マスコミ 専門家の意見を無視する子供っぽさ
2006年 02月 27日
新聞記事でよくやられるペテンであるが、冒頭の文章は合理性のあるものをもってきて、後は我田引水的結論にもっていく方法が用いられる。
CNNやBBCをみると、必ず、専門家の意見の引用として医学的記事は書かれている。これは非専門家である新聞記者としては当然のやり方であり、業として、健康・医療へ関わる問題をあつかった場合は医師法に関わる問題である。記者が専門家の意見を聞かず、勝手な意見を定着した物であるかのように、記事記載することは、広義に解釈すれば、医師法違反にも問われかねない。モラル逸脱の可能性がある。
松本サリン事件を覚えているだろうか?マスコミの犯罪的といえる数々の嘘垂れ流し・・・マスコミは、一部の専門家が「農薬からサリンを合成することなど不可能」と指摘していたにもかかわらず、オウム真理教が真犯人であると判明するまでの半年以上もの間警察発表を無批判に垂れ流したり、河野が救急隊員に「除草剤をつくろうとして調合に失敗して煙を出した」と話したとする警察からのリークに基づく虚報情報を流すhttp://wkp.fresheye.com/wikipedia/%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%83%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6?pg=1#.E6.B2.B3.E9.87.8E.E3.81.B8.E3.81.AE.E8.AC.9D.E7.BD.AA・・・ことが行われていた。
反省するどころか・・・増長するマスコミの専門家無視&記事は面白ければよい・・・売れればよいという自省のない態度・・・批判されれば、国家権力の横暴とか情報ソースの保持とか・・・勝手な解釈のてんこもり
日本のメディアの最たる特徴は一般的に専門家へのrespectがないことである。
科学性に基づかない感情的で、浅学な記事が多い。分析を重んじるのではなく、悪者探しに終始し、特定の個人・集団を悪者としてラベルしたら、それで事件・事故はメディアはそれで終わり・・・その背後にある科学的事象は無視する
メディア・リテラシーに欠ける多くの読者をあらぬ方向、メディアの直感的・感情的結論へミスリードする
・・・結局、社会的な有害因子となっている。
典型的な社説・・・・
社説:視点 禁煙治療 依存症の軽重無視する子供っぽさ
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060226k0000m070108000c.html
1)保険が適用されるということは、その症状が公的に「病気」とみなされる、ということだ。まるで「喫煙は病気」のような雰囲気になってきた。
2)依存症にも「乱用」と「依存症」があり、たばこや酒などの嗜好(しこう)品の場合の「乱用」は健康、社会生活を破たんさせるほど摂取すること、「依存症」は「使用していない時に離脱症状、禁断症状がでる状態」
3)たばこに「乱用」があるだろうか。
4)ニコチンは依存症を生む。しかし、それが本人あるいは周囲に及ぼす影響は、アルコールや他の薬物に比べて明らかに低い。
5)喫煙率が下がり続けているが、非喫煙者と禁煙者の増加によるものだ。禁煙者の増加自体が、たばこの依存症が重くないことを証明する。
6)すべての喫煙者を医師の診療なくして禁煙できない人とみなして病人扱いする風潮には、かつての喫煙者の鈍感さに通じるものがある
嫌煙家のみならず、禁煙に関わる各専門施設・専門家も、この記事に対して物議をもたらしている。
1)2)3)に関しては
アメリカ精神医学会の記載と一致している意見である。
さて、
4)に関して
“喫煙者集団が他の薬物・アルコール依存よりその対象者が多いことで、他の依存症への影響より大きい”とはどういう根拠で書かれてるのだろう?
ふつうに考えれば、対象者が多いほど、社会的なインパクトが大きいと考えるはずだし・・・
・臭い・非喫煙者への不快感などに始まり間接喫煙による健康被害
などである
もっとも気になるのは
・青少年・小児に対して、薬物・アルコール依存に波及する(アメリカ精神医学会)
とのことで、Entrance Drugとしての認識が教育の世界である
・・・そのことを無視している。
5)に関して
論理にもならないもので・・
“ニコチン依存症が離脱困難だからこそ禁煙実行者が多く、禁煙成功者が少ないという事実”を無視している。
そして、ニコチン置換療法を用いてもその成功率は多くなく、心理的な治療など包括的ケアが必要であり、、緊急的に禁煙が必要な自体・・・妊娠・手術などの時にも効果が少ない・・・なども存在する。
・・・毎日新聞記者の記事がいかに有害であるかがわかると思う
6)に関して、
決定的な誤りは、“かつての喫煙者の鈍感さに通じる”という部分である。
“たばこが社会生活を破たんさせるとは考えにくい”などとともに、喫煙者的な鈍感さがこの記者の記載がある(この記者が喫煙者かどうかは知らないが・・・)
彼の論説は、一方的な決めつけが多く、専門家の意見から超越した、鼻持ちならないエリート的な感覚の記載が多い(根拠:Googleで彼の記事を検索)。
依存性については「アルコールより格段に低い」と指摘した裁判結果がある。この記事にもそれを想起させる文章がある。おそらく、判決文からinspireされた記事なのであろう。
ここで忘れてはならないのはアルコール依存の患者とニコチン依存の患者の総数の絶対的差である。前者は80万人程度、後者は喫煙者の6割強で1800万人~2000万人と推定されていることである。
それで、司法も、メディアも依存が弱いというのであろうか?
裁判官の脳裏によぎったのはアルコール依存や薬物依存患者のイメージであろう。彼らは、ニコチン依存患者の終末期であり、特にタバコとの関連が深いとされる喉頭癌・慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎の末期を実感をもってみたことがあるのだろうか?
司法に携わるもとのたちのイメージの貧困さが・・・司法判断を狂わしているし、
統計的な推計学という科学的手法があるのに、司法の世界ではその利用が遅々として進まず、個人の当て推量に過ぎない司法判断が頻発している。
この裁判では、すべてがタバコのせいではないと判断しているが、なら、一部でもJTに責任を負わせるべきではないか?・・・なぜできないか?・・・それは、弁護側の方法論のまずさもある。・・・比重付けの責任を彼らに問うべきであったのだ・・・裁判手法の問題点で、ニコチン依存はさほど影響がないとの結論を出したのであろう。・・・これは科学的事実とは別次元の結論であったのである。
司法判断と科学的事実の混同が、この文系記者にはあるのかもしれない。
NIHで、State-of-the-Scienceが出るようだが・・・心待ちにしているところである。
NIH State-of-the-Science Conference on Tobacco Use:
Prevention, Cessation and Control
・・・その時に、彼はいかなる言動を行うのだろう
<資料>
喫煙と死亡率の関係
http://www.mmm.co.jp/hc/littmann/es-4000.html
<毎日との対照>
CNN
BBC
毎日新聞と関連のあるMSN
by internalmedicine | 2006-02-27 11:22 | メディア問題