プライマリ・ケア医の自殺予防に関する役割
2005年 12月 13日
プライマリ・ケアにおいて自殺を同定・予防することに国策的にも、臨床においても関心が持たれている。米国において自殺患者の平均45%が自殺前1ヶ月以内に医療機関受診している。フリーアクセスという面では日本の方が、受診率が高い可能性があり、医師は強力な歯止めとなる可能性がある。
プライマリ・ケア医自体が、ケース発見・治療スキルを向上させる自殺予防・教育プラグラムへの参加という面で、研鑽する必要がある。
プライマリ・ケア受診患者の1-10%が、希死念慮・企図を経験し、内因的にプライマリ・ケア受診を行っている。
Suicidal Ideation and Risk Levels Among Primary Care Patients With Uncomplicated Depression
Annals of Family Medicine 3:523-528 (2005)
http://www.annfammed.org/cgi/content/full/3/6/523
合併症を有しないうつ病を有するプライマリ・ケア受診の患者における頻度、重症度、受動的・能動的希死念慮の経過を調査したもの
761名の臨床的にうつ病と診断し、治療の必要性有りと判断された患者の内、405名、53%が気分変調症/dysthymia 、大うつ病、両者の合併であった。
このうつ病患者において、約90%が自殺思考の存在・傾向において無・低リスクであり、残りは中等度リスクと分類された。
無・低リスクと推定されたほぼすべての患者は6ヶ月間そのままのレベルであった。
中程度リスクと考えられた希死念慮の頻度は、3ヶ月で1.1%、6ヶ月で2.6%であった。
2段階のスクリーニング方法
第一段階:PHQ-9
http://www.pfizer.com/pfizer/download/do/phq-9.pdf
第2段階では患者の重症度を調査:希死念慮の性質頻度など
同様なことを記載された日本の論文:http://www.ncnp-k.go.jp/ikiru-hp/report/higuchi16t/higuchi16t-4.pdf
1次予防戦略の中の重要な役割を担う“地域介入”・人材
2次予防戦略として‘うつ病の早期発見・早期治療’にかかりつけ医の役割の重要性
JAMAのSystemic Review(JAMA. 2005;294:2064-2074.)によるとし、プライマリ・ケア医が早期介入して、自殺が予防できたというエビデンスは存在しない。しかし、医師の教育、自殺手段へのアクセス制限は自殺予防に役立つ判明されており、プライマリ・ケア受診時の発見・対策の有益性が想定される。
追加すれば、このレビューによれば、公衆教育、スクリーニングプログラム、メディア教育に関しては今後検討されなければならないらしい。
開業医が簡単にスクリーニングできるPHQなどの質問票の整備、早期発見後スムーズに地域での専門家への紹介できる制度などの整備が必要であろう。
なんせ、日本における死因では心血管系疾患よりはるかに多いのだから、この方面に診療報酬が振り分けられてもおかしくないはず。
by internalmedicine | 2005-12-13 10:54 | その他