パワーリハビリテーションに関する・・・・シリーズ(2)
2005年 12月 11日
V.Resitance Training と 各種病態
運動に関して、循環器系への影響は比較的調査されているため、循環器系主体のガイドラインは整備されている。
たとえば、好気的運動及びResistance Trainingによる禁忌事項と負荷心電図の必要病態について示す。(引用)
好気的運動及びResistance Trainingの禁忌
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絶対的禁忌
・最近の心電図の変化と心筋梗塞
・不安定狭心症
・Ⅲ度房室ブロック
・急性うっ血性心不全
・コントロールされていない高血圧
・コントロールされていない代謝疾患
相対的禁忌
・心筋疾患
・弁膜症
・心室性期外収縮
(Circulation. 2000;101:828.)
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心臓負荷テストのガイドライン
・最大酸素摂取量60%以上の運動を予定している45歳以上の男性、55歳以上の女性
・既知の冠動脈疾患や心臓の症状
・2つ以上の冠動脈リスク要因*
・糖尿病
・ 肺疾患・代謝疾患の既知あるいは主な症候/所見
*高血圧、喫煙、高コレステロール血症、肥満、閉じこもりにライフスタイル、冠動脈疾患の若年発症家族歴
Adapted with permission from Franklin BA, Whaley MH, Howley ET, eds. ACSM's guidelines for exercise testing and prescription. 6th ed. Baltimore: Lippincott Williams & Wilkins, 2000.
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上記基準に眼科的疾患、腎疾患、運動器系疾患の考慮がないことに気づかれると思う。
各病態につき、解説していく。
1)Resistance trainig やexerciseに関する、心疾患を有する患者の適応・副作用
AHA Science Advisory
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/full/101/7/828
(Circulation. 2000;101:828.)
Safety of Resistance Training
中程度から重度のリスクを有する心疾患患者のresistance testingやトレーニングは研究が必要である。しかし、健康成人や低リスク心疾患患者(運動誘発心筋虚血・重症左室機能障害・複雑な心室性不整脈などを有さない患者など)の多くの研究では整形外科的な副作用は少なく、心血管イベントはないと報告されている。
(逆に言えば、心疾患中等度リスクを有するものへの安全性は確立していないといえる)
Gordonの報告では、1回(例示:1repetition maximu 1RM)可能な最大ウェイトを決定した後、事前の医学検査や最大トレッドミル試験施行後、血圧が<=160/90である20-69歳の健常者6653名では有意な心血管事故は生じなかった。
軽度高血圧患者のresistance trainingの安全性は報告されている。さらにHaslamらは、ウェイトリフティング後の動脈内血圧は、1RMの40%-60%なら臨床的に許容内であると報告している。
最近、冠動脈疾患患者でのリハビリテーションのresistance testingやtrainingの12の異なる研究のレビューがなされ、resistance or circuit weight trainingは冠動脈疾患を有する男性の加えられることが典型となる。
resistance や circuit weight trainingは、一般的に3ヶ月以上の好気的トレーニングを受けている冠動脈疾患を有する人の身体conditioning regimenに加わることが、典型的な事例である。
このcircuit weight trainingは、上下肢resistance運動の、比較的軽いウェイト(1RMの40%-60%)で、セット毎の安静を少なく(15-30秒)して行う、パフォーマンスを含み大難的な方法で行われている。
期間、プログラムの長さ、強度は30-60分、6-26週、1RMの25-80%である。
すべての研究で、筋肉の強度(strength)、耐容能(endurance)の改善が報告され、高度(80% 1RM)・中等度(30%-40%)で認められている。
狭心症状、虚血性のST低下、異常な血行動態、複雑な心室性不整脈、心血管合併症の無いことが、strength testingやtrainingを冠動脈疾患を有するが、リハビリテーションに積極的に参加している、臨床上安定な人に行える所見である。
不幸なことに女性でのデータはない。
通常のガイドラインでは、手術・心筋梗塞後の患者はresistance trainingは少なくとも、4-6ヶ月避けるべきであると下窩rている。多くの参加者は、急性MI後の3週まで30ポンドまでに相当するstatic-dynamic activityなら安全に施行できるかもしれない。もし低ウェイトプログラムがなされてるなら、resistance trainingをできるだけ早く開始すべきである。
*上記心疾患患者への適応は、厳重な医学管理下に有るものであり、患者の訴えによってのみ、そのリスクを評価できるものではない。運動誘発性不整脈・虚血など有る程度の負荷試験をしなければわからないもの、糖尿病患者などにみられる無症候性の心筋虚血事故などもあり、パワーリハビリテーションではそのことが配慮されていない。
引用:Exercise Guidance in Hypertension
http://www.physsportsmed.com/issues/2000/10_00/stewart.htm
過剰な血圧の変動を生じるかどうかに関心が持たれている。通常の好気的運動に比較して、急性のresistance exerciseは血圧上昇が甚だしい、心拍はさほど増加しない。
心拍×血圧の積は、心筋酸素消費量を表すわけだが、好気的運動にくらべ低くなるだろう。AHAでは、慢性疾患、冠動脈リスク要因や心理的なWell-beingに介入するため、最大努力量の30%ー60%程度の軽度から中等度のresistance exerciseを推奨している。
