喘息治療・・・薬害疑惑・・・澄み渡る空気のようにすっきりいかないものか?
2005年 12月 22日
持続性のβ刺激剤(LABA)の安全性に関して、澄み切った空気のように行かないものか・・・ちゃんとした研究が必要というお話
Safety of Long-Acting Beta-Agonists — An Urgent Need to Clear the Air
NEJM Volume 353:2637-2639 December 22, 2005 Number 25
LABAがUSで認可されて7年、FDAは“医療関係者と患者に対して、重症喘息エピソードを増加させ、その時の死亡数を増加させる”という助言的警告を発している。
FDAのadvisory committeeの2005年7月のアナウンスメント(http://www.fda.gov/cder/drug/advisory/LABA.htm)に応じたものである。
喘息治療の助言の影響は・・・
現在、持続性喘息の症状治療に対してICSがもっとも有効な治療方法である。しかし、重症患者においては、ICSだけでは喘息症状を完全にコントロールできないことがある。この場合、気管支拡張剤の追加治療が必要になるのだが、1990年代初冬、有効な気管支拡張剤はSABAに限られており、4-6時間の持続時間しかなく、喘息症状がICSによてコントロールできない数回その使用をし続ける必要があったのである。
10-16時間の持続時間しかなくのβ刺激剤が開発され、ICSに加え12時間以上臨床症状改善と肺機能改善に有効であることが示されている。
しかし、LABAがUSで上市された後、UK研究者たちが、大規模ランダム化二重盲検にて、喘息治療の通常の付加的治療としてsalbuterolに比較してsalmeterolにおいて重症例の増加、喘息関連誌の増加が研究者の間で、指摘され始めた。
albuterol治療に比較して、salmeterol服用患者中のトライアル中の喘息死は約3倍(12/16787 vs 2/8393)で、統計的に有意差のあるものではなかったが、650人年治療に1例の死を生じるインパクトが推定されてしまった。
しかし、この結果の解釈は単純には行かない。この研究はsalmeterolがICS併用にかかわらず、死のリスクを増加させるかどうかを試験する仮説に基づいたものではない。salmeterol群よりalbuterol群が中断ケースが多く、バイアスがかかっている可能性が高かった。
FDAからの問に答える形で、Salmeterol Multicenter Asthma Research Trial (SMART)研究がなさえ、28週salmeterolとプラセボ割付され、通常の治療を加えるものである。しかし、UK研究と同様、salmeterolがICSの付加治療として安全であるという仮説を認証する研究ではなかった。仮分析で約26000登録後、喘息関連死は、プラセボ群に比べて4.4倍(95%CI 1.3-15.3)で、各700人年治療毎に1例の死亡があり、UKデータと驚くべき一致が見られた。この為、この研究はストップされた。
formoterolに関して同様の研究はない。tabular dataにて重症喘息関連イベントが報告されている。
会社側としては、UK内の症例対照研究を年齢・喘息による入院の日数補正にて喘息死の増加がないことを示した。
しかし、SMART研究より高齢であり、42%がCOPDの混在しているというバイアスがある。
会社側はLABA発売以来喘息関連死は増加していないと主張。確かにむしろ減少しているという報告がある。ICSの適切な投与が普及する中で、LABAの問題点がマスクされている可能性がある。
臨床上、LABAの確立した有益性をどのように生かすべきか、そして、稀ながら存在する可能性のある重症・喘息死に寄与をどのように解釈すべきなのか?
軽症・中等症喘息において、ICSは慢性症状を抑えるに充分量用いるべきである。
コントロールできないとき、Leukotriene-receptorアゴニスト・低用量テオフィリン治療を加えることが有効な患者もいるのかもしれない。
ICS適切量と多薬剤を使えば、LABAは通常必要でないはず。
より重症例の場合、たとえば、ICSの適切量を用いているがalbuterol2回以上必要な場合、患者の特徴を通して、付加的治療を考慮すべき。
治療のnonadherenceやβ刺激剤で反応の見られない他の状況が有る場合もあり、3分の1から半分がそのような患者である場合もある。薬剤服用がしっかりなされ、かつ、β刺激剤による治療反応性が確認できたときに、モニタリングとともに、注意深く、処方すべきであろう。
上記図のFormeterolのデータでいけば、用量依存的な重症喘息発作を生じる危険性が推測されるようである。LABAの使用方法に関しては当方別にICS→ICS+LABAの順番で使うので問題ないのだが、初診重症例の時は少々迷う・・・。
日本でも、小児におけるテオフィリン製剤の問題点、痙攣との関係などで、小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005の発表と、厚労省が呼応する形で、11月20日前後に新聞報道がなされている。
長期管理、発作治療に関して、大幅に、テオフィリン製剤の使用制限が明記され、その関係の情報提供を製薬会社も行っている(こういうときにまともな会社かそうでないかがよくわかる・・・。)
薬害オンブなんたらが、この重大な問題をかき回してほしくない・・・客観的事実を主観をまじえない論評が今こそ必要と思う。現時点では、軽症持続移行に関して、ICSこそ、治療の根本と思うのだが、それさえ、まぜまぜにして、喘息治療に混乱を与える一方である。これは、私の主観だが、読売>毎日・朝日の順におかしな論評が掲載され続けられている。これらマス・メディアが薬害系日本の癌におけるプロモーター、イニシエーターが薬害なんたら・・
by internalmedicine | 2005-12-22 10:29 | 呼吸器系