アルツハイマー病の研究
2004年 05月 20日
看護師や介護職員の痴呆研究会なるものに関係していますと、そのGoalが“痴呆症状による反社会的?というより、手間のかかる行動の、表面的ごまかし行為”の軽減、すなわち、社会生活における齟齬の改善という社会的な意味での疾病コントロールが主体になっているのではないかと考えてます。
以下の論文からもわかるとおり、米国でも同じ?
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医療・ケア従事者:“Alzheimer病は何が問題なのか”インタービュー結果
What causes problems in Alzheimer's disease: attributions by caregivers. A qualitative study
International Journal of Geriatric Psychiatry Volume 19, Issue 6 , Pages 527 - 532
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アルツハイマー病の医療従事者205名に定量的半構造的インタビュー施行。
多くのケアは、痴呆症状のほかの原因による認知機能・行動・心理学的症状に寄与するものである。
行動やその実数を押さえている患者を(ケアにより)正常に開腹させると、多くのi医療従事者が信じ込んでいる。
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半年前に学会発表され、“抗生剤治療でアルツハイマー病改善”とメディアで報道されたものです。(http://my.webmd.com/content/article/75/89615.htm http://msnbc.msn.com/id/3158758/など)
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A Randomized, Controlled Trial of Doxycycline and Rifampin for Patients with Alzheimer's Disease
of the American Geriatrics Society Volume 52 Issue 3 Page 381 - March 2004
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対照群に比較して、6ヶ月時点でのSADAScogスコア減少が有意に少なかった (2.75 points, 95% CI=5.28 to 0.22, P=.034)
12ヶ月時点で、SADAScogの両群間の違いは、4.31(95%CI 9.17-0.56 p=0.079)
抗生剤群は有意に3ヶ月後機能低下を示さず。副作用の差異無し。
C.pneumoniae(PCR)と抗体(IgG・IgA)ともに差異無し。
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強烈な批判、すなわち、痴呆患者には尿路感染・気道感染が多く、感染症による全般的に能力の低下がバックにあり、それが改善した可能性がある。というのが12ヶ月時点で改善効果が既に無くなっている。
なにより消化性潰瘍におけるH.pylori感染治療と違い、そのメカニズムがはっきりせずに、短期的認知機能効果だけでアルツハイマー病の改善とするのは問題が多い。
この効果の真偽は、感染とアルツハイマー病とはっきり因果関係を示す指標とともに、検討しなければはっきりわからないと専門家からコメントされております。
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(私見)学会発表だけでメディアにのることの危険性をも、示しているのではないかと考えます。それと論理性の欠ける結果だけの研究では結局その解釈が難しいということは、研究者は、無駄金を使ってしまうことになる。
私自身は、実際に使ってみると一部には改善するのでは?という良好なイメージはあるのですが、会社自身が認めているとおり、アリセプトも認知機能低下を防ぐのには確かに効果がありますが、改善はしておりません。
http://www.neuro.org.tw/eisai/aricept_figure1.gif
これで満足していると、結局、痴呆は進行ということになりますし、“ケア”という社会的適合のみの介入をしても、結局、一時しのぎというわけです。
こういうのに多大な介護保険が費やされているわけです。日本も痴呆の研究に巨額を投じてもよいのではないでしょうか?それこそが、真の“ケア”の研究だと私は考えます。
うまくいけば国産製薬会社が外貨を稼いでくれるようになり・・税収アップ?
by internalmedicine | 2004-05-20 10:19 | 医学