EOL(終末期医療)問題

終末期医療が再びクローズアップされる状況となった

昨年、終末期医療、保険から外すべき・・・と 財務省発言
http://intmed.exblog.jp/2164235/
・・・こういう乱暴な意見が行政のトップからでておりまして、心寂しくなる・・・


終末期医療にコストをかけるなと・・・官僚大合唱のなか、終末期医療における患者の気管内挿管抜管・人工呼吸中断を行った医者が社会問題化してきているのは、皮肉なことである


EOLにおける恣意的な人工呼吸の中断、抜管とは、医学用語で、Terminal wean(ing)と呼ばれている技術で、いかに苦痛をなくすか、詳細に、日本以外では紹介され、具体的に検討実行されている。

ヨーロッパ6カ国の終末期の治療;;;;人工呼吸中断など
http://intmed.exblog.jp/1703760/
をみれば・・・
「“terminal wean”であり、FIO2や人工呼吸数を次第に減少させる方法で、低酸素や高炭酸ガス血症を起こすのである。この方法はペース次第で状況が変わり、数分で完遂される場合がある。」(https://www.sccm.org:49443/pdf/EndofLife.pdf

などと、人工呼吸中断は日常的に行われていることが分かる。
(具体的な方法は→http://www.theiaforum.org/october2005(1).pdf


さて、日本の問題点は、未だに告知が問題となっていることであり、代理者問題であろう。

<当事者は家族でなく本人>
* 死亡後問題提起するのは本人でなく家族であるため、家族の希望を尊重してしまう→本人のニーズでない可能性


* 個人情報保護法では告知は本人同意が原則:告知せずは法律上はあり得ない

矛盾

* 告知したということで訴追された裁判(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/GanKokutiTeiso0601Asa.shtml)がある

* 医師の説明義務:告知せず・告知して訴訟 (http://homepage1.nifty.com/uesugisei/setumei.htm#%82%AA%82%F1%8D%90%92m)


本人告知の実態調査 (読売新聞) - H17年6月22日
余命半年以内の患者への告知46%…初の全国調査 余命6か月以内の「終末期」の患者本人に対し、病院側が病名を告知したケースは、全国の一般病院で平均約46%であることが、尊厳死に関する厚生労働省研究班の初の全国調査で分かった。また本人に延命処置を希望するかどうかを確認する割合は平均約15%だった。
・・・(中略)・・・
一方、患者の家族に対しては、病名告知している割合は95・8%で、治療方針の確認、延命処置の希望確認の割合も、平均で8割を超えており、「家族重視」の実態が浮かび上がった。 患者が治る見込みのない病気にかかった場合、まずだれに説明するかでは、「状況を見て患者か家族」と答えた病院が51・5%で最も多かったものの、続く回答は「家族」で41%に上った。「必ずはじめに患者本人」は3・7%だった。 

 ↑
日本では告知せず、家族代理者が、生前から患者本人の意志決定を代理してしまうという問題が放置されてしまっているのである。

もっとも・・・・“がん告知で患者が心理的悪影響を受けたからといって、それが医道上の配慮を無視した患者に精神的打撃を与えることだけを目的としたような場合を除き、直ちに医師に何らかの法律上の義務違反があったとすることは相当でない”という妥当と思える司法判断が下されているが・・


しかし、民事上の係争に巻き込まれることを潔しとしない、医師・病院関係者は示談にしてしまうかもしれない・・・このことが告知の問題を難しくしてしまうだろう



本邦以外でも、当然本人の意志が十分確認できないままEnd of Illnessに陥った場合があり、その場合の注意点は、その本人が意思決定をくだしたとしたら、どのような終末期を迎えたかったであろうかということの確認が必要ということである。
その注意点も書かれている
http://www.acponline.org/journals/news/jun03/surrogate.htm

そのポイントは、代理者本人の思考でなく、患者本人が決定するとしたら・・・という本人の性癖や言動・価値観を一番知っているものが、擬似的に本人の意志決定を行うということである。自分が死に目にあいたいから心肺蘇生を続けてくれと無理強いされるEOLというのは本来あってはいけないのである。


日本におけるEOL議論はとても底が浅く、その対象も癌だけに限定されることが多い。EOLの対象疾患は、生存予後ほぼ0%(具体的には、転移性癌、肺炎、腎不全、敗血症、多臓器不全、急性卒中、CPR30分超過など)などと、米国教育病院では教育されているのである。


日医ニュースでは・・・

刑法学者の福田雅章(ふくだ・まさあき)山梨学院大法科大学院教授は「安楽死、尊
厳死が認められるのは本人の自己決定権に基づく明示の意思表示がある時だけで、家族
の同意ではだめだ。医師は家族から治療中止を頼まれても『それは殺人になる』と説得
すべきだ」と話している。
 東海大事件の判決は、家族の意思表示で尊厳死が許される要件として(1)本人の事
前の意思表示がない(2)本人の性格、価値観、人生観などを十分知っている(3)病
状、治療内容などを熟知している(4)医師側が本人と家族の密接な関係を認識してい
る―などを挙げている。
と・・・家族の代理を認める実際の判決と、学者さんの一説が併記され・・・現実的には日本では家族などの代理意思表明による尊厳死はあり得ないと保身的に考えるのが普通となってしまう

日本全体の文化からきた死を忌み嫌う伝統から、その議論がなおざりにされ、EOLの対処に関するコンセンサスがない中、医者たちは逮捕・送検がつづくのであろうか?

by internalmedicine | 2006-03-27 16:13 | 医療一般  

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