拡張期心不全 ・・・ 古そうで新しい疾患

拡張期心不全は高齢者に多く、循環器専門医の医師にコンサルトしても、左室駆出率正常、左房径正常だから大丈夫などといわれ、臨床的な症状と乖離している経験を多くしました。
最近、そういう高齢者に対してBNPを測定するとかなり高値を経験します。まだ臨床的に十分専門家でも診断/治療に関して確立している訳でなく今後の情報が重要なようです。
循環器の医者はそれにしても呼吸機能検査をしませんねえ・・・、呼吸器の医者である私は心臓機能に関しては気をつかわなければ仕事になりませんけど・・・

ここの解説の拡張障害型心不全によれば・・・
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左室拡張障害に関しては左室駆出率といった明確な他覚的所見がある収縮機能障害に比べ、症状がなければその存在を確認することが難しい。
心臓カテーテルにて左室拡張期圧曲線/容量曲線で機能評価
心エコーにて左室流入血流測定、僧帽弁流入、E波・A波評価、肺静脈血流のS波・D波・・
もっとも簡単な”BNP が高値であるにもかかわらず、心収縮能が正常である” と定義することも可能かもしれない。
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拡張期心不全 左室の能動的弛緩と受動的スティフネス(stiffness:固さ)の異常
Diastolic Heart Failure — Abnormalities in Active Relaxation and Passive Stiffness of the Left Ventricle
NEJM Volume 350:1953-1959 May 6, 2004 Number 19
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心不全があるが左室駆出率正常である患者の病態生理は拡張期機能の主な異常を有しており、それを拡張期性心不全と呼ぶ。
心不全の症状・所見ありの患者で左室駆出率の正常な患者は拡張期性心不全を有するといわれる。田て王的に心不全の病態生理的原因は左室の拡張期特性の変化をもたらすが、多くは不明。
47名の拡張期性心不全の診断クライテリアに合致した患者で、拡張期心不全の患者は左室弛緩の異常があり、左室内腔stiffnessの増加をもたらす。平均 (±SD) isovolumeic-pressure減少時定数は対照群で高い (59±14 msec vs. 35±10 msec, P=0.01)
拡張期用量関係は上方・左方へ変移する。左室受動的stiffness定数は拡張期心不全で有意に高い。
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Calculation of Passive Diastolic Stiffness
受動的拡張期stiffnessの計算

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拡張期性のstiffnessは、3つの左室拡張期圧-用量関係(coordinates) : 拡張期終末圧と用量、A前拡張気圧と用量、最小拡張期圧時の圧力ー用量で評価される。
左室拡張期圧-容量関係は対数で表現できる。P=Ae^(βV)(P=左室拡張期圧、V=左室拡張期用量、Aとβは定量的受動的stiffnessの定量化をしたときのcurve-fitting定数
拡張期心不全の患者の左室弛緩の異常な遅さは、拡張期早期の心筋の十分な弛緩を障害することとなるだろうと推定した。故に、左室最小拡張期圧のポイントでの不十分な弛緩は、純粋に心室の受動的stiffnessを反映している値より高く出るはず。
故に、左室最小拡張期圧時の補正値は計測値から遅延化(あるいは不十分あ)された弛緩による値を差し引くことによって得られる。この補正圧は補正受動的stiffness定数を計算するために用いられた。
この補正を行う方法は、図示してあるが、標準的な設計された概念、出版されている実験データの基づいている。
要約すれば、大動脈弁閉鎖の時点から もし弛緩が左室圧の充満がなくなる状態ですすめば左室圧がゼロに近づいた時点までの左室圧の減少の時間経過がプロットされている。
このやり方は弛緩が3.5の値になったときに十分になされているという考えに基づいている。
大動脈弁閉鎖から左室最小拡張期圧までの時間を測定し、この時間の圧は圧力 対 時間の常定数のプロットから求める。
遷延化された弛緩による圧力への影響は、左室最小拡張期圧が純粋な受動的な圧力より高いということで、その高さで表現した。
左室最小拡張期圧の測定値から遷延した弛緩を示す圧力を差し引くことで、補正拡張期最小拡張期圧をもとめることができる。このホ制圧を補正受動stiffness定数とよぶこととする。
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by internalmedicine | 2004-05-09 21:57 | 動脈硬化/循環器  

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