肥満問題は単に薬剤を開発すればいいという問題じゃない
2005年 11月 17日
Randomized Trial of Lifestyle Modification and Pharmacotherapy for Obesity
NEJM Volume 353:2111-2120 November 17, 2005 Number 20
http://content.nejm.org/cgi/content/full/353/20/2111
・sibutramine単独
・ライフスタイルの変容プログラム(カウンセリングを伴う30のグループセッション)のみ
・sibutramine+ライフスタイルの変容プログラム
・sibutramine+簡易指導(プライマリ・ケア受診時10-15分間)
全例に1200-1500Kcal/日と運動レジメンを行った。
404名スクリーンされて、180名が除外、医師から禁忌とされたのは38例、精神的な問題で14例、35例が血圧増加のため除外
<減量効果>
組合せ治療で、平均12.1±9.8 kg
sibutramine単独で、5.0±7.4 kg
ライフスタイルの変容プログラムで、 6.7±7.9 kg
sibutramine+簡易指導で、7.5±8.0 kg
食事の記録を頻回に行った組合せ治療群が、もっとも体重減少が顕著であった(18.1±9.8 kg vs. 7.7±7.5 kg, P=0.04)
2つの薬剤、sibutramine(Meridia,Abbott)とorlistat(Xenical,Roch)が、体重減少とその維持目的のため、現在FDAで認可されている。この薬剤は、包括的プログラム、食事・運動・行動療法治療を伴うことが推奨されている。週毎のグループ、個々のセッションで指導される。製薬会社スポンサーの体重減少治療はライフスタイル改善のプログラムが少なくなる。sibutramine単独とグループセッションによる生活スタイル変化、2つの治療の併用を、このランダムトライアルでは、比較したものである。
Sibutramineは、セロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害物質で、空腹と満腹感をコントロール内部信号を変化させるものとされている。
一方、ライフスタイル変化は、外部環境をコントロールする目的、たとえば食事摂取歴を記録したり、リストから食品を購入したりすることなど。
renfluramineの2つの研究から、ライフスタイルの変容プログラムと医薬品が相加的であることが示されていた。
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昨今、肥満治療の報告が増えているのは、創薬の関係もあるのだろう・・・
日本において、この肥満治療の研究において混乱をもたらしているのは、言葉の問題である。
“肥満・過体重というのは、30歳以降の肥満・上半身肥満が問題”とあるが、obesityと肥満は同列には評価できないのである。
以前ブログで、”過体重は死亡率に影響なし 肥満・低体重は寿命短縮“(http://intmed.exblog.jp/1863157/)とのべた。
厚労省は相変わらず馬鹿だから・・・過体重まで肥満と称している。基礎研究などを軽視しているから、詐欺的教授どもや素人学者にて欺されるのである。日本の権威学者自体も科学性に乏しい可能性すら有る。ネズミの実験はすきなようだが・・・
さて、肥満(obesityと一応する)において、5-10%の体重減少で、肥満関連疾患、糖尿病などの発症予防・出現の遅延化をもたらすことができる。行動学的治療は一時的には有効だが、時とともに体重の再増加が見られる。体重減少到達も難しいが、その維持はさらに困難さがつきまとう。長期投与薬剤がFDAで2種類認められているが、ライフスタイル変容をもたらすための補助的治療も必要である(NEJM editorial)。
日本の役人どもは、こういうライフスタイル変容を目的とする介入に金がかからないと思う浮滓がある。介護保険における、“医療機関等において、介護予防の観点も踏まえて健診を実施する”と書きながら、費用弁済に関して全く考慮しない馬鹿役人ども、医療安全をと言いながら、医療費を削減する厚労省・・・・・薬にしか金がかからないと思い、人員集約的なシステムでは、そのコストが考慮されなけば・・・どの事業も失敗するはず・・・
by internalmedicine | 2005-11-17 11:33 | 動脈硬化/循環器