アメリカ心臓病学会 2005年研究進展 トップ10
2005年 12月 26日
アメリカ心臓病学会(AHA)も例外でないようである。・・・他の分野でもやれば結構おもしろいと思うのだが・・・
タバコ関係、肥満関係、社会経済的な問題が、このアカデミックジャーナルでも重要視されているのも特徴か?
確かに、stem-like cell注入と、卒中後の寒冷・温暖の交互刺激による機能回復は大変おもしろい。
http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3036310
①PREPAIR-AMI study; ドイツの研究:
自らの骨髄から得たstem-like cellを心臓発作後の生存者に注入してプラセボに比較して心臓ポンプ能力が約2倍改善
“Intracoronary Infusion of Bone Marrow-Derived Progenitor Cells in Acute Myocardial Infarction:A Randomized, Double-Blind, Placebo Controlled Multicenter Trial (REPAIR-AMI) ・・・(pdf)
下肢末梢動脈疾患でも・・・
Source: American Heart Association Scientific Session 2005;
②Varenicline:禁煙を助ける期待の新薬
http://health.yahoo.co.jp/column/detail?idx0=w05051103
脳内でニコチン受容体に結合して、ニコチンが受容体に結合するのを防ぐ。ニコチンが受容体に結合するとドパミンが放出され快感をもたらすことになるが、同薬によりその作用が阻害される。
ニコチンの報酬的、習慣形成性を生じる脳の受容体を刺激する薬剤の研究
α4β2ニコチン受容体部分的アゴニスト
“Smoking Cessation Efficacy and Safety of α4β2 Nicotinic Receptor Partial Agonist ? Results From Varenicline in Cessation Therapy: Optimizing Results.”
喫煙者はタバコを吸わない男性の13.2歳ほど早死にして、女性では14.5歳ほどである。
(U.S. Surgeon General’s Health Consequences of Smoking report from 2004)
bupropionとプラセボの比較では、varencicline群では約44%、bupropion群では30%、プラセボでは17.7%
③AHAステートメント:小児肥満
・すべての子供は体重、身長、BMIを計算し、毎年プロットすること
・BMI 85から95パーセンタイルの子供は過体重リスク。注意深いフォローアップが必要
・過体重の子供(95パーセンタイル超)は体重を維持して、体重増加を防ぐよう努力をもとめる。思春期の体重減少は、BMIパーセンタイル減少を示唆、医療従事者の助言だけに限定しない。
・過体重の子供、医学的問題を有する場合、月2Kgの体重減少を目標にする
Source: Circulation. 2005;111:1999-2012;
④RAVELからの薬剤溶出性ステントの有用性が判明し、3年。
その後、MACE(major adverse cardiac events)が半減とのこと。
Source: Circulation. 2005;111:1040-1044;
⑤3月15日AHAにて、民族的・人種的格差にハイライト
・Kaiser Family Foundation/ACC報告にて、血栓溶解治療の人種差、白人に比較してアフリカ系アメリカ人に50%未満しか治療されてない。さらに、マイノリティーは心カテを白人ほど受けていない。“主な寄与因子は医療供給システムを含む医療上の不均衡である”。cultural sensitivityを欠いており、非英語患者のコミュニケーション障壁・保険・経済的限界をによる問題が寄与している。
・リサーチにおけるマイノリティーの参加も問題であり、信頼性を増す必要がある。
・クオリティーの高い医療へのアクセスのギャップを同定するよう、QOLの改善の政策レベルの研究、肥満などのリスクファクターにフォーカスをあてた基金化をadvocateすべきである。一次予防が重要。学校・職場などコミュニティーアウトリーチプログラムも
Source: Circulation. Mar 2005; 111: 1332 ? 1336; Circulation. Mar 2005;
⑥間接喫煙は喫煙と同程度の有害性
最近10年の29の研究のメタアナリシスにて、
冠動脈疾患リスクは、喫煙者では約80、間接喫煙者の30%増加。
公衆衛生における間接喫煙のインパクトは、戸外の大気汚染の影響よりは大きい。
間接喫煙の影響は急性で広範囲。この影響は血液、血管、心臓の調律に数分で出現する。
AHAは、すべての人に喫煙と無縁であり、それを欲する人たちの権利を支持する。
Source: Circulation: 2005;111:2684-2698;
⑦心不全に対するICD
心不全の通常の治療+ICD、通常治療+amiodarone、通常治療+プラセボで比較
2004年ACCミーティングで発表され、心不全+左室機能低下の患者のICDの予防的治療の有用性が示された。2521名のClass II or III心不全n+駆出率35以下の患者で検討されたもので、非虚血性心筋症患者と虚血性心筋症患者も含むもの
Source: N Engl J Med 2005:352:225-37
⑧卒中生存患者、hot and coldが下肢機能回復を高める。
卒中リハビリテーションの温度刺激の効果が評価され、温冷の繰り返しが、急性卒中患者の麻痺上肢機能の回復を促進する。
温度刺激は、上腕や手の感覚や運動機能を数週間の治療で改善する。卒中85%まで上肢機能の改善がみられるが、回復は悪いことがしばしば。この研究では46名の急性卒中患者が参加し、2回の繰り返しで温/冷、冷/温で1週間に5日6週間行ったもの、それぞれのセッションは20-30分。サーマルパックを2つのタオルでラップし、患者の手や手首に掛ける。
温パックは75度で冷パックは0度。包んだタオルで、直接の組織障害を避ける。
(Stroke. 2005;36:2665.)
