鳥インフルエンザ重症例の治療
2006年 03月 02日

Lancetのealry releaseで紹介されている。
The Lancet DOI:10.1016/S0140-6736(06)68232-9
鳥インフルエンザであるサブタイプH5N1の死亡率はまだ高い、最近のWHO報告によれば約50%である。剖検検討では血球食細胞性リンパ組織球症(HLH)にみられるのと同様の血球食細胞症がみられる。
他のウィルスによるHLHの場合、EBウィルスなどでは、HLH治療を開始して生存率が50%から90%へ改善した。HLHが重症の鳥インフルエンザAで治療としての可能性が示唆される。
Medscapeでも解説
Etoposide-Based Therapy May Reduce Mortality From Bird Fluh
(http://www.medscape.com/viewarticle/524632)
NEW YORK (Reuters Health) Mar 01 -
血球食細胞性リンパ組織球症(HLH)と類似するということで、H5N1感染の重症例にHLH治療に反応のあるデキサメサゾン+etoposide、抗ウィルス治療と他の支持療法というやり方である。15歳以上ではEtoposideを100mg/m、中年や老人では50mg/m開始量を提唱。
ストックホルムのKarolinska研究所のDr. Jan-Inge Henterと香港の共同研究者たちの研究
massive hypercytokinemiaとcytopenia、急性脳炎の特徴を有する鳥インフルエンザが敗血症由来の多臓器不全となることから、EBウィルス関連HLHがHLH治療にてその高い死亡率が減少するという報告がなされている。
Henterのチームは、etoposideがapoptosisを生じ、dexamethasoneが単核球細胞へ前アポトーシス効果を有することで、炎症性細胞反応のdownregulationを生じる可能性を示唆
2次性のHLH治療の成功に基づき、H5N1感染+HLH患者で倫理的にも適応が許されるのではないかと主張
2次性HLHは、8つのクライテリア中5つで診断
発熱、脾腫、bicytopenia、高トリグリセリド血症か高フィブリノーゲン血症(もしくは、両者)、hemophagocytosis、フェリチン>500 g/L、低NK細胞活性、sIL-2受容体 > 2400 U/mL
Etoposideはがん治療をしていると、結構馴染み深い薬剤であるが・・・・

血球貪食症候群
http://www.medissue.co.jp/virus/journal/v52-2pdf/virus52-2_233-238.pdf
臨床的特長
表
発熱・脾腫が最も多い臨床兆候であるが、肝腫、リンパ節腫大、黄疸、皮疹も認められる
皮疹が多く、斑点丘疹で、結節性皮疹もみられることがある。
中枢神経所見、脳症、髄膜症状、けいれんが最も多く認められている。
この科学的所見は、急性ウィルス感染、EBウィルス、CMVウィルス、ウィルス性可燃、急性HIV seroconversion、HLHに関連する感染症の合併した状況である。
検査上異常のもっとも特徴的な所見は、血球減少であり、重篤である。
生化学検査所見上、溶血を示唆し、高ビリルビン血症、LDH増加がある。
多くの患者では、高TG血症と著明なフェリチンの増加がみられる。
血中フィブリノーゲンは典型的には少ない、そして、DICと関連。
FDPと血中フェリチンの増加がHLHの死亡リスクと関連するマーカーである。
組織学的には、hemophagocytosisが、骨髄、脾臓、リンパ節にみられ、時に中枢神経でもみられる。活性化されたマクロファージは赤血球、白血球細胞、血小板、それらの前駆細胞、細胞断端を取り囲む。これらの細胞は他の血球により満杯のようにみえる。
血球貪食は肝臓でみられるが、肝臓の門脈へのリンパ球浸潤がみられる。
by internalmedicine | 2006-03-02 15:25 | インフルエンザ