重症外傷患者への挿管には麻酔下挿管が必要で、パラメディカルの挿管に合理性がない

世の中誰が方向性を決めるのか?科学的議論を経ず、医者に独占されたらたまらないということで、救急手技がパラメディカルへ拡大されてます。

パラメディカルの除細動はその状況から現状のメディカルコントロール内での施行は私自身は文句ありませんが・・・


気管内挿管というある程度経験回数が必要な手技を救急隊員に許して良いのか?もう少し科学的議論が必要と思います。世の中医者がすべて悪者で、独占していると思いがちですが、独占させないと手技の向上がはかれないと考えてます。救急隊員まで訓練をしていると、技術向上に関する社会的資源は限界がありますので、医師の技術向上が図れなくなると思われます。


私などは座位挿管なるものができないと、気管支鏡をさわらせてもらえないという手技の勉強させられました。経験数が少ないと到達できない医師もいるのです。

救急隊員に挿管を教え、それがほんとに実地で役立つのか、疑問を呈した論文を昨年
読みました。それを提示します。



重症外傷患者への挿管には麻酔下挿管が必要で、パラメディカルの挿管に合理性がないという論文です。
麻酔・挿管のできる医者をロンドン、デンマークのように配置することができればよいのでしょうが、日本では多くの場合現状にあわないようで・・・

でも救命率の高い挿管となると、麻酔下挿管のできる医師が現場にいくべきとい
う方向性が見えてくるような気がします。

Prehospital tracheal intubation in severely injured patients: a Danish observational study
BMJ 2003;327:533-534 (6 September)
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重症外傷の患者へのadvanced prehospital life support、具体的には、救急隊
の気管内挿管の価値は不明である。一つしかRCTがみられず、しかもその内容の
critical reviewではbenefitを見いだされていない。

デンマークでは、救急隊員は挿管しない、麻酔医が救急ケアを院内外で行っている。

1998年から2000年までの間、外傷チームは741件で活動し、200名が重症。
mobileユニットへ172名運ばれ、到着前挿管は74例(重症患者の43%に相当)で行
われた。このうち84%が麻酔下挿管であった。
麻酔をうけた58%(36/62)、麻酔を受けなかった例では1例のみ、わずか8%のみ6ヶ月生存
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中途半端な手技をならった救急隊員が、真に必要かどうかわからない状況で挿管をしている、そういう事態はこわくないのでしょうか? お役人さんや救急のおえらいさんたち・・・マスコミ・・・

by internalmedicine | 2004-05-22 12:00 | 医療一般  

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