http://stroke.ahajournals.org/cgi/content/abstract/36/12/2665
Facilitation of Sensory and Motor Recovery by Thermal Intervention for the Hemiplegic Upper Limb in Acute Stroke Patients
Funding: Supported by the National Science Council (Taiwan) and the intramural fund of Tzu Chi University.
⑨ β2アドレナリン受容体遺伝子型が予後を推測。
ADRB2というgenotypeがあるなら、β遮断剤の治療で予後良好
Source: JAMA 2005; 294:1526-1533
⑩ 高血圧前症にて心臓発作リスク3倍
研究者たちはFramingham Studyからのデータで、高血圧前症にて心臓発作3倍、心臓疾患が1.7倍ということを発見した。
Source: Stroke: 2005;36:1859
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ちなみに2004年は・・・・
American Heart Association's top 10 advances for 2004
①FDAが植え込み型人工心肺を認可
The New England Journal of Medicine, Aug. 26, 2004.
②NO-boosting drugが黒人の心不全生存率を改善
:BiDil
The New England Journal of Medicine, Nov. 11, 2004
(黒人専用・・・と紹介:http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf?CID=onair/medwave/colm16/389573)
③tPAが急性の虚血性卒中に有効だが、cotinuous transcranial Doppler経由の超音波にてよりこの改善が見られる。
The New England Journal of Medicine, Nov. 18, 2004.
④改良された血管形成術が、脂肪塞栓による高いリスクを有する患者に有益
The New England Journal of Medicine, Oct. 7, 2004.
⑤人工血管が現実のものとなってきた:2つの細胞、血管内腔の血管内皮細胞と血管外側の細胞をcollagen gelを通してマウスに移植し、長期可能に。
Nature, March 11, 2004.
⑥ショッピングモール、スポーツ会場や他の公衆的な場所における除細動器が心臓発作患者の生存率を2倍にした可能性
The New England Journal of Medicine, Aug. 12, 2004.
⑦重症の心臓異常のリスクを子宮内で検知:低形成左室症候群(HLHS):胎児性の大動脈狭窄によるもので、大動脈弁の狭窄も生じる。24ヶ月にて子宮内で治療。14例で性交。
Circulation, Oct. 12, 2004
⑧MEF2A、心臓発作に関連する遺伝子:プラーク形成する動脈壁を予防する役割
Human Molecular Genetics, October 2004.
⑨人の心臓は自らを治す:2002年、人の心臓は新しい心筋細胞を作ることができるという発見により人々は驚いた。この年、stem cellを含む人の心臓が筋肉と他の細胞をも作ると発見。このcardiac stem cellは心臓発作後心臓組織内で再生する
American Heart Association Scientific Sessions, November 2004. www.scientificsessions.org
⑩rimonabant:肥満と喫煙の薬剤
American College of Cardiology meeting, March 2004. American Heart Association Scientific Sessions, November 2004.
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2003年
:この年はガイドライン、AEDなど・・
2002年
:移植デバイス、ロボット手術、ACLSガイドライン
by internalmedicine | 2005-12-26 12:34 | 動脈硬化/循環器