アメリカにおける小児インフルエンザ関連死(検査確定による)


アメリカにおける小児インフルエンザ関連死
Influenza-Associated Deaths among Children in the United States, 2003-2004
NEJM Volume 353:2559-2567 December 15, 2005 Number 24
http://content.nejm.org/cgi/content/short/353/24/2559
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インフルエンザは子供似よく見られるが、検査により確定した小児の死亡率に関しては米国国内では評価されてない。
2003-2004年のインフルエンザシーズン中、US内居住の18歳未満の検査で確定したインフルエンザワクチン関連死亡を調査

153名のインフルエンザ関連死亡40州の健康専門部局から報告されたもの
年齢中央値は3歳で、内、96名、63%が5歳未満。
47名、31%が病院外で死亡、45名、29%は発症3日以内に死亡
細菌の感染合併は、102名のうち、24名、24%は検査で確認
小児の33%は、インフルエンザ合併症リスク増加と認識され、20%が他の慢性疾患を有し、47%は健康状態であった。
慢性の神経性・神経筋疾患が1/3の子供に認められた。
死亡率は6歳未満の子供多い(子供10万対0.88; 95%CI 0.52 - 1.39).

結論、USないのインフルエンザ関連死亡数は2003-2004年のインフルエンザシーズンでかなり存在し、インフルエンザワクチンカバーや診断・治療の改善が必要であろう。そのことで小児のインフルエンザ死亡率が減少する。
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【小児における致命的インフルエンザの臨床症状(US) 2003-2004 Season】
Clinical Feature No. of Children (%)
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〔医療機関での徴候・症状〕
発熱 108 (77)
咳 93 (66)
呼吸障害 83 (59)
呼吸器系症状なし 19 (13)
嘔吐 55 (39)
発熱を有する嘔吐 46 (33)
呼吸器症状を伴わない嘔吐 8 (6)
呼吸器症状を伴わない嘔吐・下痢 2 (1)
下痢 20 (14)
嘔吐を伴わない下痢 5 (4)
意識状態変化 23 (16)
痙攣 14 (10)

〔診断〕
なんらかの急性呼吸器疾患 99 (68)
肺炎 71 (49)
肺臓炎 13 (9):剖検診断
細気管支炎 11 (8)
喉頭気管気管支炎・気管気管支炎 22 (15)
クループ 7 (5):死亡前診断
気管炎 4 (3):剖検診断
気管支炎 3 (2):剖検診断
敗血症とショック 50 (34)
汎血管内凝固亢進症 18 (12)
脳症 9 (6)
心筋炎・心外膜炎 6 (4)
筋炎・横紋筋融解 5 (3)
心筋梗塞 2 (1)
血球貪食症候群 3 (2)
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<私論>
日本では14大都市に関してインフルエンザ関連死亡に関して早期把握システムがなされている。近年我が国では、小児において年間100~200 例の、インフルエンザに関連したと考えられる急性脳症の存在が明らか(http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/dl/h1112-1e.pdf)になったとのこと、日本では2歳以下が358万人(同2.8%)、3~5歳が355万人(同2.8%)
だそうで、6歳未満人口は700万人程度となり、このデータを利用して推定すれば、インフルエンザ脳症は対象人口10万対1~3名程度となる。

この統計が正しいなら、日本は桁違いの乳幼児インフルエンザ死亡率ということになる。

ただ、上記米国では検査ベースの診断がほとんどなされてないにもかかわらず、上記論文はウィルス学的検査による診断であることを考慮すれば上記USのデータと単純比較できない。

診断比率はこの報告では参考になるわけで、米国ではインフルエンザの死因は呼吸器系疾患の合併が主で、次に汎血管内凝固亢進症、心臓関連疾患となるようで、日本で脳症がクローズアップされているのとは対照的である。

これは、国民の関心が高いから診断名としてそうなった結果論なのか、日本国特有の問題なのか不明であるが、インフルエンザによる死亡・near fetal caseでは、3つのカテゴリーに分けて、すなわち、慢性基礎疾患群、侵襲性の細菌感染群、激症進行型に分けてこれからは検討する必要があると記載されている。

インフルエンザ脳症の参考文献は日本のもので、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=retrieve&db=pubmed&list_uids=12173123&dopt=Abstract
:主な徴候は、意識の変容・意識消失・痙攣・咳・嘔吐
多くの患者は多臓器障害にいたり、致死率は31.8%、disabilityは27.7%と高い。
血小板減少症とトランスアミナーゼ増加hが予後不良因子と指摘されている。

また日本では、インフルエンザ脳症ガイドラインが発表されていることもあり、小児のインフルエンザ診療に関して言えばこれを念頭に置かざる得なくなってきている

IDSC(http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/index.html)のインフルエンザ脳症ガイドライン(厚生労働省 インフルエンザ脳症研究班)1.6MB(http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/051121Guide.pdf

by internalmedicine | 2005-12-15 10:07 | インフルエンザ  

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