衛生仮説:進歩版 “古い友人たちとの絶交がアレルギーを引き起こす”

衛生仮説というのは、簡単に言えば、“細菌や寄生虫などが存在しなくなったため、リンパ球サブセットのバランスが崩れ、アレルギーに傾くという仮説”です。

日本で有名なのは、藤田先生の寄生虫とヒトの共生の考えでしょう。

児童のマットレスから採取された,ほこりの検体中のエンドトキシン濃度が高くなると、白血球によるサイトカイン産生(腫瘍壊死因子α ,インターフェロンγ,インターロイキン 10,インターロイキン 12 の産生)が減少して、曝露された児童での免疫反応の著しいダウンレギュレーションを示唆されているなど傍証が集まっています。
このところ、否定的な見解、ウィルスが肺内の樹状細胞(免疫提示細胞)の働きを促進し、免疫応答を促進するという論文などがあります。

今回の論文は、人間と共存している“古くからの友人たち”という考えから、この微生物たちを、疾病を起こす“病原体”と“古くからの友人たち”にわけて、検討しているのです。そして病原性をしめすような友人でもない敵はたたいてもアレルギーを悪くないということだと思います。

“衛生仮説”の進歩版でしょうか?


<解説から勝手に意訳・改訳>
衛生仮説の免疫学的根拠を説明は、免疫細胞:Th1とTh2リンパ球の2つのサブセットのバランスの欠如ということであった。Th1活性が低下し、Th2活性が相対的に活動性が増加することで、アレルギーを生じやすいということである。この説明は、1型糖尿病や炎症性腸疾患のようなTh1を介する状態でも、増加がみられるということが世界中で認められるという点で乖離していた。Th1とTH2同時増加という点で再解釈可能であろうか?
免疫ドラマである調節性T細胞という第3の出演者グループの産生産物を減少させている可能性が示唆。病原性微生物からではなく、mycobacteria、lactobacilli、helminth wormsを含むグループから役割が議論の遡上に上っている。
“古くからの友人たち”は、我々とともにあった。かれらの存在に互いに適応するとともに、免疫システムが過剰反応しないように学習した。このような調節性のT細胞の自己抑制が働いている。
この“古くからの友人たち”がいなくなったことで、システムはこの細胞を少なくするようになり、調節できないeffector T細胞の過剰となる。一部は遺伝的要因にも影響され、重大な自己免疫的な疾患、炎症性腸疾患、糖尿病などをより多く生じるようになる。

Bennらの治験(下記論文)は、“臨床的にあきらかな”感染症のみ検討し、これは、アレルギーに対して防御的である“古くからの友人たち”への反応とは別物であることを示している。

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Cohort study of sibling effect, infectious diseases, and risk of atopic dermatitis during first 18 months of life
BMJ 2004;328:1223 (22 May)

13070名(54%)の子供で事前6ヶ月の間に少なくとも1回は臨床的に明らかな感染。18ヶ月齢時、2638名(10.8%)がアトピー性皮膚炎であった。アトピー性皮膚炎での感染増加リスクは6ヶ月前で増加(増加率比:1.08 [95%CI:1.04-1.13])。3児以上の兄弟の存在、託児所、ペットの状況、農場居住などでは減少。
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ワクチンがアレルギーを引き起こすということへの反論にもなるのかもしれません。

by internalmedicine | 2004-05-21 10:42 | 呼吸器系  

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