupdateな情報を得ていないと挙げ足をとられることともなる危険な分野です。
“現行の特定保健用食品の科学的根拠のレベルに達しない場合でも,一定の有効性が認められる場合は,限定的な科学的根拠である旨を表示することで「条件付き特定保健用食品」として許可され”ているのです。
その根拠に関してははっきりいたしません。医学的論文に書かれてあれば根拠とするのが現行と認識されます。医学的論文が果たしてただしいか・・・答えはNOです。善意に基づいた発表であったとしても、出版バイアスなる、有効性が示されている論文であれば文献として出版がされやすいというのがくせものなのです。これを検討する方法としてはfunnel plotとかいろいろあるのですが・・・。
今の特保の基準では、そのような、科学的根拠が高いものを要求されない。たまたま、くじ引きで当たりをとったから発表して、それを根拠に特保として業者ぼろもうけ・・・こういうことを是正しなければ私のような疑り深い医師は特保をすすめることができません。
定期的に有効性を吟味させ、有効性に疑念がでてきたら、特保認定はすぐに取り消すべき!
厚労省は癒着を否定したければそのように運用を改善すべきです。
ホモシステインというのを、ビタミンの宣伝の道具に使われているのをよく見かけます。かれらは決して嘘はついておりません。なぜなら、そういう論文もあるのですから・・・
でも、結果として事実と異なることが、科学の世界では起きるのです。
ホモシステインと冠動脈疾患に関する疑念が生じてきた。しかも、かなり高い科学的証拠レベルで・・・という論文です。
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葉酸の役割、血中ホモシステイン濃度を減少させることによる、冠動脈疾患を予防する役割は必ずしも強いものではないとされていた。Lweisらは、観察研究のメタアナリシスをして、改めて検討した。その結果、冠動脈疾患に対するホモシステイン濃度の影響を示唆する証拠は軽微であった。中東や日本は相関がありそうだが、やはり出版バイアスの可能性が示唆された。
Meta-analysis of MTHFR 677C->T polymorphism and coronary heart disease: does totality of evidence support causal role for homocysteine and preventive potential of folate?
BMJ 2005;331:1053 (5 November)
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/bmj;331/7524/1053
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26000のケースと31183の対照。全体のランダム効果オッズ比は1.14(95% CI 1.05-1.24)がTTとCC遺伝子型で見られた。heterogeneityの強いエビデンス(P<0.001 I2=38.4%)があり、地理的なものを層別化したら消失した。
ヨーロッパ、オーストラリア、北アメリカは"null"へ減弱したが、中東、アジアは異なる。
MTHFR 677 C->7の遺伝子多型性と冠動脈疾患をサポートする強力なエビデンスはヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアにおいて存在しない。地理的に北アメリカ・ヨーロッパに葉酸摂取の大量摂取による影響があるのでは無かろうか。ホモシステイン濃度を引くすすることにより葉酸が心血管疾患予防に役割を果たすという結論に若干の疑問が生じてきた。
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観察研究にて血中ホモシステイン濃度が冠動脈疾患のリスク増加と関連していることが一致した治験である。しかし、冠動脈疾患におけるホモシステイン濃度の関連に関しては混乱がある。たとえば、喫煙、社会経済的地位であり、動脈硬化の存在はそれ自体がホモシステイン濃度を増加させる可能性がある。
この最後の説明(原因と結果の逆転)は、コホート研究におけるホモシステイン-冠動脈疾患相関がそれまでの症例対照治験からの結果より相関の弱いものであり、症例対照治験は高ホモシステイン濃度に繋がる疾患の存在がバイアスをかけている可能性がある。
遺伝子変異であるMTHFR 677C->7と冠動脈疾患の相関関係が報告されている。
この遺伝子変異は、ホモシステイン濃度増加と関連するが、mendelian randomisationの原則に従うと、冠動脈疾患リスクの観察研究と直接測定ホモシステイン濃度の関連は原因と結果の混同の要因となりえる。
実際、葉酸を含むPolypillは2つのメタアナリシスによりサポートされる結果において、ホモシステイン濃度を低下させて、原因の証明が強引であったと言われている。
しかし、原因を性格に推定する為に必要なサンプルサイズは、ホモシステイン濃度のようなintermediate phenotypeの通常の遺伝子変異の影響を与えるものであり、かなり大きなサンプルサイズを必要とすることとなり、出版バイアス(都合の良い結果の選択的出版)が遺伝関係の研究でもっともありえることである。
実際に、メタアナリシスの報告では、ほとんど有意差がない。
MTHFR 677C->Tと冠動脈疾患の相関のメタアナリシスでは出版バイアスの可能性が示され、非出版小規模陰性データはMTHFR 677C->T変異と冠動脈疾患の相関のoverestivationを生じる原因となる。
2つのメタアナリシスは以前より大規模のもを含むいくつかの新しい研究のものであり、
これと出版されたが以前の2つの包括的なメタアナリシスと比較して2倍以上の数となった。
今回の検討は、包括的な文献検索と、十分に出版バイアスを検討したものである。
by internalmedicine | 2005-11-04 10:46 | 動脈硬化/循環器