運動は脂質値、最終BMI、インスリン利用と相関を有する。男性においては、高い血圧は高度運動を相関を有する。補正後、女性では運動と血圧は逆相関があるが、男性では相関がない。
(Diet and Diabetic Retinopathy: Insights From the Diabetes Control and Complications Trial (DCCT))
MacDougallらは、橈骨動脈の観血的モニタリングにて302/250mmHg、480/350mmHgのケースを報告。
心血管イベントや心筋酸素消費量の増大という危険性を考えておそれられていた。長期研究では、副作用報告が一般的に報告は多くないが、安全性を担保するデータも少ないと言わざる得ない。
Resistance Trainingの心血管系への安全性は十分に認められていない。長年高血圧で傷害を受けている脳血管や心血管・大血管に対して構造的な変化があれば、それに対して悪化させないという証拠はないのである。
突然死のリスクに、高齢であること、高血圧、糖尿病なども存在する。
その突然死に関するガイドラインが存在している。医療と関連しない介護施設内で、ストレスをともなう運動を行うことは突然死リスクの高い対象者であるなら、それ相応の準備がなされてなければならないのだが、医療の関与をきらう介護保険ならではの危険なシステムなのである。
2)糖尿病
運動負荷テストを行う前に、医学的評価を行わなければならない。特に合併症や禁忌項目の除外が必要である。
糖尿病患者の一般的な運動注意事項として・・・無症候性の糖尿病患者において、心血管疾患の尤度は以下の所見で増加;
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年齢35歳超
10年超のII型糖尿病
15年超のI型糖尿病
CADの動脈硬化リスク要因
微小血管障害の存在(増殖性網膜症、腎症、微量アルブミン尿症を含む)
微小血管障害
自律神経障害
(Diabetes mellitus and exercise: a position statement by the American Diabetes Association. Diabetes Care. 2000;23(Suppl 1).)
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糖尿病は重篤な合併症を有することが多く、特に、糖尿病性網膜症、慢性腎不全、末梢性神経障害、CVDなどがあり、Haykowskyらは脳動脈解離の報告もある。
一般的には糖尿病患者においてよくsuperviseされた場合は比較的安全な運動といえる。
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糖尿病患者におけるResistance Exercise禁忌
1. 不安定狭心症
2. コントロールされていない高血圧;収縮期血圧>160;拡張期血圧>100
3. コントロールされていない不整脈
4. 重症うっ血性心不全の直近の既往
5. 好気的運動<6 Mets :症状を限界とした運動テスト
6. BruceプロトコールStage3達成前のST低下
7. 左室駆出率<45%
8. 活動性のある心外膜炎・心筋炎
9. 血栓性静脈炎
10. III度房室ブロック
11. 安静時ECG ST部位低下>3mm
12. 重度増殖性網膜症
13. 血糖値 <100mg/dl or >250mg
(Resistance Training for Health and Rehabilitationから引用)
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運動前・運動中・運動後の低血糖イベントに対する推奨事項
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1.運動前血糖が<100mg/dlなら、15-20gの炭水化物摂取し、15-20分待つ
再チェックし、>100mg/dlならトレーニングを行う。
2.運動中に症状出現なら、直ちに運動をやめ、血糖値をチェックする
3.もし血糖モニタリングが不能なら、15-30gの即効性の炭水化物を運動を続ける前に摂取する。
4.もし血糖が<60mg/dlなら、炭水化物15-30gを早めに摂取する
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どの運動セッションでも、ウォームアップを5-15分、軽度の好気的運動/柔軟体操(calisthenics)を含む要素を先行すべきである。
3)関節疾患
・変形性関節炎・炎症性多関節炎:関節が不安定なら過度のresistanceは避ける。全身症状はトレーニングの阻害要因。薬物と有害的な副作用を十分周知する必要がある。
・リウマチ性関節炎:頸椎の過伸展は避ける。手の障害が手を使った器具の使用に障害になる。
・SLEや他の疾患:運動処方やリスクに関わる他の全身性疾患を有する可能性がある。
・脊椎関節症:脊椎回旋・進展・屈曲を避けること。
・他(結晶性関節炎・血管炎など):効果のあるというエビデンスがない。他の臓器障害の合併がある可能性が高い。
・線維性筋痛症
4)網膜症
糖尿病性網膜症に関して、前向き研究がなされなければならない。
現時点ではエビデンスが少なすぎる。
5)腎疾患
運動を過度に制限することには同意できないが、腎機能に影響を与える運動は、運動制限を適切に行わなければならない。
短期・消耗性の運動により、血液濃縮が生じ、尿蛋白が増加する。
運動性のタンパク尿はpH、尿酸値と独立でおそらく運動中のノルアドレナリンによるものであろう。50日間程度でトレーニング後生じた運動性蛋白・血尿は緩徐進行性の腎疾患と考えられる。
ただし、透析患者などの進展した腎疾患の身体機能は低く、最大酸素摂取量と自己報告機能計測値、身体活動レベルは生命予後の推定因子となる。心血管系運動トレーニングにて最大酸素摂取量、自己報告機能測定値は改善。Resistance trainingは筋力増強的に働く。透析患者において、重要な臨床的な問題、たとえば心血管疾患リスク、酸化ストレス、炎症などにに有益性を示す。数多くの運動のベネフィットを示す証拠があるが、透析施設や医師はルーチンケアに組み込むことに消極的である。身体運動目的のルーチンカウンセリング、勧めは、身体機能改善、QOL改善、最終的な健康状態改善につながる。
Hemodial Int. 2005 Jul;9(3):218-35.
