ジゴキシンのレビュー

昨日とちょっと関連・・・




Digoxin Toxicity: A Review
http://www.uspharmacist.com/index.asp?show=article&page=8_1694.htm

・コリン作動性の話は出てこない
・薬剤相互作用で、抗コリン作動性薬剤との関係で小腸接触時間に対する影響により吸収に変化をもたらす(atropine, diphenhydramine, phenothiazines, scopolamine, and benztropineなどは、小腸の運動性低下)
・P-glycoprotein(小腸口側のbrush border)の抑制、腸内のEubacterium Lentumの欠如によるジゴキシン代謝の抑制の2つも関連。抗生物質(clarithromycin, erythromycin,tetracyclineなど)は、ジゴキシン代謝を遅らせ、血中濃度増加に寄与。抗不整脈薬(quinidine, amiodarone, and verapamil)はP-glycoproteinをよく影し、ジゴキシンの腎クリアランスを低下させる。




ところで、ジゴキシンというのは歴史上評価と批判が繰り返されてきている。


1)心拍・リズムへの影響、心筋収縮への影響
2)CNSへの影響、迷走神経活動性の増加の結果AV結節への伝導遅延をもたらす。
Na+/K+-ATPase ポンプと結合することでジゴキシンの心筋収縮力増加作用をもたらすのだが、Na+濃度の増加はNa+/Ca++交換を介してCa++細胞流出を遅らせ、細胞内Ca++の増加をもたらす。この余分なCa++が心筋細胞の活動電位を介して収縮運動性の増加をもたらす
3)心房細動を有する老人への利用が多いが、心拍調整戦略薬剤としては、他の薬剤と異なり、低血圧や陰性変力作用が無いことがその理由。ただ、老人はジゴキシン毒性が出やいので注意が必要。
4)洞調律の症状コントロールに有効という話が出てきた。POVEDトライアルにおいて、軽症・中等症心不全で、駆出率、心拍、運動能力の改善を認めた。
RADIANCE研究により、ヂゴキシン中止により、臨床的な悪化、収縮機能の減少、運動耐容能の減少を認めた。しかし、死亡率への影響は確認されていない。
5)最近のガイドラインでは、利尿剤、ACE阻害剤(ARB)、β遮断剤継続治療にジゴキシンを追加することを推奨している。さらに重症例でも利尿剤、ACE阻害剤、β遮断剤に加える治療としても考えられている。
DIG(Digitalis Intervention Group)で、血中濃度1.2ng/mLを超える場合心不全患者の死亡リスクが増大する。治療域としては0.5-0.9ng/mLを推奨


神経ホルモン的効果が注目されつつある。
血中のノルエピネフリン値を減少させる心不全における自律神経機能障害の改善
未治療不整脈と関連のない、洞調律であっても、心不全のアウトカムを改善する可能性がある。





NEJMか何かに一度ジギタリスはNostalgiaと書かれたことがあったと思うのですが・・・見つけられなかった。・・・何度も非難されながら生き残っている薬剤


乳ガン抑制
cAMP産生減少・CyP450scc活性減少を介してtestosterone生合成を阻害し前立腺癌抑制的に働く可能性


救心というのがアポトーシスをおこすBufalinやBufotalin、Cinobufalinの主成分らしいが、ややこしい薬剤相互作用も考えられ、医家としては服用するくらいなら、受診の上、正確な病態・病名を確定してほしいものと思うのだが・・・

by internalmedicine | 2006-02-25 12:27 | 動脈硬化/循環器  

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