肺炎予防に肺炎球菌ワクチンだとぉぉぉ・・・・?
2005年 12月 27日
読売とか、共同通信とか・・・、こいつらが、肺炎予防に肺炎球菌ワクチンだとかいって・・・誤報を継続表示!
・・・訂正する気もないのだろうか?
肺炎予防に関しては、否定的な代表的論文の存在(Jackson LA
et al. Effectiveness of pneumococcal polysaccharide vaccine in older adults. N Engl J Med 2003 348: 1747-55. )がある。
何に対して有効かというと、侵襲性の肺炎球菌感染(IPD)などの血中に入り込むような肺炎感染の重篤な感染発症に対して効果である。完全ではないが、IPD予防に関する有効性は老人で約50-70%である(Fedson DS. The clinical effectiveness of pneumococcal vaccination: a brief review.Vaccine 1999 17: S85-S90.、Butler JC et al. Pneumococcal polysaccharide vaccine efficacy: an evaluation of current recommendations JAMA 1993; 270: 1826-31.)という見解なのである。
最近立て続けに、肺炎球菌による敗血症の患者さんの搬送があり、月に2回ほどあったときもある。いづれも基礎疾患を有する患者さんたちである。それを考えれば・・・IPD予防にワクチンはやはり重要であることは間違いない。・・・ただ、誤解をうけたままワクチン接種されてはたまらないし、浜六郎などのオンブスなんたらを召還する元となるだろう。
“日本ではハイリスクグループ(脾摘患者、脾機能不全者、鎌状赤血球症、心・呼吸器系の慢性疾患患者、免疫抑制を受けている者)を対象”とIDSCでは書かれてるが、一方では添付文書に高齢者も含んでいる。・・・・当局に、ぶれがあるようである。早急に、統一した見解を示すべきである。
・・・・もう一つ、誤解を生じる原因として、2種類のワクチンの存在がある
・23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine (PPV)
・7-valent pneumococcal conjugate vaccine (PCV):米国では、7価の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)の多糖体と不活化ジフテリアトキシン(Diphtheria CRM197 Protein)を結合させたワクチンが実用化され、小児に使用されています。この結合型ワクチンは、肺炎球菌の多糖体も1血清型あたり2マイクログラムと少量ですみ、副反応も少なくなっています。この結合型ワクチンの最大の特徴は、2歳以下の小児に対しても十分な免疫を付与でき、ワクチンに含まれる型の肺炎球菌による髄膜炎などの重篤な感染予防に有効であるとされています。(http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cQA014.html)
もちろん日本で主に利用されているのは、ニューモバックス(PPV)
23種類の莢膜型の肺炎球菌を型別に培養・増殖し,殺菌後に各々の型から抽出,精製した莢膜ポリサッカライドを混合した液剤
"日本で発売されている肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌感染症の八〇%をカバーしている。ワクチン接種により抗体価(免疫力)は接種前に比べ、平均四・四倍になる。ワクチンによる抗体価の持続期間は約五年。ただし現在、日本では再接種できない。副作用発現率は二四・七%(注射部位局所反応二一・七%、倦怠感三・九%、筋肉痛三・六%など)。副作用は三日程度で消滅することが多い。"(http://www.fukumi.co.jp/mm/add/1061_ad2.htm)
あくまで、抗体の維持期間であり、それが臨床的な効果とは別問題なのである。そのことを誤解している向きが多い。
新聞・テレビなどの放送媒体で仕事をする連中は言わば情報の輸送屋である。その荷物の内容に関して、知識があるはずがないのである。しかし、その圧倒的な情報呈示能力により、誤解が流布されることが多く、そのうち、医療関係者でさえ、肺炎球菌ワクチンが肺炎に対する予防方法であると誤解すると・・・非常に困る。医療関係者は情報を常に正しくアップデートする能力が必要なのである。なにより、マスメディアは自分たちは素人であることを自認し、常に、補正を専門家に求めるべきで、そのように法制化すべきである。
ちなみに・・・肺炎球菌ワクチン希望者に以下のパンフレットを渡すこととした。
by internalmedicine | 2005-12-27 11:13 | メディア問題