・・・・続き(うつ・認知症などの精神疾患などとの関連について)
VI)前向きに、レジスタンス・トレーニングを効果的に導入するには・・・
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resistance exerciseはendurance exerciseより少ないリスク要因へ影響を与えるが、患者の筋力、筋肉量は増加する可能性があり、身体運動能力をオズ化させる可能性があり、老人においては、ADLの改善をもたらす可能性がある。 resistance training programを開始したひとは、心血管、整形外科的、筋骨格の問題がある場合注意深くスタートする必要がある。加えて、適切なテクニック、運動の回数、safety precautionを含むresistance training programの特異的な構成要因について注意深い推奨を与えねばならない。週2-3回の、大きな筋群を訓練する、8-10種類の異なる運動( (eg, chest press, shoulder press, triceps extension, biceps curl, pull-down, lower back extension, abdominal crunch/curl-up, quadriceps extension, and leg curls/calf raise))を1つのセットとしたら、改善するだろう。
回数を増やしても、セッションあたりのセットを増やしても、付加的効果は非常に少ない。筋力や耐容能を増すためには、60歳以上の健康な人、心臓患者には低抵抗の、10-15回の繰り返し、60歳未満には8-12回の繰り返しが推奨される。老人や虚弱人では、外傷予防のためにweightを少なく、そして回数を多くすべきである。高強度の負荷は、膝(leg extension)や肩(rotator cuff:(肩の)回旋(筋){かいせん(きん)}腱板{けんばん})領域に障害を生じる。
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健康管理、転倒防止や痛みの把握・対応などプログラム実施中のリスク管理が重要であり、労力を要する・・・と言う意見が、介護予防市町村モデル事業でも揚げられている。
出典:「介護予防市町村モデル事業」に係る実施結果の分析 事業報告書に記載された評価・課題・留意点等について 2-1 筋力向上について
マシンを使った場合の<リスク管理について>として、以下が記載
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・トレーニング期間に身体に痛みを感じたが、無理して行ったという話があった。(山形県尾花沢市)
・対象者が高齢者であることから、健康管理について多大な労力があった。(大阪府枚方市)
・毎回、看護師・保健師による問診とバイタルチェックを行い、疼痛がある場合にはPTの疼痛評価を、バイタルに問題がある場合には再検を随時実施することで、事故を未然に防ぐことができた。リスク管理に関して、記録・入力・医師・家族・ケアマネ等との連絡に時間を割いているが、今後継続してそのような時間がとれるかどうかが課題である。(奈良県生駒市)
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試用現場からもすでに問題点が数多く揚げられており、特に多大な人手と、リスク管理に関しては多職種的な連携が必要であることが示されている。
そのことが充分担保されているのかはなはだ疑問なのである。
VII)パワーリハビリテーションの研究の問題点
(大幅加筆予定)
1.(Evidenceレベル)
対照のない研究の無意味さ
横断的研究でも質の良い研究はあるが、この場合は選択バイアスがかかっている
出版バイアスのてんこもりである
2.コスト効果という観点からの研究がない
真のコスト解析ではユーティリティー研究が必要
3.言われているほど、コスト削減効果があるのか?
-コンプライアンスの問題
筋力増強のコンプライアンスは、個体差があり、たとえば、性差もあり男性は好んで行う人もいるが、女性は嫌う傾向にある。
-選択バイアスによる研究
もともと研究の前提で、希望者のみなされている。介護保険制度下の地域的な研究であれば、制度に擬した状態でなされるべきものであるが、その検討がなされていない。すでに意欲のある対象者だけの研究結果なのである。
もっともおそろしいことは、コスト削減効果があるという前提で、来年4月からの改訂試算がすでになされている。(げに恐ろしき、官僚の頭の構造)
VIII)まとめ
厳格な医学的評価に関するコストは無視され、それにより除外される対象者数は検討になく、筋力増強トレーニングによる副作用は現場へ責任転嫁であろう。
・・・・・(加筆予定)
(一部文章に投稿予定の部分もありますので、引用などは自由ですが、当方Blogからの出典という記載は付記お願いします。)
by internalmedicine | 2005-12-11 23:44 | 運動系