インターネット薬局
2006年 03月 10日
Cleaveland Clinicのレビューに、米国のインターネット薬局事情が掲載されていた。
Buying prescription drugs on the Internet: Promises and pitfalls
米国は他国に比べ薬剤費が高く、英国・スイスの60%超、カナダの2/3を余計に支払わなければならないという事情があるらしい。さらに年々薬剤費が9-12%増加している。
表面上の薬剤費はFDAの消費報告では29%ほど地域薬局より安いが、包装代・送料などが含まれておらず、個別に手間賃をとる場合もみられる。
薬剤費だけでも高い薬剤(sildenafil and finasteride)なども存在する。いわゆるExtra-costを考えればそうやすいものではない。最終的には地域薬局より10%ほど高く、追加コストを含めれば40%高コストである。
4つのインターネット薬局の形態
・大型チェーンのオンライン健康情報・製品提供
・大型チェーンとの競争下にある独立系薬局
・注文形態としてのインターネット利用のメールオーダー薬局
・オンラインにだけの薬局
プライバシー・セキュリティー・支払い手段・処方薬品の信頼性など様々
【考えられるメリット】
・コスト低下の可能性
・オーダーの時間や手間の削減
・田舎ではとくに有益(処方薬在庫などの問題)
・コンピューター下管理による過誤予防、薬剤相互作用や副作用への注意喚起
・匿名性を利点と考える消費者の存在
【`Cyberdoctor`の存在】
リアルな存在なのか、プログラム上の仮想的な存在なのか不明
sildenafilに関して、45歳男性、心疾患既往あり、亜硝酸剤使用中である例で、明らかに禁忌なのだが、cyberdoctorの1/5が実際に処方を行ってしまったという報告がある。
同様に、69歳女性、肥満、冠動脈疾患・高血圧、多薬剤投与中で、しかも、Sidenafilと相互作用を有するという仮想的な例でsildenafil(バイアグラ)薬剤入手可能であった事例が報告されている。
【医師・患者関係をバイパス】
インターネットからの薬剤購入は伝統的なセーフガードをバイパスすることになり、消費者をリスクの元におくことになる。
オンライン薬局の20%が処方を必要とせず、US外やカナダからの購入が増加している。カルテの不在による、禁忌・副作用・相互作用が見過ごされる可能性が高い。
【薬剤依存】
薬物依存者は自宅のコンピューターから気楽に、地域の薬局や医師と会わずして簡単に入手できるようになった。USでは法制下にある薬剤を537のウェブサイトで売られ、合成opioidさえ売られている。いわゆる`Cyberdoctor`による処方であったり、無処方であったり・・
【インターネット薬局はどこに存在】
BloomとIannaconeは、46のインターネット薬局の内、地理的な所在が確認できたのはわずか11%、5つであったと報告。
【偽物・標準以下の薬剤】
FDAは、医薬品として売られているものの10%超は、偽物もしくは標準に満たない薬剤であると報告、貧しい国では25%にも及ぶとされる。
検疫での解析では、67%がFDAで認可されていないものであり、5%が効果成分を含まないもの、28%が法的に制限されている成分を含む物であった1153の差し押さえ薬剤の88%にFDAが認可されていない成分があったと報告。
【Regulationの試み】
・FDAの購入ガイドライン:
www.fda.gov/oc/buyonline/others.html
・国際間での取り締まりの方向性
Cyberdoctor、サイバードクター”は上記ごとく、決して良いイメージのある言葉ではない。
“インターネットで医療相談を受け付けるサイト”・・・日本にはホントにお人好しなのか自己顕示欲が高いのか、インターネットで健康相談を無償もしくはかなり低額で引き受けているお医者さんがいるようだ。中には、それを制度化して、お人好しのお医者さんたちを集めて、ウェブのサービスに利用しているところも・・・
プライバシーが守られないオープンな相談では言い難い背景など聞き取ることもできないし、それに、直に患者の表情などを伺ったり、無言や、頷くなどの面接の技術など利用できないし、
一方的な患者サイドだけの主観に基づく訴えだけでは、客観的なスケーリングもできないし
第一、身体的な診察ができない・・・ないないづくしのリスクの高い診療をただ働きしようというのだから、トラブルを楽しもうというのかほどの物好きか・・・(人それぞれだからなんとも・・・)
医師以外のものが潜入してIDをなりすましていると噂のある可能性がある掲示板もある。ID・パスワードさえ手に入れれば医者以外でも医者になりすますことができる制度で、医師以外のサイバー医者が存在することを否定できないと思うのだが・・・なんらかのトラブルが発生したときの免責事項だけは参加している医師は押さえていた方がよいし、利用する側もその限界を十分見極めた上での利用であるべきと思うのだが・・・
by internalmedicine | 2006-03-10 11:37 | Quack