健康情報の信頼性とその情報源

往診の道すがら、ラジオを聞いてると、DetoxというQuackを紹介していた。Detoxはどうも生薬や自然食と結びついているようであり、Detox DietやDetox Herbというのは実に不合理な概念で、汚染された空気や食品添加物からの毒を追い出すため、健康食品を勧められたりする場合もある。化学物質過敏症における化学物質の定義と同様毒素の定義は突き詰めれば曖昧で、かつ、“自然のものだから安全”や生薬などの安全性の空論・誤解を利用したものと思う。

ラジオの健康情報の信頼性というのは洋の東西を問わず低いようである。あるあるやみのもんたのテレビ番組を見る限り信用してはならないと思うのだが、人間はビジュアルな情報、動的な画像に触れると、批判的にみることを止めるようである。
ラジオからの情報というのは、警戒心をもって対応できるのかもしれない。テレビはヒトの客観的批判の雨緑を削いでしまうのかもしれない。インターネットでもビジュアルな、動画のような情報次元の高いものはその目先にだまされる原因となるのかもしれない。


健康情報の信頼性とその情報源:Trust and Sources of Health Information
Arch Intern Med. 2005;165:2618-2624.
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日経のアンケートと比較してみるとおもしろい

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普段得ている健康情報で「信頼性が高い」と思う情報源は何ですか
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インターネット 21.1(95%CI 19.9-22.3)
テレビ 22.0 (20.8-23.2)
新聞 23.2 (22.0-24.4)
雑誌 10.9 (10.0-11.8)
医師 42.0 (40.5-43.5)
家族・友人 8.7 (7.9-9.5)
メールマガジン 4.3 (3.7-4.9)
書籍 8.2 (7.4-9.0)
健康専門雑誌 8.3 (7.5-9.1)
ラジオ 1.7 (1.3-2.1)
薬剤師 5.0 (4.4-5.6)
シンポジウム/講演会 2.8 (2.3-3.3)
その他 3.2 (2.7-3.7)
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普段得ている健康情報という縛りをつけておいて、普通医療機関には行かないので、もともと設問上医師などの医療関係者は低くなると思われるが、
“(医師の)得票率が42.0%ということは、半分以上の回答者は、『医師の言うことはあまりあてにならない』と思っているとも考えられます。日本では、昨今、医療不信が問題になっていますが、健康を守り、時には命を託すことになる医師への信頼がここまで低いとは、予想外でした。”などと、結果をミスリードする日経の汚さ。
(新聞の信頼性はそれより低いという事実を棚に上げるのは笑いをとろうとしてるのだろうか?)


そして、この調査母体であるJIMA自体の問題点が揚げられている。
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「日本インターネット医療協議会」の問題点を考える
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一般の医師から見れば奇異に見えるある疾患に対する治療を主張し続けるウェブサイトを推奨している上に、会員であるなら推奨するという信頼性の担保がなされてないということが問題となった団体である。

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医学・健康情報を求める環境がドラマティックに10年程度で変化した。世にインターネット技術の急激な拡散があり、健康情報の量が空前の量として一般消費者にも広がっている。
information-tailoring toolsやtelemedicineの進歩により、伝統的な診療所の範囲を超えて、医療専門家の到達できる手段が広がっている。
patient advocacyやcosumerismの増加として、製薬会社のDirect-to-consumer宣伝キャンペーンが多くなり、娯楽化したものやニュースメディアが健康・疾病について、かつて無い量で、視聴者に情報を与え始めた。
同時に、政府も関心を寄せているであろう、デジタルデバイドに関する問題も出現。
医療サイドでは、2004年5月に、US Secretary of Health and Human Servicesによる電子的手段による転送可能なカルテとして結晶化された。
病院では。データ入力・レビューのシステムがユビキタスとなり、医療の質向上に繋がるアプリケーションを作りつつある。
多くの考察があるが、個人が健康・医療情報を売る方法、異なる情報チャンネルを用いたことによるその信頼性のパターンに関してそれがどのように影響を与えているのかが不明である。
伝統的に医師は患者への医療情報提供者であり、サービスを提供する中心的gatekeeperの役割を果たしていた。オンラインで処方薬剤がどのようなものなのか、予防・治療オプションがどのようなものなのかが知ることができるようになり、動的にコミュニケーション関係が変わってきており、decision makingにも影響を与えている。
多くの医師はWWWからの印刷物で武装化したり、正確な医療、検査、投薬を要求する患者を多く経験している。


米国のHINTS dataから、言えば、成人の63.0%がWebサイトやE-mailを用いており、86.8%が主に自宅から個人回線でアクセスしている。雑に言えば2/3(66.4% 54.7%-68.1%)が電話回線・モデム接続で、次第にブロードバンド(digital:10.2% cable 22.4%)に移行しつつある。米国国民の2/3がインターネットからの情報を得ていると推定
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この論文執筆時点の米国の方が日本よりインターネット利用が遅れているようであり、特にブロードバンドとなると、日本の方が遙かに普及率が高いようである。動画などを用いたメディアの方のメディアリテラシーが低くなる可能性があり、その比率が高まっている以上、インターネットの信頼感も増加するのかもしれない(内容が伴ってるかどうかは別として・・・)

また、医師の情報への信頼性は、米国でも信頼しない(全く信頼しない+ほぼ信頼しない)が7%も存在し、この方たちに対する医療上の説明は非常に困難をきわめることとなるだろう。

当方は、インターネットを利用して比較的信用できるサイトからの印刷物を患者に手渡しすることが最近多くなった・・・医者のことを信用してないだろうからというわけでもないのだが・・・
手書きで書き殴った説明文より、フォーマルに書かれた記述の方が、信用して、理解してくれることが多いようである。

家庭内血圧測定・・・・ここ

by internalmedicine | 2005-12-13 16:22 | メディア問題  

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