市中肺炎のCT所見
2005年 12月 28日
肺炎球菌肺炎と異型肺炎の区別は困難であり、故に、免疫クロマトグラフィー法による肺炎球菌尿中抗原検査にて、肺炎球菌検査が迅速に行われるようになったものだから、臨床の現場が一変してしまった。
そのことを加味した上でもやはり“非定型”と“定型”の鑑別にこだわっているようにもみれる。
欧米では・・・
・臨床的にCAP原因に関して臨床的・レントゲン的特徴で正確には予測できない[II].
・“非定型”肺炎という言葉は、放棄されるべきである。なぜなら臨床的な特徴所見が“非定型”的原因による感染に生じた患者での臨床的特徴を正確に意味しないからである[II].
・非特異的症状がさらに多いCAP老人患者では若年者より特徴的でない症候を示し、発熱が認められにくい[II].
・レントゲン的な改善は、臨床的改善より遅れることが多く、特にレジオネラ後・細菌性肺炎後の場合特にそうである[III].
・非定型でのレントゲンの変化は細菌性感染より改善が早い[III].
・レントゲン改善は老人で遅く、多葉性の陰影が多い[Ib].
Thorax 2001;56(Suppl 4):iv1-iv64 ( December
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などと、“非定型”には否定的なスタンスである。
ところが、日本のガイドラインでは
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<鑑別に用いる項目>
1.年齢60歳未満
2.基礎疾患がない,あるいは,軽微
3.頑固な咳がある
4.胸部聴診上所見が乏しい
5.痰がない,あるいは,迅速診断法で原因菌が証明されない
6.末梢血白血球数が10,000/μL未満である
<鑑別基準>
6項目中4項目以上合致した場合 非定型肺炎疑い
6項目中3項目以下の合致 細菌性肺炎疑い
この場合の非定型肺炎の感度は77.9%,特異度は93.0%
5項目中3項目以上合致した場合 非定型肺炎疑い
5項目中2項目以下の合致 細菌性肺炎疑い
この場合の非定型肺炎の感度は83.9%,特異度は87.0%
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などと・・・“で非定型肺炎と細菌性肺炎が完全に鑑別できるものではない.典型的な非定型肺炎を拾い上げ,マクロライドあるいはテトラサイクリン系抗菌薬で治療するのが狙い”と書かれ、“非定型”にこだわりをもっているのが特徴である。
・・・・ガイドライン作成者も“各国ガイドラインと異なるが、前のガイドラインの支持者が多かったから・・・”という理由でこの分類を踏襲しているそうである。・・・これってぇEvidence-basedといえるのだろうか?
なお・・・・レントゲン検査関連に関しても・・・上記基準にいれてないが、典型的なマイコプラズマ肺炎と肺炎球菌肺炎の例示があり、画像でも区別にこだわりを持っている。
欧米ガイドラインでは・・・
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CAPの診断は、臨床的、検査データ上、レントゲンデータ、理学所見・呼吸音やラ音から行われるが肺炎の検出に感度や特異度は高くない。故に、CXRはCAP患者全例に必要である。CXRは随伴性胸水や肺膿瘍、多葉性陰影などの状態を診断する上でも有益。CTはより肺炎の浸潤影を同定するのに感度が高いが、IDSAやATSではルーチン診断に組み入れられていない。
CXRの異常にてCAPと診断された患者において6-10週毎に繰り返し改善したことを記載されなければならない。それは、隠れている悪性腫瘍が感染性疾患に類似することがあるためであり、それは喫煙老人において特に注意しなければならい。CXRフォローアップは、胸部CTスキャン、療法とも改善のサインが無い患者(たとえば、息切れや発熱)や膿胸や膿瘍の除外のためにおこなわれなければならない。
JAOA ? Vol 104 ? No 12 ? December 2004 ? 521-526
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とのコメントがある。要するに、肺炎の診断と合併症区別のためにレントゲンを使い、むしろフォローアップレントゲンが必要。CTは例外的に使用するというスタンスのようである。
さて、そうは言っても、日本ではCTが多く用いられておりそれを読影せねばならないし、診断の正確性に関して、潜在性の悪性疾患やその他の疾患を鑑別するために有用かもしれないわけで・・・
やはり、日本人の絡んでいる論文で、、クラミジア肺炎のCT所見
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Chlamydia Pneumoniae: Comparison with Findings of Mycoplasma Pneumoniae and Streptococcus Pneumoniae at Thin-Section CT
(Radiology 2005;238:330-338.)
クラミジア肺炎にて、
CT所見
コンソリデーション 20
すり硝子状(GGO) 13
気管支血管束(BVB)肥厚 17
結節 18
胸水 6
リンパ節腫脹 8
網状/線状陰影 15
気管支拡張 9
気腫化 11
両側肺陰影 12
BVB肥厚(P=.022)と気管支拡張(P=.034)は、肺炎球菌肺炎よりクラミジア肺炎で多い。
網状・線状陰影(P=.017)と、気管支拡張(P=.016)、関連する気腫化(P=.003)がマイコプラズマ肺炎より、クラミジア肺炎にて多い。
結論:thin-section CTにて広範な陰影所見を示し、肺炎球菌肺炎・マイコプラズマ肺炎と類似する。気道の拡張、BVB肥厚が、クラミジア肺炎においてより多く見られる。
そしてさかのぼるがマイコプラズマ肺炎のCT所見
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CT所見:Radiology(http://radiology.rsnajnls.org/cgi/search?qbe=radiology;2381040088&journalcode=radiology&minscore=5000)
Mycoplasma pneumoniae Pneumonia
Radiographic and High-Resolution CT Features in 28 Patients
AJR 2000; 174:37-41
CXR:気腔性陰影 24 (pathyもしくは区域性 9 非区域性 15)
CTにて:
GGO 24(86%)
コンソリデーション 22(79%)
粒状影 25(89%):CTにおいてCXRより多く見られ、小葉中心性所見が主
BVB肥厚 28(82%):CXR 18%よりかなり多い
結論:小葉性分布、小葉中心性分布、間質性所見
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レントゲン所見にこだわると・・・禅問答のようになる・・・呼吸器疾患
by internalmedicine | 2005-12-28 16:14 | 呼吸器系